日本で法人として登記をしていなかった海外の大手IT企業の多くが、日本で法人登記の手続きをしたようだ。
2022年8月23日付の時事通信によれば、法務省が登記を要請した外国企業48社のうち、28社が登記の手続きを完了、または登記を申請したという。
この48社の中には、マイクロソフト、グーグル、メタ、ツイッター、TikTokといった企業が含まれる。
こうした企業が日本国内の会社として登記を完了すると、どんな効果があるのだろうか。
法律の専門家らが指摘するのは、こうした企業が絡む訴訟で、これまでよりも手続きが簡単になるという効果だ。
日本政府が海外のIT大手に対して登記手続きを要請したことで、今後、日本国内でSNS上の誹謗中傷などをめぐる訴訟が増加する可能性があるのではないか。
外国企業にも登記義務
まず、今回の措置の根拠から確認したい。会社法の第818条に次のような規定がある。
「外国会社は、外国会社の登記をするまでは、日本において取引を継続してすることができない」
そのうえで、日本国内で代表者を定めたときは、3週間以内に登記をすることが義務付けられている。
ちょっと混乱するのは、たとえばマイクロソフトは日本法人が存在し、日本法人の幹部がメディアに登場することもある。
外野としては「問題ないのでは」と思ってしまうが、どうもそうではないようだ。
今回、法務省などが登記を要請した48社は、電気通信事業を営む外国企業だ。
FacebookのMessenger、LINEといったメッセージをやり取りするアプリや、Zoomのようなウェブ会議のアプリも電気通信事業に該当する可能性がある。
総務省が公開している電気通信事業者のリストを開いてみると、たとえば「マイクロソフト」の名称が入った企業では、次の3社が掲載されている。
-日本マイクロソフト株式会社
-マイクロソフトコーポレーション
-マイクロソフト・アイルランド・オペレーションズ・リミテッド
日本法人だけではダメ
日本マイクロソフト株式会社に関しては法人番号も掲載されているため、これが日本で営業しているマイクロソフトの日本法人だろう。
日本マイクロソフト株式会社の法人登記を確認すると、この会社は1986年2月に設立され、現在の本店は東京都港区にある。
同社が設立されたのは、Windowsの最初のバージョンであるWindows 1.0が発売された翌年のことだ。同社が公開している会社の沿革によれば、その年の5月から営業活動を始めたそうだ。
一方、本社にあたるマイクロソフトコーポレーションの本店は米国のワシントン州にあるが、2022年7月7日に日本における代表者を選任し、同月11日に登記手続きをしている。
この登記手続きが、日本の法務省の要請に従ったものだろう。
日本マイクロソフトは、日本でも長い歴史があるが、そうだとしても、日本で取引をする以上、海外の本社も登記が必要となる。
少し横道にそれるが、マイクロソフトのサービス規約を見ると、日本でマイクロソフトが提供するサービスを利用する場合、無料部分は米国の本社と契約することになるが、Office 365など有料サービスを利用する場合は日本法人との契約になる。
この辺りは、納税に絡む複雑な話が潜んでいそうだ。
狙いは裁判の円滑化
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