このページの本文へ

N高、可児工業、阿南高専、福井工大附属福井が出場

盤石な王者N高の打倒を目指して燃える各高に注目! 「全国高校eスポーツ選手権」ロケットリーグ部門で2021年の頂点が決定

2021年12月27日 19時00分更新

文● DENPA IS CRAZY 編集●八尋/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

全国高校eスポーツ選手権のロケットリーグ部門が開催

 今年もこの季節がやってきた。eスポーツに青春をかける高校生たちが雌雄を決する大会「全国高校eスポーツ選手権」。「eスポーツを日本の文化に」という想いから始まった本選手権は、サードウェーブが特別協賛、一般社団法人全国高等学校eスポーツ連盟(JHSEF)と毎日新聞社が主催している。本稿では「ロケットリーグ部門」の準決勝、決勝戦をレポートする。

 今回で第4回目を数える本選手権では、過去にも大きなドラマが生まれてきた。勝利の感動で涙を流した選手も、敗北の悔しさから自らを責める選手もいた。高校生という僅かな3年間、その3年間という貴重な時間、もちろん勉学なども並行しながら部活のメンバー、チームのメンバーと真剣に競技に向かい合うからこそ生まれるドラマ、それが何よりの見どころだ。

 今回レポートする種目の「ロケットリーグ」は、Psyonix社が開発したレースゲームとサッカーゲームが融合したユニークなゲームシステムが特徴の対戦ゲームだ。ルールはサッカーに似ており、制限時間内に相手チームより多くゴールにボールを入れたチームが勝利となる。

サッカーに似たルールで、制限時間内に相手チームより多くゴールにボールを入れたチームが勝利となる

 レースカーが空を飛んでサッカーボールをコントロールするスクリーンショットや動画を見ると、単純なゲームにみえるかもしれない。だが本作は決して単純ではない、技術とセンス、そして練習と努力が必要なeスポーツタイトルだ。

 トッププレイヤーの動画を見ると、軽々しく空を飛んでボールをコントロールしているように感じるが、初心者だとそもそも空を飛ぶというアクションが難しい。その上空中で姿勢をコントロールしながら、ボールを上手くコントロールするにはそれだけでもかなりの練習を必要とする。

単純そうにみえるが、実際にやってみるとなかなか操作が難しい

 そして本大会で採用されているルールは3対3のチーム戦だ。1人のスーパープレイヤーだけで勝てるわけではない、3人の連携が何より重要だ。テクニックとチームプレイ、それこそが勝利への鍵となる。オフェンスを担当していると思った選手がと思った次の瞬間にはディフェンスに変わっているなど、スピード感ある試合が楽しめる。

 今回の準決勝には、全国から108校162チームによる熾烈な予選を勝ち抜いたN高(沖縄)「Nポテ」、可児工業(岐阜)「KTRL」、阿南高専(徳島) 「Kamase Dogs」、福井工大附属福井(福井)「サルの音楽隊」の4チームが勝ち上がった。Nポテにはロケットリーグのプロ選手であるBurn選手が所属しており、その実力はかなりのもの。各チームとも打倒Nポテを誓った。

N高(沖縄)「Nポテ」、可児工業(岐阜)「KTRL」、阿南高専(徳島) 「Kamase Dogs」、福井工大附属福井(福井)「サルの音楽隊」の4チームがファイナルに出場

 準決勝第1試合はNポテとKTRLのマッチだ。試合前Nポテのnekota選手は本種目について「高校でずっとやっているので青春のようなものですね」と、これまでの努力の結果を見せたいと語った。また対戦相手の「KTRL」のi-Babel選手は「この1年半近く何千時間とプレイしているので強く戦いたい」とこちらも練習の成果を見せたいと語った。

Nポテ

KTRL

 準決勝第1試合の様子は終始Nポテが優位にゲームを運んだ。1ゲーム目では試合開始わずか16秒、選手紹介が始まろうかというタイミングでNポテがファーストゴールを決める。だがその6秒後KTRLがお返しのゴールを決めイーブンに。そこからNポテの怒涛の攻撃が続き、大量得点が入っていく。

 KTRLも徐々に返していくが、BURN選手の巧みすぎるスーパープレイも飛び出し、スコアは7-2でNポテが1ゲーム目を先取する。そして2ゲーム目も5-0、ここでKTRLが負けると準決勝敗退が決まってしまう厳しい状況だ。だが流れに乗ったNポテを止められなかった。3ゲーム目は強固なディフェンスで得点をなかなか許さなかったが、Nポテの攻撃力がそれを上回った印象だ。2-0でNポテが3ゲーム連続で先取し、準決勝第1試合はNポテの勝利、決勝戦へと駒を進めた。

