グーグルの「Pixel 6」シリーズは独自開発したチップセット「Tensor」のAI機能を使った様々な新機能に注目が集まっています。その中でも翻訳機能は英語など外国語が苦手な日本人にはとても便利でしょう。しかし、海外を見ると中国の翻訳関連企業のAI技術もかなり進んでいます。その中でも「iFlytek」は米商務省による制裁企業リスト(Entity List)入りしたメーカー。つまり同社のAI技術の高さを米国政府は認知しているということです。実際に筆者は中国の展示会会場のiFlytekブースで、同社の翻訳機を使って中国人スタッフと10分くらい雑談をしたことがあります。翻訳精度とスピードは良好で筆者も同社の翻訳機を買おうかと思っていましたが、コロナの影響により海外出張もままならなくなり、まだ購入はしていません。
そのiFlytekはスマートフォンも出しています。モデル名は「SR901」。とはいえ、普通のスマートフォンとして販売しているのではなく、あくまでも翻訳機として販売されています。そのため「iFlytek」「スマートフォン」で検索しても製品は出てきません。中国の検索サイトでようやく情報が出てくる、といった感じです。
SR901の基本スペックはすべてが公開されていません。これも翻訳機として売っているからなのでしょう。ディスプレーは6.01型(2160x1080ドット)、チップセットとメモリー容量は不明、ストレージは64GB。カメラは1300万画素+800万画素の超広角と800万画素の望遠、バッテリーは4000mAh。本体は金属製のユニボディーでサイズは約77.3×159.6×9mm、重さは229.6gです。Android OSのバージョンは不明、おそらくGMS(Google Mobile Service)は非搭載でしょう。
チップセットは不明ですが、AIを使った翻訳機能を動かすということは、そこそこのスペックだと思われます。価格は5999元、約10万7000円と結構お高いのですが、このうち3万円くらいはAI/翻訳システム代と考えるのが妥当でしょうか。とはいえ、同社の翻訳機の2倍以上の価格です。ただしマイクを本体周囲に12個し10メートルまでの音声を認識、スピーカーを底部に2つ搭載するなど翻訳機としての使い勝手は高くなっています。
目玉となる翻訳機能は中国語、英語、日本語、韓国語、スペイン語、ベトナム語、ロシア語、フランス語に対応。ただし中国語以外の言語の相互翻訳は不明。なお中国語と英語の混在した音声の翻訳にも対応します。また中国語は河南語、河北語、四川語、雲南語、貴州語、重慶語、天津語、東北語、甘粛語、山東語、太原語、広東語の12の方言に対応。中国語学習にも向いています。SR901はスマートフォンとして4G通信とWi-Fiを搭載しますが、オフラインでも翻訳はできるとのこと。
普段はスマートフォンとして使い、いざというときは高度な翻訳機として使えるSR901ですが、価格が高いこともあり中国でも購入者の数はあまり多くないようです。実際の使い勝手がどれほどのものなのかを検索してみたのですが、中国人による動画レビューは見当たりません。これは自分で買って試したいところですが、海外からの購入のハードルは高く難しそうです。
なお、iFlytekからは同様にAndroidベースの翻訳機が今年に入ってから登場しました。こちらは価格が4999元、約8万3000円とSR901より安くはなっています。しかし、SR901はAndroidスマートフォンなのでアプリを入れたりできますが、こちらの製品はそのあたりも不明。価格が高いということはそれだけ翻訳性能も高いと思われるのですが、中国に行かないと実機に触れてその実力を試せないのが残念なところです。中国翻訳機でNo.1メーカーでもあるiFlytekの製品と、Pixel 6の翻訳性能をぜひ使い比べてみたいものです。
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