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難治がんへの抗がん剤の効果を増強する技術=名大など開発

2022年04月18日 12時24分更新

文● MIT Technology Review Japan

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名古屋大学などの研究グループは、膵がんの間質(ストローマ)で増えるがん関連線維芽細胞(CAF:Cancer-Associated Fibroblast)の性質を遺伝子操作や化合物で変化させ、抗がん剤の効果を増強することに成功した。膵がんマウスモデルで確認し、ヒトに応用できる可能性があるという。

名古屋大学などの研究グループは、膵がんの間質(ストローマ)で増えるがん関連線維芽細胞(CAF:Cancer-Associated Fibroblast)の性質を遺伝子操作や化合物で変化させ、抗がん剤の効果を増強することに成功した。膵がんマウスモデルで確認し、ヒトに応用できる可能性があるという。 膵がんなどの難治がんには、間質が高度に線維化する特徴がある。線維化で中心的な役割を果たすのがCAFで、がん組織の硬化や内圧上昇を招き、血管の虚脱、抗がん剤の浸透を阻害する。CAFには、がん促進性CAFとがん抑制性CAFが存在すると考えられている。 研究グループは以前の研究で、がん抑制性CAFの機能マーカーとして「Meflin(メフリン)」という分子を特定し、がんの進行中にメフリン陽性がん抑制性CAFが、がん促進性CAFに形質転換することを発見している。ただし、人為的にがん抑制性CAFを増やす、CAFの性質を変化させる方法は不明だった。 今回、研究グループはメフリンの発現を上昇させ、がん促進性CAFをがん抑制性CAFに変化させる物質を探索した。その結果、自然界には存在しない合成レチノイドの一種である「AM80」がメフリンの発現を有意に上昇させ、がん促進性CAFをがん抑制性CAFに変化させることが分かった。マウスでの実験では、AM80自体には抗腫瘍効果はなかったが、抗がん剤を併用することで腫瘍内抗がん剤濃度が上昇し、抗がん剤を単独で使用した場合に比べて有意な抗腫瘍効果を発揮した。 研究成果は4月13日、「オンコジーン(Oncogene)」誌にオンライン掲載された。成果を受けて、切除不能膵がんに対するAM80と従来の抗がん剤の併用効果を検証する第1、第2相治験が始まっている。

(笹田)

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