前回に引き続き、富士フイルム初の猫瞳AFを搭載したフラッグシップ機「X-H2S」の話だ。今回は、「XF16-80mmF4 R OIS WR」という広角からちょっとした望遠まで1本で済むという、猫散歩に最適なレンズがメインだ。
冒頭写真は、道と塀と門と猫である。7月上旬の暑い日のこと、隙間に猫がいた。
隙間、である。何と何の隙間かというと、塀と門との隙間。歩いていて、なんか違和感を覚えて振り返ったら、隙間から猫がのぞいていたのだ。
思わずその場でしゃがんでモニタを開いて撮影。耳がちゃんとカットされてる凛々しい猫だ。で、そっと近づくと、猫はそっと後ずさりする。X-H2Sの猫認識AFは、片方の目だけでもちゃんと見つけてくれるので素晴らしい。
ミケ系の猫である。ギリギリまで近づいて望遠でねらうと、向こうもこっちをじっと観察してる。
思わぬところで出会うと楽しいですな。
次は、超望遠レンズに挑戦。団地の柵の向こうに、きれいなハチワレの猫がくつろいでいたのである。
このときは、野鳥を撮ろうと思って借りた150-600mmという超望遠レンズをたまたま持っていたので、その威力を見てやろうじゃないかとレンズ交換。150-600mmともなるとかなり大きくて重いので、猫撮り用に持ち出すことはまずないのだけど、その威力は絶大なのだった。
80mmではあそこまでしか寄れなかった遠くの猫(そもそも柵があって近寄れないのだ)も、600mmなら顔のドアップ。約30万円と猫撮りレンズにはかなりオーバーだけど、野鳥とか野生動物とか飛行機とか、スゴい写真を撮りたい人にぜひ。
さて話は戻って、レンズは16-80mmに。狭い暗渠道を歩いていると、隣を猫が歩いてた。いやほんとに、数メートルだけど並んで歩いたのだ。猫の歩いてた場所は道から1メートルくらい高いところで、間に柵があるのだけど、都合がいいことに、一ヵ所だけ壊れてるのである。そこにさしかかったときにさっとカメラを向けてみた。
右耳が垂れてる地域猫で、たぶん、ごはんをもらえる時間が近いのだろう。期待した目で見られたが、こいつは違うとわかると去っていった。近くにいる猫も、さっと広角で撮れるのが16-80mmのよさ。
そしてこのあと、この猫が待っているであろう、おばあさまとばったり。おばあさまがベンチに座ると別のハチワレがやってきて、すぐ横にちょこんと座る。それが彼女の日課である。猫を撫でている手がそう。ふだんは膝に乗るのだけど、今日は見知らぬ人(わたしだ)が一緒なので警戒してる。まあ、しょうがない。
このおばあさま、家でも保護猫を何匹か飼われているうえに、近所の猫の世話もしているのだ。なぜ知ってるかというと、うちの「かふか」を子猫のときに保護してくれた方なのである。お元気そうでなにより(「子猫が我が家にやって来た!」)
さて、最後は夜の猫。あまりに暑いので出かける気にならない夏の日、夜なら少しは涼しかろうと散歩に出たが、湿度が高くて夜でもつらかった、という日。公園にハチワレがちょこんと座ってたのである。
ちょうど公園灯が当たる場所とはいえ、とても暗い。ISO感度をぐぐっと上げてもシャッタースピードは1/8秒。ダメ元で撮ってみたら、X-H2Sのボディ内手ブレ補正+16-80mm F4のレンズ内手ブレ補正の合わせ技は強力だった。
猫が「え? なんでこんな時間に人がいるの?」という顔をして一瞬フリーズしてくれたおかげで、望遠で1/8秒でもブレずに撮れたのだった。もちろん、暗くても猫瞳AFは問題なし。
かくしてX-H2Sを手に、いろんな猫と出会ってみたのであった。昼の猫も夜の猫もきっちり撮れる、さすが猫撮りフラッグシップ機なのであった。フラッグシップ機の割に、ボディもコンパクトなのでおすすめ。
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筆者紹介─荻窪 圭
老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/
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