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コロナ禍でのメンタルヘルス問題への取り組みも言及

買い手は訪問営業にこだわっていないーHubSpot Japanの調査に見る営業現場の変化

2022年02月21日 11時30分更新

文● 末岡洋子 編集●大谷イビサ

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信頼を得るには広告よりも首尾一貫した行動から

 2)の信頼は、購買意思決定における25の項目について、コロナ前と比較して重要度があがったものを選んでもらった(複数回答)ところ、48.2%が「信頼できる」を選んだというものだ。もっとも重要だと思うものについても「信頼できる」が最多だった。

 自由解答で「社会が全体的に打撃を受けている中で信頼度の高さを重要視するようになった」などの声が挙がったことから、「コロナ禍という人類共通の困難な社会環境において、製品やサービスの前にそれを提供する企業の姿勢、価値観、そこで働く従業員の普段の振る舞いに対して信頼にたりうるかという視点を、買い手が持つようになったのでは」と分析した。

 企業に対する信頼につながる要素としては、「営業担当者が自社の要望を的確に実行してくれる」「営業担当者が自社のことを真剣に考えてくれている」「企業として言っていることと実際の行動が一致している」が上位3つに挙がった。一方で、広告制作やタレントを起用したTV CMなどを選ぶ人は少なかった。この結果から亀山氏は、「企業の営業マーケティング担当者は、信頼は単発の個別施策で得られるものではなく、直接顧客対応を行なう営業担当者レベルと企業レベルの両方で首尾一貫した行動によって醸成されることを認識すべき」とまとめた。

 そのための行動のポイントとして、伊佐氏はHubSpot Japanの取り組みを紹介した。同社は企業文化の明文化と浸透を重要視し、自分たちの企業文化を125ページものスライドにまとめて「カルチャーコード」として作成、社員だけではなく一般にも公開しているという。「顧客起点の社風やカルチャーは自然発生するのではなく、意識して作り上げていくもの」と伊佐氏は述べた。

 また、企業として一貫性のあるコミュニケーションを実施するためには、「顧客情報を社内で一元管理することが重要」という助言も。調査では、社内で顧客情報のやり方が明確ではない、わからないと回答した人が3割いたことにも触れた。

メンタルヘルスは甘えではない

 3)は営業組織の課題を探るものだが、「従業員のモチベーションの維持」が社員教育・マネジメント面での課題のトップに挙がった(45.2%)。「健康・メンタルヘルスの管理」は22.9%だが、「自分の企業は社員のメンタルヘルス向上に積極的に取り組んでいると思うか?」という質問に対しては、経営者は48.7%がそう思う・ややそう思うと回答したのに対し、営業担当者で同じ回答した比率は24.5%。ギャップがあることが浮き彫りになった。企業がメンタルヘルスに取り組んでいると回答した人に、その取り組みがメンタルヘルスの向上につながっているかをたずねたところ、そう思う・ややそう思うは30.7%、「まだ明確な成果にはつながっていないようだ」と亀山氏は述べた。

営業組織における社員教育やマネジメント面の課題

 伊佐氏はメンタルヘルスなしに、モチベーション維持は難しいとし、「メンタルヘルスを重視することは甘えではなく、事業推進に不可欠であるというメッセージを、経営陣が自ら発信すること」が重要だとつづけた。

 伊佐氏自身も積極的に有給休暇を取ったり、業務時間外にはメール、Slackを含めたメッセージを送信しないことを心がけているという。伊佐氏はまた、会社の福利厚生としてコーチングセッションを受けており、自信がメンタルヘルスを維持するためにやっていることを積極的にメンバーに伝えていることも明かした。

 あわせて、HubSpotが従業員満足度調査eNPS(Employee Net Promoter Score)を通じて、メンタルヘルスについて従業員が何を課題と感じているかや会社への要望をヒアリングしていることも紹介した。得られた結果を経営陣と人事で施策につなげているそうだが、その1つとして2021年より7月第一週を「Global Week of Rest」(グローバル一斉休業週)として一斉に休むことにしたことも紹介した。2020年は各国が交代で休みをとるという制度だったが、他の国の同僚から連絡がきて休めないという声を受け、一斉に休むことにしたそうだ。

HubSpot Japanの顧客数は5年で15倍、今後は日本のエコシステム強化へ

 最後に、HubSpot Japanの事業について、HubSpot Japanの代表・カントリーマネージャーを務める廣田達樹氏が説明した。

HubSpot Japanの代表・カントリーマネージャーを務める廣田達樹氏

 HubSpotはCRMプラットフォームだが、「スケールアップのため」と目的を明確にしている。スケールアップとは、「非線形的な成長を目指している企業を指す」と廣田氏。積極的な投資の下で事業規模を高速に拡大するフェイズにある企業を支援できるよう、使いやすさ、拡張性に優れると特徴を説明する。廣田氏によると、HubSpotがもっとも価値を発揮するのは、「従業員規模でいうと25名から2000名程度の企業、中でも200名以上のゾーン」という。

 創業は2006年、日本を含め13ヶ所に拠点をもつ。顧客は世界約120カ国・13万5000社、売上高は2014年から2021年まで年間平均成長率41%増で成長している。日本は2016年に非英語圏の国として最初にオフィスを構えた国で、以来2021年まで顧客数は約15倍に増えた。「グローバルの2倍以上のペース」と廣田氏は胸を張る。「日本におけるCRMの導入数は34.8%。米国は91%で、まだまだ日本においてCRMは普及の余地がある」と述べた。

 数あるCRMの中で、HubSpotの差別化は「インバウンド」とする同社の開発思想だ。創業者が起業時から提唱しているもので、「相手から価値を受け取る前に、こちらから価値を提供するという基本に基づいた営業やマーケティング、カスタマーサービス経営の考え方」と説明する。

 具体的には、見込み客リストに片っ端から電話をかけて売り込むのではなく、ウェビナーで有益な情報を紹介し、自社に興味を持った人にフォローアップの電話をするなどのことが考えられるという。「相手がすでに価値を受け取っている状態からのコミュニケーションになる」と廣田氏。

 「インバウンドの考え方とは、変化し続ける顧客の今をつねに捉え続け、それに合わせて自分たちも敏捷に変わっていくこと」と廣田氏、これは今回の調査で課題にあがった信頼の構築に繋がると考えを語った。

 今後の注力分野としては、「変化に適応しながら持続可能な形で成果を出せる組織の追求と情報発信」「日本におけるHubSpotエコシステムの強化」「スケールアップ企業への販促活動の強化」の3つ挙げた。特に、日本におけるエコシステムについては、現在公式連携しているアプリは1036個あり、この中にはSansan、Freeeなども含まれている。今後は日本のユーザーからのニーズが高いアプリとの連携を加速していくという。

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