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サウンドマイスター山内慎一氏の解説と合わせて、その魅力を探る

ロスレス対応サウンドバー「DHT-S217」を聴く、人生変わるほど音がいい

2022年06月13日 12時30分更新

文● 貝塚/ASCII

提供: デノン

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本体の底面におよそ75mmのサブウーファーを搭載。ゴム足の形状を変更し、安定感を高めている

低域の音響効果、余裕で描き分ける性能の高さ

 実際にDHT-S217のサウンドを聴いてみると、このコンパクトな筐体で、どうやってこのようなリッチな音質を実現しているのかと驚く。ユニットは左右に25mmのツイーター、90×45mmのミッドレンジドライバー、底面に75mmのサブウーファーという構成。この、底面に向かって垂直に音を鳴らすサブウーファーは、本製品のひとつの音質的な特徴を作り出している。

 というのも、多くの同価格帯のサウンドバーではサブウーファーは独立型で、それを部屋のどこに設置するかはユーザーに委ねられる。一般的には、テレビボードの脇や、サウンドバー本体の脇、スペースが許すなら、サウンドバー本体の下部に設置するパターンが多いと思うが、DHT-S217の場合、サブウーファーの位置は固定されていることになり、設計段階でサブウーファーの位置を考慮した音質チューニングが施されているわけである。

本体の左右にバスレフポート。DHT-S216ではグロス仕上げだったが、マット仕上げになった。指紋が目立たず、より落ち着いた雰囲気になった

 部屋の形状や壁の位置に応じて、試行錯誤しながら複数のユニットの設置場所を決めていくことは、趣味としてのオーディオの楽しいところだ。でも、DHT-S217なら、置くだけでデノンが用意してくれた最高のチューニング、ユニットとユニットの最適な位置関係をどこでも再現できる。

「一般家庭には、部屋の大きさや形、また聴取位置や出せる音量など、多くの制約があります。一方で、生活スペースや団らんのプライベートな空間でゆったりと音楽や映像を鑑賞するのは、とても楽しいことですし、オーディオの大切な部分と考えます。

 サウンドバーの開発では、Hi-Fiオーディオの開発などと比較して、ややコンパクトな試聴室をメインに試聴やチューンを行なっています。全社的にも、ワールドワイドに各地域でさまざまな試聴セッションを繰り返しています。

 特にDHT-S217の開発において重視したのは、試聴条件に大きく左右される音よりも、普遍的な音質のよさです。そこを求めて開発をしようと思うと、“音の純度”が、いっそう重要になってくるわけです」(山内慎一氏)

 レビューにあたって視聴したのは、新シーズンの公開でも話題の『ストレンジャー・シングス 未知の世界』から、シーズン2『未知の生物』というエピソード。本エピソードの終盤では、“裏側の世界”に入り込んでしまったウィル・バイヤーズが、未知の怪物に対峙するシーンと、ボブ・ニュービーが車を走らせるシーンが交互に展開する。

 ボブ・ニュービーのシーンには車のエンジンによるうなるような音が、ウィル・バイヤーズのシーンには何者かが地の底で蠢いているような音が使われていて、シーンの切り替わりに合わせて、場の雰囲気がガラリと変わる様子を、音響面でも効果的に伝えている。

 これらの音は、いずれも500Hzあたりまでと推定される低域をベースに、1000Hzあたりまでの中低域をレイヤーするようなかたちで仕立てられており、テレビのスピーカーから出力して聴くと、似通っているようにも聞こえる。ところがDHT-S217を通して聴くと、両者の音の違いは明確になる。ボブ・ニュービーのシーンの音は、エンジンが生み出す“日常的で現実的”な低域で、一方のウィル・バイヤーズのシーンの音は、得体の知らないものが迫ってくるような“恐ろしく、おどろおどろしい低域”なのである。

