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柳谷智宣のkintoneマスターへの道 第105回

「kintone AWARD 2021」レポート後編

グランプリは相互電業! 愛媛バス、サエラ、RGCのkintone AWARD 2021登壇

2021年12月24日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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巨大Excelをkintoneアプリ化! ポジティブな時間投資で大きな業務改善を実現したサエラ

 2番目のサエラは、なんと人事部の西川智美氏と総務部の田中良和氏の2人で登壇。「「ツールのために仕事をする」のは、もうやめました」というテーマで、一緒にプレゼンしてくれた(関連記事:ツールのために仕事をするのはもうやめた kintoneで抱いた野望)。

サエラ 人事部 西川智美氏と総務部 田中良和氏

 サエラは全国に74店舗を展開する調剤薬局グループで、毎年、春には30~50名の新入社員を迎えている。薬剤師を採用する際は毎年、1000人の学生と接点を持ち、その情報をExcelで管理していたそう。そのExcel画面が表示されたのだが、なんと250列×1000行という巨大なシートだった。このExcelファイルが複数年度分稼働していたそう。

 当然、セルの参照が正しく機能しなくなったり、表記揺れでフィルタリングしづらかったり、ローカルファイルのみ更新してしまう、といった様々な問題が発生した。

「破損したExcelファイルの修復に2日間かかるなど、本来の業務をする時間が奪われることも多かったのですが、我慢強く運用していました」(西川氏)

 役員からこの状況をなんとかするように言われた田中氏は、現状をヒアリング。数字ではない情報をExcelで管理しているのを見て「Excelって……ほんまは「表計算ソフト」やねんで?」と言ってしまったという。

毎年の新入社員の情報を巨大シートのExcelで管理していたせいで様々な弊害が生じた

 とは言え、西川氏もExcelにこだわっていたわけではなく、他の手段を知らなかっただけだった。田中氏がさらにヒアリングを重ね、自分たちに必要なシステムの要件を6つに絞った。

 ノーコードで構築でき、詳細なログが残り、外出先でも閲覧・入力が可能。設定が簡単に壊れず、Web検索でヒット数が多く、導入費・運用費が比較的安価なソリューションという要件で、これを満たすのが、kintoneだけだったという。

「kintoneがそのまま皆に受入れられるかというと、そこには不安を抱えていました。そのため、ユーザーに制限を設けず、アプリを作り放題にしました。「こういうことができる!」を高頻度で発信し続けました。とにかく触れて、知って慣れてもらうということを部内に向けてキャンペーンしました」(田中氏)

 西川氏は巨大なExcelをカテゴリごとに分割して、14個のアプリを作成したが、数が多すぎて運用するのは現実的ではなかった。そこで、2019年3月に開催されたkintoneのワークショップに参加することに。他社も同じような悩みをかかえていることを知り、本気になった西川氏は、まずフィールドすべての個性をつかむことにした。例えばラジオボタンとチェックボックスの違いはなんなのか、どのような使い方が適しているのか、などを確認したのだ。

 学生情報の管理に必要な情報やフローの見直しも平行して行い、14個だったアプリを7アプリに統合した。

「kintoneでアプリの作成や改善を行なうと、自然とPDCAサイクルが回ります。それを繰り返していくうちに、自分がもっとこうしたい、もっと便利にしていくんだ、という思いを次々に抱けるようになりました。kintoneのよさは自分たちでアプリを作ることによって、自分ごとになる点です」(西川氏)

 アプリの開発や改善には時間がかかるが、これはポジティブな時間消費で、以前のようにトラブル時に復旧対応するようなネガティブな時間消費ではない、と西川氏。アプリの改善を続けることで、2020年の夏には、学生のカルテアプリと内定者専用のアプリの2つにまとめることができた。

 Excelのデータ修復などのネガティブな時間は、月間40時間からゼロになった。会議資料などの作成時間は月間20時間から3時間、チーム内の連携ミスに対するリカバリー作業は、月間20件から1~2件に激減したそう。

kintoneへ移行させたことでネガティブな時間消費を大幅削減

 田中氏の伴走ポリシーは「知恵は貸しても、手は出さない」。使う人が作るものこそ欲しいものに一番近く、自らの気づきが最大の学習となる。そのためには、理解したつもりの人が出しゃばらないことが重要だという。

「私がkintoneと仲良くなれたのは、250列×1000行のお化けExcelをどうにかしたい、という明確な目的があったことと、田中のサポートがあったからです。kintoneに寄り掛かるのではなく、自分も一緒に成長して行くことが大事だと考えています」と西川氏は締めた。

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