「Google Cloud Next '21」で発表されたオープンクラウド領域の新発表について説明
「Google Distributed Cloud」「Anthos for VMs」など発表
グーグル・クラウド・ジャパン(Google Cloud)は2021年10月13日、年次イベント「Google Cloud NEXT '21」で発表された、データクラウドおよびオープンクラウド領域の新サービスや新機能についての記者説明会を開催した。
「BigQuery Omni」一般提供開始など、データクラウド領域における新発表はすでにお伝えしたとおりだ。本稿ではこれに続いて、オープンクラウド領域における新発表群についてまとめる。
エッジ環境や顧客DCにも展開「Google Distributed Cloud」
Google Cloudが掲げる“トランスフォーメーションクラウド”ビジョンを構成する4つのクラウド領域のうち、市場の変化に素早く対応するクラウドインフラを提供するサービス領域が「オープンクラウド」である。
同社でインフラ/アプリモダナイズ分野を担当する安原稔貴氏は、Google Cloudの活用が進む中で、顧客企業から「既存のクラウドサービスではまかないきれない部分」について相談されることが増えたと語る。
「具体的には、低遅延が必要なワークロードをどうすればよいか、ローカルでレスポンス早くデータ分析処理をするにはどうすればよいか、データのセキュリティやプライバシー、データレジデンシー、データ主権を実現するにはどうすればよいか、といった要件が多いと感じる」(安原氏)
そうした要望を満たすための新しいポートフォリオとして、今回は「Google Distributed Cloud」が発表された。これはGoogle Cloudが保有するデータセンター以外の場所、具体的には顧客のオンプレミスデータセンターや各種エッジロケーションでGoogle Cloudのインフラやサービスを利用できるようにするサービスとなる。
Google Distributed Cloudは、「Google Distributed Cloud Edge」(プレビュー)と「Google Distributed Cloud Hosted」(近日公開予定)という2種類のサービスを内包する。
Google Distributed Cloud Edgeのほうは、顧客企業のエッジ環境(小売店舗、工場、支店など)だけでなく、Googleが世界140カ所以上に持つネットワークエッジ、パートナー通信事業者(日本国内の事業者は未発表)の5G/LTEエッジなどに展開される。またHostedのほうは顧客データセンターに展開し、法的なデータセキュリティやプライバシーの要件を満たしながらGoogle Cloudのサービスを利用できるという。
安原氏は、両サービスともフルマネージド型のサービスとして提供されるのが特徴だと説明する。ハードウェア面ではGoogle Cloud側が認証した構成に基づき、シスコ、デル・テクノロジーズ、HPE、ネットアップなどのパートナーから製品および保守運用サポートの提供が受けられる。各環境はKubernetes/コンテナプラットフォームの「Anthos」をベースに構成されるため、一貫性のあるコントロールプレーンやワークロードの可搬性が実現する。
なおGoogle Distributed Cloud Hostedでは、ローカル環境の側に独立したコントロールプレーンを持っており、自律的に動作するため、Google Cloudとの接続環境は必要ないという。「従来の『GKE(Google Kubernetes Engine) on-prem』はクラウド側にコントロールプレーンを持っていたが、Hostedでは管理コンポーネントを含む環境が顧客データセンターにデプロイされ、その中で管理が完結する」(安原氏)。
また現時点で利用できるGoogle Cloudのサービスは、AI OCRやSpeech-to-Text(自動音声認識)などの一部機能だと説明した。
安原氏はGoogle Distributed Cloudのもたらすメリットについて、「GoogleのAIとアナリティクスソリューションによるリアルタイムでのデータ活用」「Anthosによる一貫した運用」「パフォーマンスや可用性に優れたインフラストラクチャの活用」という3つを挙げた。
「ユースケースとしては、たとえば複雑で大規模な環境における一貫したアプリケーション開発に使っていただけると考えている。Google Cloud上ではGKEで、またAWSやAzureではAnthos上で開発したものを、オンプレミスのGoogle Distributed Cloud上で使うなど、同じAnthosベースというメリットを生かして全体をシンプルに開発できる」(安原氏)
そのほかにも、データが生成されるエッジ環境でリアルタイムにデータ分析や活用を行う、パブリッククラウドにデータを転送することなくセキュリティ要件を満たす、といったユースケースが考えられると紹介した。
仮想マシンもAnthosの管理下に組み込む「Anthos for VMs」
同説明会のタイミングでは発表されていなかったものの、今回のGoogle Cloud Nextでは「Anthos for VMs」(プレビュー)も新たに発表されたので、ここで紹介しておきたい。
Anthos for VMsは、Anthosのコントロールプレーンを通じて、従来のコンテナに加えて仮想マシン(VM)も一元的に管理できるようにするというものだ。Google Cloudでは、既存アプリケーションのコンテナ化によるモダナイズを支援しているが、コンテナ化が困難なものについてもAnthosでの運用に取り込むことができる。
公式ブログの説明によると、Anthos for VMsの活用方法には「vSphere VMをアタッチする」「VMをそのままKubernetes環境へ移行する」という2パターンがあるという。前者はAnthosのコントロールプレーンを既存のvSphere環境に接続することでAnthosのコントロール下に置き、一元監視や一貫したポリシーの適用、トラフィック管理などを実現するもの。また後者は仮想マシンをコンテナ化する「KubeVirt」を用いて、VMをAnthosのコンテナ環境に取り込んでしまうという手法だという。
顧客の気候変動対策をサポートする「Google Cloud Carbon Footprint」
もうひとつ安原氏は、オープンクラウド領域における新発表として「Google Cloud Carbon Footprint」(プレビュー)、「Google Earth Engine for Google Cloud customers」(プレビュー)を取り上げた。いずれも気候変動対策に取り組む顧客を支援するものだと説明する。
Google Cloud Carbon Footprintは、Google Cloudの管理コンソールに「カーボンフットプリント」のメニューが追加され、ここをクリックするとGoogle Cloudのサービス利用を通じて排出されたカーボンフットプリントがダッシュボードで可視化される。すべてのユーザーが無料で利用できる。
「このダッシュボードでは、このプロジェクトで使っているリソースの炭素排出量はこれだけだ、ということを確認できる。また使用リソースを減らせば炭素排出量も減らせるという発想から、使用頻度の低いプロジェクトの削除を提案したり、削除した結果どのくらい排出量を減らせるかという予測を提供したりすることもできる」(安原氏)
さらに公式ブログでの説明によると、ユーザーのカーボンフットプリントデータは「BigQuery」に取り込んでデータ分析に活用することも可能。また、Google Cloudサービスのリージョン選択時には「カーボンインパクトの最も低いリージョン」が表示され、ユーザーの選択をサポートするという。
Google Earth Engine for Google Cloud customersでは、Google Earth Engineのデータカタログを通じて気候変動に関する各種データセットを提供し、BigQueryを使ったデータ分析や「Vertex AI」を通じた機械学習などに役立てられるようにしている。