ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第648回
VIA C3を開発したCentaurをインテルが買収、もとはMIPSだったArchiTekのRISC-Vコア
2022年01月03日 12時00分更新
今週は中休みとして、過去の記事のアップデートを2つお届けしたい。
ついにCentaurが消える
連載560回で説明したCentaur。もともとはGlenn Henry氏が1995年に立ち上げたファブレスのx86互換プロセッサー開発企業である。
Glenn Henry氏、もともとはヘリコプターパイロット(1962~1963年)だったが、視力の問題で引退を余儀なくされ、その後何社かを経由してなぜかIBMのフェローになっているという、これはこれで不思議な経歴を持つ方である。IBM時代は、System/32やSystem/38、IBM PC RTなどに関わったという話は連載493回で触れた。
その後IBMを退職し、DellでSVP兼CTO(Dellとしては初めてのR&D部門のVPとして迎え入れられ、すぐにSVPになったそうだ)、その後しばらくMIPS Technologiesでコンサルタントをしていた。当時MIPSはSGIの傘下にあり、それもあってSGIはMIPSとx86のアーキテクチャーを統合することを目論んでおり、これの手助けをしていたらしい。
このあとHenry氏はCentaur Technologyを設立。IDTにスポンサー(兼x86のライセンス提供:IDTは過去にインテルのセカンドソース生産をしていたことがあり、これもあってx86プロセッサーを製造するライセンスを保持していた)になってもらい、ここでWinChip C6やこの後継のWinChip 2/2Aを販売。さらにWinChip 3/4の開発もしていた。
しかしIDTがx86互換CPU販売からの撤退を決断。VIA TechnologiesがCentaurの株とWinChip関連資産一式を1999年に買収して、以後はVIA Technologiesを親会社として引き続きx86互換CPUの開発を続けることになったという話は、連載9回で書いた通りだ。
さて、VIA Technologies傘下ではまずVIA C3、ついでVIA C7、VIA Nanoと引き続き新製品はリリースしていたものの、開発サイクルは明らかにインテル/AMDには遠くおよばず、市場のニーズに次第に応えられない状況になってきた。
途中からVIA Technologiesの仲介で、中国ZhaoxinにプロセッサーコアをIPの形で提供。ZhaoxinはこれをベースにZX-A、ZX-C、ZX-C+、KX-5000、KX-6000といった製品をリリースしているが、これはあくまでもZhaoxinの製品であって、流通も中国内のみといった感じだ。少なくともVIA Technologies自身はこれらを搭載した製品は販売していない。
そのVIA Technologies自身もここしばらくはx86ベースからArmベースに主軸を移し、それもArm SoCやSBC(Single Board Computer)の販売ではなくArm SoC/SBCを利用したソリューションの提供をメインにしている。
実はVIA Technologies傘下にWonderMediaというメーカーがあり(あったというべきか)、ここでARM9~Cortex-A9ベースのSoCの開発をしていたのだが、2016年あたりを最後に新製品の投入が絶え、すでに会社のページもなくなっている。
ではVIA Technologiesはどうしたか? というと、現在はQualcommのSnapdragon 800シリーズやNXPのi.MX6シリーズ、MediaTek i500などを利用したSBCと、これを組み込んだ形でのシステム投入に主軸を移している。
Centaur Technologyとしては起死回生を狙ったのが連載560回で説明したCHA+Ncoreであったが、残念ながらこれの製品化の前に力尽きた、というか見放されたという感じなのだろうか? 2021年11月4日、VIA TechnologiesはTWSE(台湾証券交易所)に公告を出し(*1)、インテルが1億2500万ドルでCentaur Technologyを事実上買収したことを発表した。
公告にもあるように、全社員を買収したわけではなく、一部社員となっているわけで、例えばHenry氏はすでに御年79歳ということを考えると、おそらくインテルには行かずにこのまま引退であろうか? ちなみに長らくテキサスに住んでいたHenry氏、どうも現在はカルフォルニア州モントレーのカーメル(Carmel-by-the-Sea)という街にお住まいらしい。
実は11月にCentaur Technologyのウェブサイトが突如“工事中”に変わっており、やや気になってはいたのだが。
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