前回、「夏の夜の猫」の話をしたので、今回は「夏の昼の猫」にしようと思ったのだけど、さすがに夏の昼間に猫と出会うことって少ないのだよね。
そもそも、こっちも真夏の真っ昼間にのほほんと歩くのも健康上はばかられるわけで、夕方、陽射しがやわらいでちょっとはマシになったころ、そういえばあの神社に猫がいたなあ、会いに行ってみるかと歩いてた17時(午後5時)ごろ。途中、古い建物の軒の上に何かがいた。
たまたま、この建物はすごく昭和だなあ、何に使われてるんだろう、と思って目をやったとき、軒の上に不自然にこんもりした物体があったのである。もしかして、猫か。でも、ひさしの奥にいてよく見えない。
というわけで、カメラのモニタを開いて下に向けて見えるようにし、腕を思い切り上に伸ばしてなんとか撮ろう(というか、モニタ越しに猫かどうか確認しよう)と思ったら、それに気づいて顔を上げてくれたのだった。
猫だ。しかも、黒くてちょっとカッコいい猫だ。
向こうも、まさか見つかるとは思わなかったのだろう。びっくりしたのか、軒から隣の木に飛び移ってしまった。それが、冒頭の写真。猫の奥に見える葉っぱが逆光で、ちょっと透けててきれいである。
そして、安全な場所へ行ったらこちらの様子をうかがうのだけど、ぬっと背を伸ばしてる姿がまたいいのだ。
木の上でこっちの様子をうかがってる白黒の猫。両足で踏ん張って伸びてるところがなんかいい。後ろに見える、光が透けてる葉もきれいだ。2022年8月 OMデジタルソリューションズ OM SYSTEM OM-1
そして、当初の目的の神社へ向かうと……入り口が閉まってた。なんと17時閉門だったのだ。ああ、油断してた。それは考えてなかった。
まあ、しょうがないですな、と散策しながら駅のほうへ歩いていると、路地の奥、塀の向こうに鳥居が見える。閉まっていて入れなかった神社である。
おお、こうして頭だけ見せている赤い鳥居というのも乙なものだと足を踏み入れてみると、猫がいた。出会うときって、そんなもんだ。猫がいないかなと思ってるといないのに、全然違うものを見てると、突然視界の端に現れるのである。せっかくなので、鳥居と猫の両方が写る角度を探して1枚。
そんなわけで、今回のテーマは「午後5時の猫」。ここからは7月の、雨が断続的に降ってた日。蒸し暑くて、じっとり、じとじとな17時過ぎのことだ。
18時に友人宅を訪問する予定なので時間はなかったのだけど、ふと立ち寄った神社に猫がいたのだからしょうがない。それも、けっこう集まってる。近所のなじみの人とおぼしき二人がベンチで猫を膝に乗せてるし、猫ボランティアとおぼしきおばあさまが、あれこれ世話を焼いている。
そういうときは、ちょっと挨拶をして猫を撮らせてもらう。
軒下の、雨に濡れない場所にバッグを置いて身軽になり、じゃまにならないよう、しゃがんで撮る。
雨模様だから、みな軒下にいるのかなと思いきや、参道を歩いてくる猫を発見。
真ん中を堂々と歩いてくるので、待ち構えて、これは猫の目の高さで撮らねば、と濡れた地面に膝をついてレンズを向けたのがこちらだ。雨に濡れた石畳の参道を歩く猫って似合うよね。
そして、しゃがんでる私のすぐ近くまで来て、ちょこんと足をそろえて濡れた石畳の上に座ったのだった。
かくして、スマートフォンの路線検索アプリを見ると、ギリギリ次の電車に乗れば間に合いそう……であったのだが、乗りそびれて10分ほど遅刻したのであった。
今度は、雨の降ってない日に再訪しようと思う。
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筆者紹介─荻窪 圭

老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/

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