このページの本文へ

神経突起伸長の仕組み解明、慢性期脊髄損傷治療へ期待=慶應大

2022年04月11日 16時15分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

慶應義塾大学の研究チームは、ヒトiPS細胞から作製したニューロンにおいて、神経突起が伸長するメカニズムを解明した。同研究チームはこれまでマウスでの実験で慢性期脊髄損傷の治療に成功してきたが、ヒトの神経突起伸長のメカニズムが解明されたのは初めて。慢性期脊髄損傷の治療につながる可能性がある。

慶應義塾大学の研究チームは、ヒトiPS細胞から作製したニューロンにおいて、神経突起が伸長するメカニズムを解明した。同研究チームはこれまでマウスでの実験で慢性期脊髄損傷の治療に成功してきたが、ヒトの神経突起伸長のメカニズムが解明されたのは初めて。慢性期脊髄損傷の治療につながる可能性がある。 今回の研究では、γ-セクレターゼ阻害剤で前処理したヒトiPS細胞由来神経幹細胞/前駆細胞の集合体を解析。全転写産物を調べて、鍵となる遺伝子を探索した。その結果、「GADD45G」という遺伝子の発現が際立って高くなっていたことが分かった。さらに、関連タンパク質の発現やリン酸化の状態を調べたところ、GADD45Gが「p38」のリン酸化を引き起こし、リン酸化p38が「CDC25B」のリン酸化を惹起していることが明らかになった。最終的には、「CRMP2」の514番目の「トレオニン」の脱リン酸化を促進することで、神経突起の骨組みである微小管の重合を促し、神経突起伸長を促進していることが判明した。 また、細菌の一種であるストレプトマイセス属が産生する化合物「RK-682」が、上記の経路のうちp38のリン酸化を維持することで、シグナル経路を増強し、神経突起を伸長することが分かった。さらに、研究チームがこれまで使用していたγ-セクレターゼ阻害剤である「DAPT」と比べて、「Compound 34」というγ-セクレターゼ阻害剤が10分の1の量で同等の効果を発揮することも明らかになった。 研究内容は4月4日、「アイサイエンス(iScience)」誌に掲載された。

(笹田)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