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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第636回

イロモノだと思っていたSamsungのプロセッサー内蔵メモリーがわりと本気だった AIプロセッサーの昨今

2021年10月11日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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ではLPDDR5にPIMを載せるとどうなるか?
用途によっては性能向上と省電力化が期待できそう

 ここまでの話は実際のHBM-PIMを利用した結果だが、次のLPDDR5-PIMはシミュレーションである。要するにLPDDR5にPIMを内蔵させるとどうなるか? をシミュレーションで実施した結果が下の画像、もう少し詳細な結果がさらにその下の画像である。

8.2TFlopsの処理性能を持つLPDDR5というのも、ものすごい話ではある

あくまでもAI処理向けではあるのだが、さまざまなケースで性能向上と省電力化が期待できるとする

 この性能向上率は、コンピュータービジョン、つまり画像認識技術の分野で言えば性能向上率が10~30%、消費電力も10%内外の節約でしかないので、わざわざこんな特殊なメモリーを使うには動機として薄い感はあるが、自然言語処理の分野ではけっこう性能改善率も高く、省電力化の効果も大きいあたりは、分野さえ選べばかなり有望という見方ができる。

LPDDR5にPIMを実装可能なら
DIMMにも載せられるハズ

 これに気を良くした(?)のかどうかわからないが、もっと汎用的に利用できるアイディアとしてSamsungが提唱したのがAXDIMMである。

AXDIMMは、ランクを利用してバンク分けをするというアイディアである。DDR5ならこんなことをしなくても、バンクをそのまま利用できそうな気もするのだが、あくまで現在普及しているDDR4プラットフォーム向けというつもりなのだろう

 もう見てわかるように、レジスタードDIMMをベースにして、そこにPIMを突っ込むことで、DIMMレベルでPIMを利用できるようにするアイディアである。実際にこのDIMMを試作して、Broadwellサーバに突っ込んだところ、性能向上と消費電力改善が確認できたとしている。

まだプロトタイプだからということもあるにしても、PIMにはアクティブファンが付いており、DIMMというよりは拡張カード並みの高さになっている

 さて、ここで記事のタイトルに戻る。このAXDIMM、あくまでもコンセプトというか研究レベルの話で終わるのかと思ったのだが、9月30日にSamsungは“The Open Innovation Contest for AXDIMM Technology”なるプレスリリースを出し、同日から11月15日の間の期間に、このAXDIMMを利用した斬新なアプリケーションの提案を受け付けるコンテストを実施すると発表した。

 具体的にはAIあるいはデータベースの分野で、このAXDIMMを利用するような提案を広く公募し、12月15日には公募から5チームを選びだしてそこにおそらくこのAXDIMMの評価キットを提供。チームは2022年の7月15日にその結果を発表、8月15日に上位3チームが発表されるというタイムラインになっている。その先は、可能ならSamsungと共同でその結果を基にさらに研究を進めていくことも視野に入れているようだ。

 こう言っては失礼かもしれないがイロモノ扱いしていたAXDIMM、Samsungはわりと本気でこれに取り組んでいることが確認できた結果となった。

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