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事業戦略説明会を開催、グローバルSIベンダーとしての実力と大幅な成長をアピール

DXCテクノロジー、「ガラパゴスIT環境からの脱却を支援」する方針を強調

2021年12月14日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 DXCテクノロジー・ジャパンは2021年12月13日、最新の事業概況に関する記者説明会を開催した。2020年10月に設置したDX支援組織「OneCloud」が四半期平均で前年比倍増となる36件の案件を獲得し、今後、One CloudにおけるITコンサルティングサービスを強化する考えを示した。また、新規顧客数がこの1年で倍増したことや、クラウドアプリケーションサービスが倍増していることも明らかにしている。

 DXCテクノロジー・ジャパン 代表取締役社長の西川望氏は、「日本法人の設立から5年を経過し、現在、第3の変革に取り組んでいる。アドバイザリによるプラクティス指向の普及促進を目指す」と述べ、今後の方向性を説明した。

設立から5年、DXCテクノロジー・ジャパンは「第3の変革」に取り組む

DXCテクノロジー・ジャパン 代表取締役社長の西川望氏、同社 OneCloudジャパンリードの山田竜太氏

日本の新規顧客数は倍増以上、既存顧客のビジネスも大幅拡大

 DXC Technologyは2017年4月に、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)のエンタープライズサービス部門と、CSC(コンピュータ・サイエンシズ・コーポレーション)が合併して設立されたSIベンダー。現在全世界70カ国以上にITサービスを提供している。2021年度の売上高は177億ドルで、従業員数は13万人以上。Fortune 500企業の240社以上が同社サービスを採用しており、毎年6万5000以上のワークロードのクラウド移行を支援しているという。

 同社は「保険業界向けBPaaS&BPO」「アナリティクス&エンジニアリング」「アプリケーション」「セキュリティ」「クラウド」「ITアウトソーシング」「モダンワークプレイス」という7つのスタックを展開し、それぞれに使用するテクノロジーやサービス提供体制、サービス内容、サービスレベルをあらかじめ規定した「プラクティス」を用意する。その一方で、テクノロジーパートナーとのエコシステムも構築し、「お客様のIT資産全体の運用を近代化し、イノベーションを推進するために必要なITサービスを提供する企業」と自社を位置づける。

DXCが提供する「プラクティス」の概要。あらかじめ「標準」を規定しつつ、顧客の状況やニーズに応じた調整を行う

 日本においては新規顧客数が前年比121%増と倍増以上になっており、ほかにも既存顧客における新規ビジネス案件が70%増、クラウドアプリケーションサービスが111%増、ワークプレイスサービスが70%増と伸長したという。

 「とくに運輸・旅客業界顧客では62%増のビジネスが生まれるなど、コロナ禍で逆境にある顧客に対して“攻めのIT”を提案している。また、国際的なブランド価値評価で国内トップ企業10社のうち6社との取引実績がある」(西川氏)

 さらに西川氏は、「People、Work、Environmentの3点から、日本法人のカルチャーを構築している」とも説明した。DXCテクノロジー・ジャパン設立以降に入社した社員の比率は47.8%と約半数になっており、来春には50%を大きく超える見通しだという。

 「日本の社員が会話をしあい、日本の顧客のためにミッションを達成するといったメンタリティを築いている。日本では40年以上のビジネスの実績があるが、DXCテクノロジーになってからは5年目。安定感を持ちながらベンチャー企業ならではのスピード感を持ち、グローバル企業でありながら日本企業のような雰囲気を持つのが特徴だ」(西川氏)

日本企業の「ガラパゴスIT環境からの脱却」を目指す

 冒頭で触れた西川氏のコメントどおり、DXCテクノロジーでは現在「第3の変革」に取り組んでいる。

 2017年からスタートした「第1の変革」では、業界別組織からテクノロジー別組織への転換を進めた。これまでにパートナーテクノロジー関連資格の取得者は44%に達し、30歳以下の若手エンジニアの構成比も5.6%から14.1%に上昇している。

 続く「第2の変革」ではOne Cloudを立ち上げ、テクノロジーを横断するプラクティス指向を強化。クラウドファーストの徹底的な推進と、クラウド関連スキルの集約および効率的な活用に取り組んだという。