 試合後のインタビューに答えたKTRLのi-Tapio選手は「自分の力だけではここまで来れなかった。チームや家族、顧問の先生に感謝を伝えたい」と感謝の気持ちを伝えていたのが印象的だ。

 続く準決勝第2試合は「Kamase Dogs」と「サルの音楽隊」のマッチだ。試合前「Kamase Dogs」のキメラのつばさ選手は「1人が強いのではなく、みんなが強い」と自信を見せる。そしてただのぬのきれ選手は「ただの噛ませ犬では終わらせないというところを見せたいと思います」と勝利への強い思いを語った。

Kamase Dogs

サルの音楽隊

 サルの音楽隊も闘志を見せ、「去年はベスト16で敗退したので、自分がどこまで成長したかを見てみたい」と自分の成長の自信を感じるrukiki3選手、そして「N高を倒しててっぺんに立ちたい、それだけのためにやっています」と闘志をむき出しにするYo-san選手の姿が印象的だった。

 試合前の様子を見ると比較的緊張がほぐれているように見えた「Kamase Dogs」、そして、サポートのmonmon4612選手が全員に声をかけて試合へ挑む「サルの音楽隊」と、お互いにリラックスして試合に挑もうという空気が感じられた。

 さて試合展開だが第1ゲームのファーストゴールを決めたのはKamase Dogs。攻撃的なムーブで積極的にゴールを狙っているように感じた。だがそこから2点を返すサルの音楽隊。とくに事前のインタビューでwhiterabbit25252選手にボールを渡せばゴールを決めてくれると話していたとおり、ボールを任せてほかのメンバーが妨害に動いたのが印象的だった。

 whiterabbit25252選手はそのあともゴールを決め、まさにエースストライカーという印象だ。1ゲーム目はサルの音楽隊がまずは勝利をもぎ取り、2ゲーム目もその勢いは衰えずサルの音楽隊が制する。

 だが第3ゲームは戦闘スタイルを変えたKamase Dogsが全体的にペースを掴んだ。Kamase Dogs優勢で進む試合だったが、だが残り0秒ちょうどにゴールを決めて延長戦に持ち込んだのが、whiterabbit25252選手。これには筆者も観戦しながら驚いてしまった。そして延長戦でサルの音楽隊のrukiki3選手がゴールを決め、第3ゲームもサルの音楽隊が制した。これは本当に熱い展開だった。

 決勝戦はNポテ対サルの音楽隊。見どころはNポテのBURN選手と、準決勝で爆発力を見せたwhiterabbit25252選手だろう。2人のエースのぶつかりあいに注目したいところ。

 Nポテのnekota選手は「このまま優勝を目指したい」と意気込みを話す。打倒N高に燃えるサルの音楽隊のmonmon4612選手は「絶対勝ちます」と力強い。

 試合を見るとNポテが実力で上回っていたのかなという印象だ。第1ゲームは5-0でNポテのペースで進んだ。しかし、第2ゲーム前もサルの音楽隊は雰囲気もよさそうで、気持ちの面では負けていない印象だった。

 第2ゲームもNポテの猛攻は衰えない。サルの音楽隊のディフェンスもきっちり機能しているが、Nポテの攻撃力が上回っている印象だった。BURN選手のボールコントロールの個人技なども飛び出し、もう止められない。第2試合も8-0と実力差を見せつけるような展開になる。

 最後の第3試合。ここでも爆発したのがBURN選手だ。開始38秒で空中からのきれいな着地で1ゴール目、続く56秒でも華麗なドリブルからのロングシュートで2ゴール目を決めるなど勢いがとまらない。1分5秒でサルの音楽隊のrukiki3選手がなんとか1点を取り戻すも、その後もNポテが得点を重ねていく。最終的に7-1でNポテが勝利、第4回全国高校eスポーツ選手権ロケットリーグ部門の優勝はN高等学校のNポテに決まった。

第4回全国高校eスポーツ選手権ロケットリーグ部門の優勝はN高等学校のNポテに

 今回の大会はN高のNポテが実力差を見せつけるような戦いになったように感じた。だが惜しくも敗れてしまったチームの選手たちの戦いはまだ終わらない。そのスピリットは先輩から後輩へと受け継がれ、練習を重ねてリベンジを果たすべく次の戦いへ挑むことだろう。次の彼らの青春の輝きを見るのが今から楽しみだ。

カテゴリートップへ

関連サイト