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国内初、ウェザーニューズが「Snowflakeデータマーケットプレイス」のデータ提供企業に

Snowflakeがプラットフォームとマーケットプレイスの新機能を発表

2021年06月09日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 データウェアハウス(DWH)/データ分析基盤とデータマーケットプレイスを統合した“データクラウド”を提供する米Snowflake(スノーフレイク)は2021年6月8日、同社サービスプラットフォームの機能拡充など複数の発表を行った。同日は日本法人による記者説明会が開催され、同社のビジョンや日本市場におけるビジネスの現況、今回発表した新機能の概要などが紹介された。

 また同説明会には、Snowflakeデータマーケットプレイスで自社データを販売する「データプロバイダー契約」を国内で初めて締結したウェザーニューズもゲスト出席、Snowflakeプラットフォームでデータ販売を行う目的や、気象データのユースケースなどを説明した。

米Snowflake アジア太平洋・日本地域プレジデントのジョン・ロバートソン(Jon Robertson)氏、Snowflake日本法人 カントリーマネージャーの東條英俊氏

Snowflake日本法人 プロダクトマーケティングマネージャーのKT氏、ゲスト出席したウェザーニューズ 常務取締役の石橋知博氏

Snowflakeの「データクラウド」ビジョンとはどんなものか

 プロダクトマーケティングマネージャーのKT氏は、同社の掲げる“データクラウド”ビジョンが何を目指すものなのかを説明したうえで、今回発表した新機能や機能強化点を紹介した。

 「SnowflakeといえばDWH、データベースのようなイメージを持たれている方が多いかもしれないが、われわれはそれを超えた新たな世界を提唱したいと考えている。その重要なコンセプトがデータクラウドだ」(KT氏)

 さらにKT氏は、データクラウドを端的に言うと「『人』と『データ』が所属するグローバルネットワークのこと」だと続ける。「データと、それを使う人が簡単につながるネットワークのことをデータクラウドと呼んでおり、Snowflakeはそれを実現するためのさまざまな(技術的)革新を起こしている」。

 より具体的には、「データの共有」をめぐるさまざまな課題を解決するものだと述べた。現在求められているデータ主導型のビジネス意思決定においては、社内だけでなく社外からも有用なデータを取り込み、大量のデータ群を組み合わせて分析を行う必要がある。しかし、データの収集(転送による「移動」)や分析前処理、統合などには多くの手間と時間、コストがかかる。またデータを提供する側にとっても、供与した後は“管轄外”となり、データセキュリティが担保できない、最新データに更新できないといった問題が生じる。

 これを解決するために、Snowflakeではシンプルかつ新しいアプローチのアーキテクチャを考えた。まず、アーキテクチャの中心にデータストレージ(オブジェクトストレージ)を配置し、ここにあらゆるデータを集約する。データを利用したいユーザーは、ストレージとは独立してスケールするコンピュートクラスタを使ってクエリや分析の処理を実行する。もちろん個々のデータに対するアクセス権限はユーザーごとに管理されている。

 つまり「データを移動させない」「相手側のリソースでアクセスしてもらう」アプローチによって、これまでの課題を解消するという考え方だ。

 「たとえば、皆さんが持っているデータを誰かに見せたい(提供したい)場合に、これまでは転送(コピー)する方法を取っていた。しかしSnowflakeは、皆さんが持っているデータはそのままで、相手にアクセス権限を与えて、相手が持っているコンピュートリソースを使ってアクセスしてもらうことができるデータシェアリング(データ共有)の機能を提供した」(KT氏)

Snowflakeのアーキテクチャ。ストレージ(=データ)とコンピュートのレイヤーが独立しており、それぞれのリソースが柔軟にスケールできる点もポイントだ

このアーキテクチャによって、従来の「データ移動(コピー)」により生じていた課題を解消できるとする

 これにより、単一のSnowflakeプラットフォーム上で自社のデータと他社/外部データを組み合わせて処理することが容易になる。また、自社独自のデータは安全なかたちで他社に販売することも可能だ。KT氏は、SnowflakeはクラウドDWHとして利用できるのと同時に「データを載せた瞬間から、そのデータを誰かに使ってもらうことができる」ことを強調する。

