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編集部員の「これ、買いました」 第3回

イギリス製のちょっと地味なやつ、だけど好き:

ジョブズも履いた3万円のニューバランス「991」は愛すべき一足

2021年12月09日 16時00分更新

文● モーダル小嶋 編集●ASCII

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ニューバランスの銘品「900番台」

 今回は、スティーブ・ジョブズも履いていたニューバランスのスニーカーを買いました、という話です。

 筆者は坊主頭で眼鏡、さらにヒゲを短めに整えているので、黒のハイネックやタートルネックにジーンズを合わせると「スティーブ・ジョブズみたい」とツッコまれることがあります。

 ジョブズのパブリックイメージとして、基調講演などで見せたあの服装、イッセイミヤケの黒のハイネック、リーバイスの501、そしてニューバランスのスニーカーはあまりにも有名ですね(参考記事:写真で振り返る、スティーブ・ジョブズ氏の足跡)。

ASCII.jpの過去記事から、2007年のiPhoneの発表会より

 では、ジョブズが履いているニューバランスはなんでしょうか。これは、「992」だと紹介されることが多いのです。このスニーカーは、どういうものなのか。まずは「900番台」の説明からスタートしましょう。

992。入手困難だったが2020年に復刻(あっという間に完売)

 数あるニューバランスのスニーカーの中でも、900番台(「990番台」とも)と呼ばれる名シリーズがあります。元祖は1982年に登場し、1ドル280円の時代に100ドルという強気な価格で登場した「990」。「1000点満点で990点」を売り文句に、オンロードのランニング用に開発され、靴に妥協を許さないランナーから高い評価を得ました。

初代990。こちらは2021年に発売された「990バージョンシリーズ」

 以来、900番台は、ニューバランスの最先端の技術をつぎ込み、デザインもアップデートしながら発売され続けています。しかし、ナンバリングがややこしく、まとめると以下のようになります。西暦はモデルの発売年です。

990(1982年)

995(1986年)

996(1988年)

997(1990年)

998(1993年)

999(1996年)

990v2(1998年)

991(2001年)

992(2006年)

993(2008年)

990v3(2012年)

990v4(2016年)

990v5(2019年)

 990からいきなり「99“5”」になるのもややこしいのですが、「999」から2代目990である「990v2」が登場、そして991→992→993ときて、「990v3」につながるのもなんだか覚えにくい。

 2022年にシリーズが40周年を迎えることもあってか、歴代の900番台の銘品が2020年あたりから続々と復刻され、発売されるとあっという間に完売……という流れが続いています。なお、記念すべき2022年には「990v6」が出るという噂です。

 ちなみに「M992」といった具合に、数字の前に「M」が付いている表記もよく見かけます。この「M」は「メンズ」という意味で、レディースの「W」やユニセックスの「U」、Mの廉価版である「CM」など、商品の種類を示すアルファベットです。

 本記事内では便宜上、モデルの数字だけ表記することにします。

ジョブズが履いていたニューバランスは何か

 スティーブ・ジョブズの話に戻します。確かに、iPhoneやiPadの発表会においては、彼は992を履いているのです。ASCII.jpの過去記事でも、2011年に992を履いている写真が確認できます(参考記事:写真で振り返る、スティーブ・ジョブズ氏の足跡)。

ASCII.jpの過去記事から、2011年のプレゼン。わかりづらいが、当時最新モデルの993ではなく、992を履いている

 しかしながら、992が発売されたのは2006年。それ以前は、別のスニーカーを履いていたはず。たとえばアメリカのTime誌が追悼本として発売した「Time Steve Jobs: The Genius Who Changed Our World」では、1998年に発売された990v2を履いている写真がカバーに使われています。

Image from Amazon.co.jp
Time Steve Jobs

 また1980年代には、900番台シリーズではないものの、同じくニューバランスの名作として知られる「1300」(ラルフ・ローレンが「まるで雲の上を歩いているようだ」と絶賛したのは有名)を履いているジョブズの写真もあるそうで、彼はなかなかのニューバランス愛好家だったのでしょう。

 今回のテーマである「991」はどうかというと、2001年に発売されたモデルなのですが、どうもジョブズは2007年頃まで991を履いていたようなのです(参考記事:あのジョブズが「シェー」!? 謎のポーズの秘密を明かす)。

ASCII.jpの過去記事から、2007年のMacworld Expoの基調講演より。ここで履いているのは991

 992が発売されたのは2006年。なので、ジョブズは992を発売されてからすぐに購入したのではなく、991をある程度履きつぶしてから買い替えたのではないかと。その991も、990v2を履いた写真があるということは、990v2がそろそろくたびれてきたから新しいニューバランスを……みたいなノリで購入したのでは。

本記事の主役である991(イギリス製)。ジョブズが履いていたものは(おそらく)アメリカ製で、紐も白いため、ちょっと印象が異なるかも

 なお、992の後継でもある「993」も2008年に発売されていますが、ASCII.jpの過去記事やアップル公式の画像などをチェックしたものの、自分が調べた範囲ではジョブズが993を履いている映像や写真は見つけられませんでした(992と993はよく似ているが、アッパー前部のデザインやソールに微妙に違いがある)。

筆者私物の993。992の改良系なのでよく似ている。ここ数年で日本で人気が急上昇した印象

 彼が992をとりわけ気に入っていた可能性もありますが、存命であれば、992を履きつぶしたあとに、あっさりと最新のモデルに買い替えていたかもしれません。

 いずれにしても、iPhoneやiPadの世界的なヒットにより、「スティーブ・ジョブズ」という人物(および、彼のプレゼン)のイメージが固まった頃に履いていた992が、「ジョブズが履いていたニューバランス」として認知されるようになったのではないでしょうか。

 しかし、繰り返しになりますが、それ以前は前のモデルを履いていたわけで、991も「ジョブズが履いていたニューバランス」として間違いではないはずです。

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