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あえてオンプレミスで名刺管理システムを提供する理由とは?

名刺データをユーザーに取り戻す Skyの新サービス「SKYPCE」の挑戦

2021年12月15日 10時30分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

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 セキュリティ運用管理ソフトやシンクライアントなど業務を支えるミドルウェアの提供が多かったSkyが、次に手がける新製品は名刺管理システム。しかも、クラウド一辺倒の潮流に逆行するかのように、あえてオンプレミスで提供するという。同社の金井孝三氏に名刺管理システム「SKYPCE(スカイピース)」の製品化に至る経緯とコンセプトについて聞いた。

Sky ICTソリューション事業部 副本部長 金井孝三氏

今の名刺管理サービスはベンダーロックインがかかっている

 Skyと言えば、TVCMや交通広告を幅広く展開しているセキュリティ運用管理ソフト「SKYSEA Client View」がおなじみ。導入企業はもうすぐ1万8000社を超え、今年はいよいよクラウド版も投入した。その他、シンクライアントシステムの「SKYDIV Desktop Client」や医療機関向けの「SKYMEC IT Manager」、テスト自動化ツール「SKYATT」、教育機関向けの「SKYMENU」などを手がける国産ソフト開発会社だ。どちらかというと業務の基盤となるミドルウェアが多かったが、1月に発売される「SKYPCE」は名刺管理システムというビジネスアプリケーションにチャレンジする。

 なぜ名刺管理ソフトなのか? これについてSkyの金井氏は「これまでSkyグループの3300人でクラウド型の名刺管理サービスを使っていたのですが、自分が業務時間に集めてきた名刺のデータを自分たちで管理できない状況。これってベンダーロックインがかかっていておかしいよねという話に社内でなったんです」と説明する。

 とはいえ、名刺情報を自分たちで管理したいというだけであれば、わざわざ製品化までは行なわないはず。しかし、顧客とのヒアリングを重ねると、実は同じような悩みを抱えている企業が多いことに気がついたという。「プライバシーポリシーや情報セキュリティの規定で、名刺の管理にクラウドサービスを使えないという会社はけっこう多いのです」(金井氏)。

 ユーザー側からは、自ら利用しているサービスが、どのクラウドを使って、どのようなセキュリティ規格に対応しているのかわからず、顧客情報になり得る名刺のデータも自分たちで管理できないのはなぜか。SIerとして、ソフトウェア会社として、情報セキュリティや個人情報保護を重視し、自らISO/IEC 27001やプライバシーマークを取得しているSkyとしては当然、抱く疑問と言えるだろう。

 自社で使っている製品に疑問を感じ、顧客も困っている現状。最終的に名刺管理ソフトの製品化を強く後押ししたのが、Sky代表 大浦 淳司氏のこだわりだった。既存のSky製品と同じく、「自分たちが自社で活用してメリットのあるものをきちんと顧客に提案していこう」という想いがSKYPCEの製品開発には息づいているという。今後も多様な分野においてトータルで10商品を開発・展開していく方針だ。

ユーザーのデータはユーザーに だからオンプレミスでソフトウェアを提供

 こうした背景で生まれたこともあり、名刺管理システムの「SKYPCE」はオンプレミスで提供される。「今どきオンプレミスなんて珍しいですよね(笑)。でも、今までSaaSを使っていて、データを自らハンドリングできないという不満を持っていたり、自らのポリシーでデータを管理していきたいというお客さまに、選択肢を提供したいと思っているんです」と金井氏は語る。

 実はSkyが以前利用していた名刺管理サービスは、2年前の夏に起こったAWS東京リージョンの障害で一時的に利用できなくなった。しかし、これは一概にクラウド障害だけに起因する話ではない。「弊社のWebサイトもAWSなのですが、AWSの出しているガイドラインの通り、システムを冗長化していたので、ダウンすることはありませんでした」と金井氏は振り返る。

 こうした背景からすべてをクラウド化するのではなく、オンプレミスに戻したり、適材適所を目指す企業も多いという。「最近データセンターは、けっこう不足しています。クラウド事業者の利用も多いのですが、自らデータセンターを契約して、システムやデータを管理するユーザー企業も増えているのです」と金井氏は語る。実際、SKYSEA Client Viewにおいて監査やフォレンジックでログを長期保存する場合、どうしてもクラウドの方が割高になるため、オンプレミス版で運用している企業が大半だという。

 その点、SKYPCEではWindows版のサーバーソフトが提供されるので、デプロイはユーザーに完全に任されている。データセンターの物理サーバーに導入しようが、プライベートクラウドの仮想サーバー上で動作させようが、パブリッククラウドのインスタンスにデプロイしようが、それはユーザーの自由。もちろん冗長構成やバックアップの仕組みもユーザーが自らのポリシーに基づいて自ら設計すればよい。「お客さまのデータなので、取り込んだ名刺データはお客さまに返しますし、システムも自由に構成できます。これが他の製品との差別化になります」(金井氏)。

 名刺データのセキュリティに関しても、Sky製品との連携でより強固になるという。クラウド型の名刺管理サービスは、いったんユーザーがデータをダウンロードしたら、あとは野放しだ。また、名刺管理システムを事業部単位で導入してしまうと、IT部門から見えない典型的なシャドーITになる。情報漏えいしても、IT部門はフォローできない。「その点、SKYPCEはPC内に入っていますし、SKYSEA Client Viewのユーザーであれば、ダウンロードした名刺のデータを追跡できます」と金井氏はアピールする。クラウドへのアップロードやUSBメモリへの持ち出し等も制御でき、ユーザーにとってもメリットが大きい。ユーザーが操作するPCできちんと名刺データが保護されるという点では、今までになかったソリューションと言えるだろう。

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