 そうした活用法を促すのが、Snowflakeのもう1つの特徴と言えるデータマーケットプレイスだ。販売データの例として、KT氏は小売業におけるデータ分析と意思決定に活用できるデータ群を紹介した。

 「小売業ではなるべく在庫を持たないようにしたいと考えているが、その意思決定を下すためには自社の在庫データだけがあっても意味がない。たとえば顧客の好み、購買意欲や購買頻度、気象、さらにコロナ禍の現在ならば人の移動といった、さまざまな外的な環境要因のデータもかけあわせたうえで意思決定を下す企業が増えている」(KT氏)

 ユーザー企業はこうしたデータをマーケットプレイスで購入し、Snowflakeプラットフォーム上で即座に利用できるわけだ。なお、Snowflakeデータマーケットプレイスで販売されているデータの種類は過去6カ月間で76%増加し、現在は160社以上のデータプロバイダーが500種類以上のデータを提供しているという。

Snowflakeデータマーケットプレイスの概要と、小売業で活用できるデータの例

Snowflakeプラットフォームとデータマーケットプレイスの新機能

 今回、Snowflakeデータマーケットプレイスの活用を促す新機能が発表されている(いずれも将来提供予定)。

 1つは「データの試用オプション」で、ユーザーが購入するかどうかを評価するためのサンプルデータを入手できるもの。もう1つは「Webサイトでの決済機能」で、現在のようにユーザーがデータプロバイダーに問い合わせて個別に契約を結ぶのではなく、Snowflake上でデータ購入が完結するかたちになる。さらにデータの使用量ベースでの購入オプションも追加予定だという。

 また、Snowflakeプラットフォームそのものの新機能(将来提供予定)も発表されている。

 「データプログラマビリティ」の分野では、データエンジニアや開発者が好みのプログラミング言語(当初はJava、Scala)でワークロードを構築し、Snowflake上で直接実行できる「Snowpark」をはじめ、Java UDF(ユーザー定義関数)で作成したカスタムコードやビジネスロジックをSnowflakeに取り込む機能、テキストや画像/動画といった非構造化データのサポート、SQL APIの提供といった新機能を開発中だ。そのほか、個人を特定できる情報(PII)を含むデータを自動検出してタグ付け、匿名化する機能などの「グローバルガバナンス」、より高速な処理を実現する「プラットフォームの最適化」といった分野での機能強化も行われる。

 「さまざまなデータが行き交うようになっても、それをかけあわせるパワー(スキル)を持っている人はそんなに多くない。そこでは間違いなくデータエンジニアやデータサイエンティストの力が必要となる。『SQLは書けないがJavaやScalaなら書ける』という人がSnowflakeのネットワークに加わることで、このプラットフォームはさらに発展していく。活躍できる人を増やすために、さまざまな言語に対応するSnowparkを用意した」(KT氏)

Snowflakeプラットフォームの新機能(将来提供予定を含む)

ウェザーニューズが気象データプロバイダーとして参画

 同日には、ウェザーニューズがSnowflakeデータマーケットプレイスのデータプロバイダー契約を締結したことも発表された。日本の法人としては初めての契約締結となる。

 ゲスト出席したウェザーニューズ 常務取締役の石橋知博氏はまず、同社が提唱する「WxTech(ウェザーテック)」を紹介した。これは、同社が持つさまざまな気象データや予報データを活用して、気象との因果関係が強い事象の「予報」を可能にすることで、これまで解決が困難とされてきたビジネス課題や社会問題を解決するテクノロジーだという。

 「既存の気象データが基盤にあり、その上にさまざまなデータ、たとえば売上や電力消費量、フードデリバリの受注件数などを置いて、2者間の相関を解析する。これにより、未来の気象予報から、それらの事象の未来を予報して、アクションへとつなげられる仕組み。もちろん実際の結果はフィードバックされ、モデルの評価や強化学習に役立てられる」(石橋氏)

 ウェザーニューズでは今回、過去の天気データ(2018年1月以降)を販売開始する。このデータは1kmメッシュの高解像度天気データで、1時間ごとの気温、風速、降水量など11要素を含むものだ。

