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荻窪圭の“這いつくばって猫に近づけ” 第766回

ソニーα、ニコンZ、キヤノンEOS R、OM-1……と出そろってきた「猫瞳AF」はどれが一番か、整理してみた

2022年06月01日 12時00分更新

文● 荻窪 圭/猫写真家 編集●ASCII

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しゃがんだら急にこっちに歩いてきたので慌てて広角で撮影したのだけど、きっちり瞳にAFが来てくれたのはさすが。2022年1月 ニコン Z 9

 ここ数年、デジタルカメラでいちばん進化したのはAFだよなあと思う。どんどん賢く、速くなる。本連載的にはもちろん「猫瞳AF」の話だ。各社、ある程度出そろってきたのでちょっと整理してみたい。

 最初に猫瞳AF(正式には「動物対応リアルタイム瞳AF」)がお披露目されたのは、2019年のCP+。まさかその後、3年連続でリアル開催が中止になるとは思いもしなかったCP+である。ソニーブースの片隅で紹介されていたのだ。その技術は、ファームアップによっていくつかの機種にもたらされるということだった。そして、α7 IIIなどに提供され、その後の新機種ではすべてリアルタイム猫瞳AFが可能になったのである。

 これは、ファームアップ後のα7 IIIの猫瞳AFで撮った猫。

最初に猫瞳AFに対応したαシリーズから、α7 IIIの瞳検出画面。このときは「おお、未来が来た」と思ったものである。

α7 IIIの猫瞳AFを使って撮った白猫。ふさふさした毛がカッコいい猫だった(その後、この場所にはいなくなったので、現在どうしているかは不明。誰かに飼われているといいのだけど)。2019年4月 ソニー α7 III

 次に、猫瞳AFを実現したのがニコンのZ 6とZ 7。カメラの発売は2018年の秋~冬だったが、その後、2020年春のファームアップによって猫瞳AFに対応したのだ。遅れること約1年である。

猫瞳AFに対応したZ 6の画面。瞳の枠が黄色いのでわかりづらいが、ちゃんと眼にフォーカスが来ており、スティックを使って右目と左目を切り替えることもできる。

「保護猫シェルター QUEUE」で撮影。猫瞳AFで狙ってたら、ぺろっと鼻を舐めた瞬間を撮れた。2020年3月 ニコン Z 6

 となると次はキヤノンだな、と待っていると、2020年の夏に登場したEOS R5/R6で猫瞳AFを搭載してきたのだ。ここでキヤノンが一歩リードする。

 「動物優先AF」にすると、動物を「優先」するだけで、動物じゃなくて人にレンズを向けるとちゃんと人の瞳を認識してくれるのだ。明示的に人か動物か切り替えなくても、ある程度はなんとかなるのである。しかも、瞳が見えてなくても顔や体で認識してくれるのである。

EOS R5の猫瞳検出画面。白い枠なのでわかりづらいけど、ちゃんと瞳を見つけて、スティックの操作で左目右目を変えられる。

ウチのかふか。虫が入り込んでいたのか、やたら上のほうを気にしていたので、ぱっとカメラを向けて撮影したもの。横顔だけどきっちり瞳にフォーカスが来てる。2020年8月 キヤノン EOS R5

 いやあ、どんどんハードルが上がりますな。

 このハードルに果敢に挑んだのがニコン。2021年末に出たフラッグシップモデルのZ 9では、人も猫も自動判別して……つまり、検出する被写体を指定しなくても、自動的に猫がいればその瞳を見つけてくれるのだ。これは素晴らしい。

瞳の枠が見づらいが、ニコン Z 9の瞳検出画面。3Dトラッキング中。

鞆の浦(広島県福山市)でたまたま出会った子猫。周りの枝にとらわれず、ちゃんと瞳にフォーカスが来てるのがいい。2022年1月 ニコン Z 9

 いやあ、ほんとに素晴らしい。70万円以上するけど。しかも、かなりデカくて重いけど。おいそれと買えるカメラではないが、もし、このイメージセンサーとAFが普及機に降りてきたら最強だ。

 ニコンとキヤノンも来たぞ、先駆者のソニーはどうする? と期待したのだけど、残念ながら最新のα7 IVでも、人と動物は自動切り替えにはならなかったのだった。

 さて、ソニー、ニコン、キヤノンの3社は猫瞳AFに対応してきた。どれもリアルタイムでトラッキングしてくれるので、AF-Cモードにして連写してもOKだ。

 他社はどうなのか。パナソニックは以前から動物AFに対応していたが、瞳AFというわけではない。でもまあ十分高性能だけどね。OMデジタルソリューションズは、OM SYSTEM OM-1で初めて猫瞳AFに対応した。頭や胴体でも検出してくれる。AFも連写も速い。

 

OM-1の猫検出画面。猫全体と瞳の両方をちゃんと見つけてくれてる。

にゅっと顔を出した、かっぷくのいいハチワレ。こういうシーンだときっちり瞳にフォーカスが来てくれる。2022年5月 OMデジタルソリューションズ OM SYSTEM OM-1

 ただ、瞳や猫全体の検出は優秀なのだけど、瞳を検出しながらも、実際のピントは瞳の手前にあるものに合っちゃうケースがあり、そこはファームアップに期待したい。

 猫瞳AF対決で順位を付けると、1位はニコン Z 9だろう。そんなわけで、冒頭写真はZ 9で撮った白猫だ。

 2位はキヤノンのEOS R3/R5/R6の3機種(プラス、先日発表されたR7/R10)ってとこだ。

 さて、残るは富士フイルム。本稿執筆時点ではまだわからないけど、次の機種で対応するんじゃないかなという気はしてる。

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筆者紹介─荻窪 圭

 
著者近影 荻窪圭

老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/

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