このページの本文へ

山根博士の海外モバイル通信 第573回

Pixel 6だけにあらず! 翻訳機能特化スマホが米国にも警戒される中国メーカーから登場

2021年11月16日 10時00分更新

文● 山根康宏 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

謎のスマホが中国の翻訳機メーカーから発売されている

 グーグルの「Pixel 6」シリーズは独自開発したチップセット「Tensor」のAI機能を使った様々な新機能に注目が集まっています。その中でも翻訳機能は英語など外国語が苦手な日本人にはとても便利でしょう。しかし、海外を見ると中国の翻訳関連企業のAI技術もかなり進んでいます。その中でも「iFlytek」は米商務省による制裁企業リスト(Entity List)入りしたメーカー。つまり同社のAI技術の高さを米国政府は認知しているということです。実際に筆者は中国の展示会会場のiFlytekブースで、同社の翻訳機を使って中国人スタッフと10分くらい雑談をしたことがあります。翻訳精度とスピードは良好で筆者も同社の翻訳機を買おうかと思っていましたが、コロナの影響により海外出張もままならなくなり、まだ購入はしていません。

日本でも売っているiFlytekの翻訳機。価格は高めだが性能もいい

 そのiFlytekはスマートフォンも出しています。モデル名は「SR901」。とはいえ、普通のスマートフォンとして販売しているのではなく、あくまでも翻訳機として販売されています。そのため「iFlytek」「スマートフォン」で検索しても製品は出てきません。中国の検索サイトでようやく情報が出てくる、といった感じです。

あくまでも翻訳機として販売されているSR901

 SR901の基本スペックはすべてが公開されていません。これも翻訳機として売っているからなのでしょう。ディスプレーは6.01型(2160x1080ドット)、チップセットとメモリー容量は不明、ストレージは64GB。カメラは1300万画素+800万画素の超広角と800万画素の望遠、バッテリーは4000mAh。本体は金属製のユニボディーでサイズは約77.3×159.6×9mm、重さは229.6gです。Android OSのバージョンは不明、おそらくGMS(Google Mobile Service)は非搭載でしょう。

カメラスペックはエントリーモデルレベルだ

 チップセットは不明ですが、AIを使った翻訳機能を動かすということは、そこそこのスペックだと思われます。価格は5999元、約10万7000円と結構お高いのですが、このうち3万円くらいはAI/翻訳システム代と考えるのが妥当でしょうか。とはいえ、同社の翻訳機の2倍以上の価格です。ただしマイクを本体周囲に12個し10メートルまでの音声を認識、スピーカーを底部に2つ搭載するなど翻訳機としての使い勝手は高くなっています。

多数のマイクを搭載し周囲の音を漏れなくキャッチできる

 目玉となる翻訳機能は中国語、英語、日本語、韓国語、スペイン語、ベトナム語、ロシア語、フランス語に対応。ただし中国語以外の言語の相互翻訳は不明。なお中国語と英語の混在した音声の翻訳にも対応します。また中国語は河南語、河北語、四川語、雲南語、貴州語、重慶語、天津語、東北語、甘粛語、山東語、太原語、広東語の12の方言に対応。中国語学習にも向いています。SR901はスマートフォンとして4G通信とWi-Fiを搭載しますが、オフラインでも翻訳はできるとのこと。

9ヵ国語+12の中国方言に対応

 普段はスマートフォンとして使い、いざというときは高度な翻訳機として使えるSR901ですが、価格が高いこともあり中国でも購入者の数はあまり多くないようです。実際の使い勝手がどれほどのものなのかを検索してみたのですが、中国人による動画レビューは見当たりません。これは自分で買って試したいところですが、海外からの購入のハードルは高く難しそうです。

 なお、iFlytekからは同様にAndroidベースの翻訳機が今年に入ってから登場しました。こちらは価格が4999元、約8万3000円とSR901より安くはなっています。しかし、SR901はAndroidスマートフォンなのでアプリを入れたりできますが、こちらの製品はそのあたりも不明。価格が高いということはそれだけ翻訳性能も高いと思われるのですが、中国に行かないと実機に触れてその実力を試せないのが残念なところです。中国翻訳機でNo.1メーカーでもあるiFlytekの製品と、Pixel 6の翻訳性能をぜひ使い比べてみたいものです。

iFlytekが今年出したAndroidベースの最新翻訳機

山根博士のオフィシャルサイト

「スマホ好き」を名乗るなら絶対に読むべき
山根博士の新連載がASCII倶楽部で好評連載中!

 長年、自らの足で携帯業界を取材しつづけている山根博士が、栄枯盛衰を解説。アスキーの連載「山根博士の海外モバイル通信」が世界のモバイルの「いま」と「未来」に関するものならば、ASCII倶楽部の「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」は、モバイルの「過去」を知るための新連載!

 「アップルも最初は試行錯誤していた」「ノキアはなぜ、モバイルの王者の座を降りたのか」──熟練のガジェットマニアならなつかしく、若いモバイラーなら逆に新鮮。「スマホ」を語る上で絶対に必要な業界の歴史を山根博士と振り返りましょう!

→ASCII倶楽部「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」を読む

ASCII倶楽部は、ASCIIが提供する会員サービスです。有料会員に登録すると、 会員限定の連載記事、特集企画が読めるようになるほか、過去の映像企画のアーカイブ閲覧、編集部員の生の声を掲載する会員限定メルマガの受信もできるようになります。さらに、電子雑誌「週刊アスキー」がバックナンバーを含めてブラウザー上で読み放題になるサービスも展開中です。

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン