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ブライトで聴きやすい音、ANC対応の「AH-C830NCW」とシンプルな「AH-C630W」

デノン初の完全ワイヤレス、高級機のサウンドを9000円台からのお手ごろ価格で

2021年09月17日 11時00分更新

文● ASCII

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ブライトで見通し良い音、歌詞がよく頭に入る

 実機を少しだけ試すことができた。最大の売りである音質は、確かに印象的だ。頭一つ抜け、競合とは一味違ったこの製品らしい音調持つ魅力的な仕上がりになっている。

 完全ワイヤレス機では、低域に寄ったバランスの機種が多い。特に低価格帯の製品では迫力やビート感を分かりやすく出すために低域を盛ったチューニングになっていることが多い。そんな中、デノンの2製品は中高域の再現が美しく、Hi-Fi的だがいたずらに情報量を求めず、中庸で落ち着いたトーンになっている。一聴して感じるのが、ボーカルの抜け感の良さ。質感の良さに加え、歌詞の伝わりがよく、曲がよく頭に入ってくる。

ブラックがC630、ホワイトがC830

 基本はブライトでハッキリとした傾向だが、高解像度系のイヤホンにありがちな分析的でギスギスした雰囲気はない。また子音やハイハットなど高域に伸びた音でもざわつきがなく整った印象がある。さらにいいのは、ボーカルが伴奏から浮き立って聞こえる点。イヤホンなので前方に音場が再現されるようなタイプではないが、ボーカル、リズム帯、ギターやシンセなど重層的な楽器がそれぞれの距離感・高さ感で立体的に配置され、全体が見通しよく整理されて聞こえる。音楽として調和して聞こえる点もこの製品の良さだろう。

 子音や背後で微かに鳴るハイハットなど細かな音の再現性もいいが、爽やかで心地よい質感を持っているので、長時間のリスニングでも聴き疲れしにくい印象を持った。

ケースも割合コンパクトな仕上がり。触るとふたが少し浮いていて合わせがあってないように感じるがこれは指がかりを重視しためだそうだ

開いた状態にすると取り出しやすい角度が付く

 2機種の方向感は近く、1万円を切るC630でもこれだけの表現ができる点には感心させられる。C830はより面積の広いドライバーを使用するため、低域の量感が増し、C630よりも腰が据わった鳴りとなる。結果、力強さや実体感が出てくる。

 C630は重低音の領域を敢えて削っているためか、やや軽さがあるが、それによって中音域への音かぶりが減って、明瞭な声の聞こえが得られるメリットがあると思う。低域の量感こそ譲るが、情報自体はしっかり拾っているため、音楽の表現という意味での心配はない。EDMやロックなど低域をブイブイ言わせるような楽曲ではなく、アコースティック系の楽曲やシンプルなボーカル曲を中心に聴くなら不満はないだろう。

 C830は低域がより深く、ズンと広がっていくが、こちらも華美な印象はない。バランス感に優れたニュートラルな再現を基本としている。音離れの良さが印象的で、連打されたパーカッションの反応なども速く細かく正確なリズムを刻んでくれる。低域がボワっと不明瞭になったり、高域が伸びず不明瞭になることはない。また、引き締まりつつも適度な余裕がある。この点からも高品質でありながら、中庸さや自然さを重視したチューニングであることが分かる。

フィルターは金属製、ここもスッキリとした音に関係があるかもしれない

 最近のイヤホンでは空間表現が話題になることが多い。デノンの2機種は耳や頭の中で音が鳴るというより、少し離れた距離から届いてくるような感覚がある。ボーカルは耳より少し外側で鳴っている感覚があるが、音が遠いというわけではなく、演奏者とリスナーの間に適度な距離感と広がり感を感じた。この距離感が、多層的に鳴っている音が整理され、全体の曲想がつかみやすい理由になっているのだろう。

 音楽再生以外の面ではヒアスルーの自然さに言及しておきたい。市場では高性能マイクの搭載をうたっているが、聞くといかにもマイクを通した音になっている機種も多い。しかしC630/C830は周囲の空間の雰囲気を残しつつ、聞きたい音だけが耳に入ってくる自然な感覚で聴ける。この違和感のなさも、イヤホンを着けたまま1日過ごす人にとって大きなメリットになるのではないか。

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