欧州議会が4月20日、「Radio Equipment Directive」の改訂案を可決した。これにより、EUで販売するスマートフォンの充電端子はUSB-C(USB Type-C)に共通化されることになりそうだ。最も影響を受けるのはアップルだ。
EUは標準化と規制が得意(好き)
2年3ヵ月ぶりに海外出張してきた。あまりに久しぶりで、これまで何を持って行っていたのか忘れてしまっており、準備に手間取った。
毎回、パスポートの次に忘れていないかドキドキするのが電子機器関連だ。ノートPCに電源、スマートフォンにチャージャー、カメラにその充電器。このほかバックアップ用小型ストレージとそのケーブル、モバイルバッテリーとケーブル、ノートPCに通常のUSB端子が付いていないので、そのためのアダプターも必要……とこんな具合だ。
スマートフォンは2台、それぞれ異なるケーブルが必要だ。1つはiPhone用のLightning、もう1つはPixelのUSB Type-C。今回、USB Type-CはMacBook Airのものを共用することにした。今回は米国だから不要だが、行き先によっては変換プラグも必要だ。念のためにワイヤレス充電器も持って行こうかと思ったが今回は止めた。
EUの議員たちも、同じような悩みがあったのだろう。電子機器のチャージャーを共通化すべきだというのが、今回の「Radio Equipment Directive(RED)」だ。標準化が好きな欧州らしい。実際のところ、モバイル分野でEUの標準化によるメリットは昔から大きい。古くはGSM方式があり、その一部であるSMSは2000年には相互運用も実現していた。
過去にmicroUSBへの統一では失敗している
REDは決して新しいアイデアではない。その歴史は結構長い。
今回の法案は、1995年のR&TTE(Radio and Telecommunications Terminal Equipment Directive)の改訂となるが、ときは2009年にさかのぼる。2009年といえばAndroidスマホが出始めた頃だろうか。欧州委員会(EC)はスマートフォンなどの小型電子機器向けの共通チャージャーという考えを支持し、業界とMoU(覚書)の形で、自主的な合意に至った。欧州ベースのNokia、そしてサムスンはもちろん、アップルも参加した。
当時、チャージャーの種類はざっと30種類。当時の地域内市場担当委員は、共通のチャージャーで合意するよう促した。具体的にはmicroUSBだ。しかし、アップルは2012年にLightningを導入した。MoUに対しては、microUSBへのアダプタを用意することで配慮を見せた。
MoUの期限は2014年に切れた。2009年には30種類あったというスマートフォン向けチャージャーは3つに集約されたという(USB 2.0、USB-C、Lightning)。しかし満足のいく成果が出ていないとして、2018年に法案ができた。これがREDだ。今回は、2014年に仕様が策定されたUSB-C。なお、アップルはiPadの最近のモデルではUSB-Cを採用している。そして、欧州議会は4月20日、43対2でREDを可決した。

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