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東大、高精度ミラーと計算で高分解能の軟X線顕微鏡

2022年07月14日 06時57分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学の研究チームは、高精度ミラーと計算を組み合わせた新たな軟X線顕微鏡を開発。さまざまな波長の軟X線で、哺乳類細胞内部の微細構造を50ナノメートル(ナノは10のマイナス9乗)の分解能で可視化することに成功した。

東京大学の研究チームは、高精度ミラーと計算を組み合わせた新たな軟X線顕微鏡を開発。さまざまな波長の軟X線で、哺乳類細胞内部の微細構造を50ナノメートル(ナノは10のマイナス9乗)の分解能で可視化することに成功した。 研究チームは今回、軟X線の全反射現象を利用する「ウォルターミラー」を組み込んだ新たな軟X線顕微鏡を開発し、「タイコグラフィ」法と呼ばれる計算機を利用するイメージング技術を組み合わせた。ウォルターミラーによって、これまで軟X線顕微鏡で課題となっていた色収差の問題を解決。さらに、タイコグラフィ法によって光学素子の作製精度に影響されない高い分解能を実現した。 色収差は、レンズなどで光を集光する際に、波長による屈折率の違いから、波長に応じて集光する位置にズレが生じる現象である。タイコグラフィ法は、レーザーのような干渉性の高い光を試料に当てた時に得られる回折パターンを計算機で解析することで、非常に高い分解能と感度を実現する手法であり、近年研究がめざましく進展している。 可視光と比較して波長の2桁以上短い光を利用する軟X線顕微鏡では、元素や化学結合の分布などの情報を、内部構造も含めて詳細に調べられる。今回の成果は生物・材料・デバイスなど、幅広い領域の研究や技術開発に力を発揮するものと期待されるという。 研究論文は、米国の学術雑誌であるオプティクス・エクスプレス(Optics Express)に、2022年7月5日付けでオンライン公開された

(中條)

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