 この雰囲気の違いは、使用している音域の差に加えて、響きを生み出すリヴァーブや、やまびこ効果を生み出すディレイを使用して作り出していると思われるが、DHT-S217の優れた解像性能によって、通常は聞き逃してしまいそうな細かな効果もはっきりと拾うことができる。映像作品における、音が生み出す効果に改めて気付かされる思いだ。

 従来モデルから引き続き搭載している、音楽再生向けのPUREモードも試してみた。PUREモードは、音響に味付けをする処理をカットし、音源をストレートに楽しめる音楽鑑賞向けのモードである。切り替えはリモコンのPUREボタンを押すだけと簡単で、いつでも素早くモード切り替えができる。

付属のリモコン。中央にあるのがPUREモードへの切り替えボタンだ。DHT-S217にはメニュー階層などがなく、どのボタンも押すだけでアクションが起こる。非常にシンプルで使いやすい

 試聴したのは、英人気シンガーEd Sheeranの「Bad Habits」。この曲は機械的なキックとハイハット調のリズムに、やや浮遊感のあるボーカルが乗り、周囲を広大な空間で鳴っているようなシンセサウンドが包むように彩っている。それぞれ、鳴っているタイミングと、鳴っていないタイミングがあり、盛り上がるポイントでは一斉に鳴るという構造だ。

 それぞれの音は、耳までの距離が異なって聞こえるようにエフェクト処理されているが、DHT-S217を通して聴くと、その違いがはっきりと感じ取れる。この音と耳との距離感は、ミックス段階でかなり強調されている印象なので、2チャンネルのイヤフォンやヘッドフォンで聴いても、脳で音の位置が補完される感覚もある。だが、DHT-S217を通して聴くと、本当に違う地点から音が出発しているように聞こえるのだ。

 続いて試聴したのは、アメリカの兄弟トリオAJRの「World's Smallest Violin」という楽曲。最近、ショート動画SNSなどでもよく使われているので、耳にしたことのある読者も多いかもしれない。この楽曲は、オーケストラの演奏前のチューニングを思わせるボーカルの整調から始まり、手拍子やパーカッションのビートが曲をリードし、1コーラス目の途中まではベースが入るという特徴的な構成を持っている。

 こちらの曲の場合、楽器と楽器にはそれほど隙間がなく、一体感がある音像だ。どちらかというと、パートによって特定の楽器を鳴らしたり、鳴らさなかったりすることでメリハリをつけている。しかし、DHT-S217を通して聴くと、彼らが楽しそうに演奏している様子が伝わってくるように音がイキイキとしている。

 DHT-S217の再生可能周波数は20Hz~20000Hzと標準的だが、なぜこのような印象が生まれるのだろう? 思うに、それこそがPUREモードの魅力なのではないだろうか。どの音域をどう処理し、耳に届かせるかがまさしくオーディオメーカーの特色になるわけだが、DHT-S217のPUREモードは、“特徴がないことが特徴”という考え方であり、出力される音は、味付けのない、ニュートラルに近いサウンドとなり、純粋なドライバー性能に強く依存する。つまりは、制作者がスタジオで目指した音に近くなるのだ。

 オーディオ機器を評価する場合によく言う「低域が強く出る」「高域がクリア」といった表現は、本来いずれもメーカーによるチューニングの特色を表すものだが、音源によっても大きく左右される。「各周波数特性がバランスよく出ている方が望ましい」などある程度の指針はあっても、音楽はアートだ。制作者の目指すゴールに応じて、ルールは簡単に覆される。だから、DHT-S217のPUREモードを使えば、シンガーやミュージシャンがスタジオで聞かせたかった音に近づくことができ、それが結果的に美しい音に感じられるのだと思う。

 そして、映像の鑑賞にしても、音楽の鑑賞にしても、この価格帯で、ほとんど置くだけで良質な音響体験が手に入るDHT-S217は驚異的。音にこだわりたい。でも色々な事情によってそれが実現しない。諦めようとも考えた。でもやっぱり、音にはこだわりたい。そんな悩ましい人々にデノンが贈る渾身の製品がDHT-S217なのだ。

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