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量子コン実機を用いた原子・分子過程の再現に成功、東大が世界初

2022年10月17日 06時20分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学の研究チームは、量子コンピューター実機を用いて、強レーザー場中で起こる原子・分子過程の世界初の実証研究を実施。窒素分子イオンの電子波束の時間発展を定性的に再現することに成功した。量子計算には、2021年に東京大学に導入された27量子ビットを持つ超伝導量子回路型量子コンピューター「ibm_kawasaki」を使用した。

東京大学の研究チームは、量子コンピューター実機を用いて、強レーザー場中で起こる原子・分子過程の世界初の実証研究を実施。窒素分子イオンの電子波束の時間発展を定性的に再現することに成功した。量子計算には、2021年に東京大学に導入された27量子ビットを持つ超伝導量子回路型量子コンピューター「ibm_kawasaki」を使用した。 研究チームは、窒素分子イオンの電子波束が従う時間依存シュレーディンガー方程式(量子系の時間発展を表す方程式)の任意時刻の解を表す量子回路を、少数の変分パラメーターを用いて構成。変分パラメーターが満たすべき方程式を構築するために必要な期待値を、量子コンピューターで計算した。さらに、古典コンピューターで効率よく計算できる特殊な量子回路を用いて、量子コンピューターのノイズによるエラーの見積もりと誤り抑制を実行。強レーザー場によって駆動される窒素分子イオンの電子波束の時間発展を定性的に再現した。 量子系の時間発展のシミュレーションは、量子計算を適用できる重要な問題の一つである。だが、最も単純な量子アルゴリズムではシミュレーション時間の増加とともに量子回路が長くなるためノイズの影響が大きくなり、現在利用可能な量子コンピューターでは正しい値を得るのが困難になる。したがって、「いかにして、効率の良い、短い量子回路を構築するか」「その量子回路を用いて計算した結果に含まれるエラーをいかに補正して、より正しい値を予測するか」が、課題となっている。 今回の研究は、研究チームが東京大学量子イニシアティブにおいて推進している「Qubitによる応用量子化学(AQUABIT)」プロジェクトの一環として実施された。

(中條)

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