ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第659回
ISSCC 2022で明らかになったZen 3コアと3D V-Cacheの詳細 AMD CPUロードマップ
2022年03月21日 12時00分更新
3D V-Cacheの詳細をAMDが公開
さてそのL3だが、当初から3D V-Cacheの実装が想定されていたようである。このあたりの話は連載651回でも説明しているが、これはTech Insightsによる分析である。
今回はAMD自身により、この3D V-Cache周りの説明があったのでもう少し説明したい。まず実際のTSVの位置配置であるが、3次キャッシュのど真ん中という位置に見える。
接続方法であるが、SoIC-F2Bを利用して接続しているらしいということは連載618回で説明した。今回はこれがダイの断面撮影付きで紹介された。
右側はわかり難いが、Hybrid Bond 3D→MicroBump 3D→C4で、ダイがどんどん大きくなっていることがわかる。要するに配線密度を高めようとするとMicroBumpでも足りず、Hybrid Bondが必要というわけだ
こちらのもう少し詳細な説明が下の画像だ。
以前のTech Insightの資料ではTSVが9μmピッチとされていたが、これが再確認された格好だ
トップ・ダイ、つまり3D V-Cacheの方は配線層が14層(一番下だけがアルミ、その上はすべて銅配線)で、やはりTSMCのN7で製造されるとしている。2つのダイの間の接続はBPM(Bond Pad Metal)と呼ばれるものだが、この材質がなにかについては一切説明がない。BPMは以前TSMCがSoIC-Bondと呼んでいたものであろうと思われるが、単純に銅なのかあるいはなにか他のものか、現時点ではよくわからない。
Tag RAMとLRU(Least Recently Used:キャッシュフルの際に、どこをメモリーに追い出すかを決めるアルゴリズムの1つ)用に1088個の6KBブロックがあるとされる。おそらくTagに1024個、LRU用に64個と思われる
SRAMの構造は、128KBのSRAMブロックを512個集積したとしており、スライスの容量はおそらく4MBのままと思われるので、1スライスあたり32ブロックから構成される。一方、信号レベルでのTSVをまたいだ際の配慮だが、さすがに信号をそのまま接続するというのは危険だったためか、ESD(Electro-Static Discharge:静電気放電)防止用のクランプ回路と、その後で信号を正規化するアイソレーション回路は入っているが、基本はその程度で済んでいるようだ。
これがインフィニティー・ファブリックやHBM2、あるいは最近話題のUCIeなどでは、きちんとPHYを用意する必要があるので、それに比べると多少配慮はしているものの、基本信号線をそのままつないでいる感じに近い
ただその前後にバッファが入り、クロックで同期しているあたり、どうしても1サイクル分のレイテンシーが増えることは避けられないようだ。そうは言ってもたかだか1サイクル程度のレイテンシー増加で容量が64MB増えれば、十分ペイすると考えていいだろう。

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