 そして今年、2021年からは「第3の変革」として、アドバイザリコンサルタントチームを設置し、プラクティス指向をさらに促進する取り組みを行っている。その方向性について西川氏は、「課題を抽出するだけのコンサルティングでなく、プラクティスに導く提案を行っていく」と説明する。

DXCの「第1の変革」「第2の変革」概要

 DXCテクノロジー・ジャパン OneCloudジャパンリードの山田竜太氏は、「第2の変革のキードライバー」としてOne Cloudについて説明した。

 One Cloudは、DXに関する顧客との窓口を一本化し、DXCが持つテクノロジースタックを活用して顧客の目的に最適なストーリーを提案することで、「クラウドを起点としたビジネス成長のイネーブラー」になることを目指す組織と定義されている。

 「OneCloudは『クラウドへの扉はひとつでいい』というコンセプトを持つ。人材不足の企業に対してアウトソーシングを提案し、顧客企業には本業に集中してもらう。さらに日進月歩のクラウドテクノロジーに対応するための専門知識を提供したり、ビジネス目標に対して一心同体で変革に挑んだりすることができる体制を敷いている。グローバル拠点を一元管理したり、ベンダー中立の立場から全体最適で、ベンダーロックインから脱却した環境を実現。ハイブリッドIT環境を一体運用できる」(山田氏)

DXCが展開する「One Cloud」の特徴

 OneCloudの組織設置当初(2020年10月から3カ月間)の案件はサポート15件だったが、2021年度の四半期平均は36件と、140%増となっている。またOneCloudメンバー1人あたりのサポート合計契約金額は、20万ドルから140万ドルへと6倍以上に成長したという。またクラウド資格取得者の割合は、2019年の0.9%から2021年は31.4%に増加している。

 One Cloudの採用事例として、トヨタ系列のウーヴン・プラネット・ホールディングス傘下のウーヴン・コアが紹介された。DXCでは同社が推進する自動運転向け地図関連システム開発に対し、日本だけでなくウクライナからも人材を投入してプロジェクトをサポートしているという。「必要な知識や、新たなソリューションおよびテクノロジーを、リアルタイムに、グローバルのスケールで提供できる。地図開発の加速に貢献している」(山田氏)。

 またロッテに対しては、Windows 7のEOSにあわせてPC環境におけるセキュリティ強化や、スマート工場の実現に向けて、「VMware Cloud on AWS」上で稼働するVMware Horizon仮想デスクトップを提案。運用においても、DXCテクノロジーが提供するマネージドサービスを活用し、本業へのフォーカスを高めるとともに、これを今後のDX推進基盤に位置づけることができたという。

トヨタ系列のウーヴン・コア、ロッテにおけるOne Cloudの採用事例

 「グローバル体制を生かすことでコスト競争にも対応するほか、顧客視点での新たな価値を提供し、日本におけるOneCloudのビジネスを加速する。今後、ITコンサルティングサービスの組織を新設し、クラウドジャーニーに舵を切った顧客に対して、各種ポートフォリオを活用したコンサルティングを実施する。各プラクティスによって醸成された様々なソリューションを、イージーオーダーのような組み合わせによって提供し、企業に固有化されたガラパゴスIT環境からの脱却と、迅速なソリューション構築を目指す」(山田氏)

 西川氏も、日本のIT市場が抱える課題について、顧客企業とSIベンダーの両面から指摘した。

 「日本の企業はIT人材不足、外部依存による柔軟性と迅速性の欠如のほか、日本固有の課題として基幹システムの理解者不足とベンダー依存、それに伴いテクノロジーを活用しきれないという課題がある。一方で、日本のSIerも新たな技術に精通した人材の不足、特定テクノロジーへの依存、人月単価モデルや下請け構造などの課題もある。そして、企業とSIerは依存関係にあり、それぞれが持つ課題を解決しないままプロジェクトが長期化し、システムが大規模化することになる。企業は本当に必要なサービスレベルや機能を見失っており、必要以上に人とコストを使いすぎる特殊なITが固定化している。これは、日本の企業の成長の足かせになっている」(西川氏)

 DXCでは、海外でのさまざまな業界経験や13万人のスケール、日本の基幹システムと業界に対する深い理解、テクノロジーベンダーとの深いアライアンス、顧客志向の中立的な提案を武器として、「必要なサービスレベルと機能を、適切なリソースとコストで実現でき、特殊性も削ぎ落すことができる」としている。

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