このページの本文へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第643回

Zen 4採用のGenoaは2022年、Bergamoは2023年に投入 AMD CPUロードマップ

2021年11月29日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

Bergamoの構成を推定
1CCXあたり8コアでトータル128コアか?

 ところでプラットフォームの話だが、Genoaのパッケージ内部のCGを見る限り、12個のCCD+1個のIODという、Milan世代の基本構成は変わっていないように思える。

Genoaのパッケージ内部。中央にIODが配され、その左右上下に3個づつのダイが並ぶ形で、合計12個のCCDが配される

 まだこのMilan世代のパッケージサイズなどは明らかになっていないが、現行のEPYCと大きく変わらないと考えると、ダイ1つあたりの大きさはやや小さくなっているようだ。

 さて問題はBergamoの構成である。おそらくIODはGenoaと共通であろう。なので可能性としては以下の2つのパターンが考えられる。

  • 1個のダイに16コアのBergamoが搭載され、これが合計8ダイで128コア
  • 1個のダイに8コアのBergamoが搭載され、これが16ダイで128コア

 ちなみに1つ目の場合、CCXを16コアまで増やすのか、それともCCXは8コアのまま、2つのCCXを1つのCCDに搭載するのか、という2通りの可能性があるのだが、筆者としてはダイあたり2CCX、1CCXあたり8コアという案を推したいところだ。

 さすがに16ダイの搭載は実装コスト的にどうよ? という話ではあるし、そもそもTSMCのN7→N5でトランジスタ密度を倍増できるなら、高密度ライブラリーを使う前提なら、Zen 4cの16コアCCDはZen 3の8コアCCDと同程度のダイサイズに収まるだろう。

 ダイとパッケージをつなぐインターコネクトのball(ダイ底面に配される、配線接続用のBGA Ball)の数を確保するためには、あまりダイサイズが小さいのは不利になる。もちろんZen 4cを他の用途(例えばデスクトップ向け)に転用するつもりなら、CCDあたり8コアに留めておく方が有利だろうが、今のところそうした計画が一切聞こえてこないあたりは、CCDあたり16コアでもかまわないように思う。

 そしてCCXを1つにするか2つにするかだが、CCXあたり16コアまで拡張すると、おそらく論理設計側にも手を入れる必要があるだろう。もちろんZen 4cが「全く」論理設計に手を入れないか? というとそれはそれで難しいので若干は入るだろうが、CCXの構成そのものは少なくともZen 4/4c世代では手を入れないだろうと筆者は推定している。

 以上のことからBergamoは8CCD、1CCDあたり2CCX、1CCXあたり8コアでトータル128コア、という案を提示しておきたい。このBergamo、2023年前半に市場投入とされている。物理設計に1年くらいかかるという昨今のCPUデザインの事情を考えれば、Genoaから1年遅れというスケジュールは非常に納得できるものである。

 ちなみにエリアサイズがZen 4とZen 4cでは大きく変わらない(せいぜい4分の3程度)という予測が前提なので、デスクトップにZen 4cは来ないと筆者は予測している。big.LITTLEへの対応ができていないわけではない(*2)が、Armにしてもインテルにしても、bigコアとLITTLEコアの大きさが大きく異なっており、LITTLEコアはbigコアの数分の1(*3)まで縮めないとbig.LITTLEのメリットは生まれにくいように思う。

 その見方でいけば、現在のZen 4cは大きすぎるように思う。ちなみに次で触れるが、Zen 4とZen 4c(というよりGenoaとBergamo)ではややSIMD命令周りに差があるかもしれない。

(*2) 例えば2019年12月にAMDは“Method of Task Transition Between Heterogenous Processors”という特許を出願し、2021年に登録されている。

(*3) Alder Lakeで見る限り、E-CoreはP-Coreの4分の1くらいのエリアサイズに見える。

カテゴリートップへ

この連載の記事