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宇宙線中の鉄・ニッケル成分の高精度な観測に成功=早稲田大など

2022年04月21日 06時07分更新

文● MIT Technology Review Japan

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早稲田大学、イタリアのシエナ大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの共同研究チームは、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに搭載された宇宙線電子望遠鏡「CALET(高エネルギー電子・ガンマ線観測装置)」を用いて、銀河宇宙線中の鉄とニッケルの世界最高エネルギー領域に至る高精度なスペクトルを観測することに成功した。CALETで得られた信頼性の高い宇宙線原子核スペクトルは、銀河宇宙線の加速・伝播機構のモデル検証のために重要な情報を提供するものとして、天体物理学への貢献が期待される。

早稲田大学、イタリアのシエナ大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの共同研究チームは、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに搭載された宇宙線電子望遠鏡「CALET(高エネルギー電子・ガンマ線観測装置)」を用いて、銀河宇宙線中の鉄とニッケルの世界最高エネルギー領域に至る高精度なスペクトルを観測することに成功した。CALETで得られた信頼性の高い宇宙線原子核スペクトルは、銀河宇宙線の加速・伝播機構のモデル検証のために重要な情報を提供するものとして、天体物理学への貢献が期待される。 ISSで5年間以上の定常観測を継続しているCALETは、核子あたり10ギガ電子ボルトから2.0テラ電子ボルトの広いエネルギー領域で、宇宙線中の鉄成分のスペクトルの高精度直接観測を実施し、テラ電子ボルト領域に至るまでスペクトルの冪(べき)は-2.60で一定であることを測定した。さらに、宇宙線中のニッケル成分についても、核子あたり8.8ギガ電子ボルトから240ギガ電子ボルトの領域で観測し、スペクトルの冪は-2.51で一定であることがわかった。 今回の結果は、宇宙線中のより軽い原子核のスペクトルに一般的に見られるスペクトルの硬化(高エネルギーになっても流束の減少が少ない)が、鉄とニッケルには存在しないことを示している。これまで測定された宇宙線スペクトルの形状はスペクトル全体の総合的理解が困難な状況であったが、CALETの測定結果は、首尾一貫した実験的描像を描くことを可能にした。 ニッケル成分の結果は2022年4月1日に、鉄成分の結果は2021年6月14日に、それぞれ国際学術雑誌のフィジカルレビュー・レターズ(Physical Review Letters)誌に掲載された。

(中條)

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