ウェザーニューズの提唱する「WxTech(ウェザーテック)」のコンセプトと、今回データマーケットプレイスで提供する気象データの概要

日本の採用企業は約100社に拡大、今年下半期には日本語サポートも開設

 記者説明会では、グローバルおよび日本市場におけるSnowflakeのビジネス概況も説明された。

 米Snowflake アジア太平洋・日本(APJ)地域プレジデントのジョン・ロバートソン氏が、Snowflakeのビジョンとグローバルのビジネス概況を説明した。ロバートソン氏はヴイエムウェア日本法人に14年間在籍し、今年3月にSnowflake入りする以前はヴイエムウェア日本法人の社長を務めていた。

 SnowflakeはDWHベンダーとしてスタートした企業だが、現在はそこから進化したデータクラウドの構築と提供に取り組んでいる。ロバートソン氏は「(データクラウドという)市場には非常に大きなオポチュニティ(ビジネス機会)があると考えている」と語る。

クラウドDWHからスタートしたSnowflakeだが、より大きな市場機会を狙いデータクラウドへの進化を遂げてきた

 現在、Snowflakeを利用する企業はグローバルで4500社を超え、日本でも100社ほどの顧客企業がいるという。昨年11月の説明会では国内顧客数を「約30社」としていたが、約半年で3倍以上に拡大している。「“マイナーリーグのPoC”ではなくて、“メジャーリーグのソリューション”になってきたかな、と思う」(ロバートソン氏)。

 Snowflakeと連携するツールやソリューションのアライアンスパートナー、SIパートナー、さらにSnowflake上でデータを販売するデータプロバイダーパートナーも拡大している。

 最新四半期(2021年2~4月期)の製品売上はグローバルで2億1380万ドルと、前年同期比で2倍以上(110%)の成長となった。顧客社数は前年同期比67%の増加だが、顧客売上のリテンションレートは168%、つまり継続的に利用している顧客の利用額が前年同期比で平均1.7倍に拡大しており、高い成長率の要因になっている。「さらに、バックログ(現在利用中の顧客売上)が14億ドルほどあるので、今年も10億ドルの売上目標は達成するだろう」(ロバートソン氏)。

Snowflakeのグローバルでのビジネス概況(2021年2~4月期)

 Snowflakeは、マルチクラウド(AWS、Azure、Google Cloud)プラットフォームの上で稼働するサービスだ。APJ地域では日本、インド、シンガポール、オーストラリアにリージョン展開している。現在、日本国内はAWS東京リージョンのみだが、今秋にはAzure東京リージョン、来年初頭にはAWS大阪リージョンにも拡大する計画だ。

 続いてSnowflake日本法人カントリーマネージャーの東條英俊氏が、国内市場におけるビジネス概況を説明した。

 前述したとおり、国内のSnowflakeユーザー企業は100社近い規模まで増えている。この100社は年間契約をしている企業数だという。

 「お客様はSnowflakeのどういう点を評価して導入されているのか、シンプルにまとめるとこの図のようになる。大量のデータを預かることができ、ペタバイトクラスまでスケールする『Data Volume』。それでいて性能劣化を起こさない『Performance』。ストレージとコンピュートのリソースについて、それぞれ使ったぶんだけを支払えばよい『Utility Model』。ビッグデータ分析など大規模なリソースが必要な場合でも瞬時に提供できる『Instant Elasticity』。最後に、WebブラウザのGUIやANSI標準のSQLで誰でも操作ができ、マネージドサービスなので分析に集中できる『Ease of Use』。この5点の組合せが、日本のお客様にも評価いただいているポイントだ」(東條氏)

国内の顧客企業例。「業種/業界を選ばず多くのお客様に利用いただいている」(東條氏)

 また国内のSIパートナーも拡大している。「(パートナー)社内でのエンジニア増強も含めて、Snowflakeをフルでインプリメンテーションしていただける環境が日本でも整ってきた。リセラーを兼ねるSIパートナーが何社もあり、ワンストップでSnowflakeソリューションを提供できる」と東條氏は説明する。

 昨年11月の説明会で明らかにした「日本語対応への取り組み」の進捗状況も紹介した。新たに日本語での技術者養成トレーニングクラス(有償)を開始したほか、日本語テクニカルサポートも試験運用を開始しており、今年下半期には正式運用を開始予定だという。

 なお同社では日本時間6月9日と10日の2日間、オンラインカンファレンス「Snowflake Summit 2021」を開催する。

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