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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第615回

Tiger Lake-Hの性能比較で感じる違和感の正体 インテル CPUロードマップ

2021年05月17日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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性能比較で違和感を感じるのは
Ryzenが不利になる電源設定のせい

 最後は性能について。KTU氏の記事で解説されている話だが、インテルはCore i9-10980HK vs Core i9-11980HKRyzen 9 5900HX vs Core i9-11980HK、およびRyzen 9 5900HS vs Core i5-11400Hの3つの性能グラフを出して、Tiger Lake-Hがものすごく性能が高いとアピールしているが、最初の2つを比較するとRyzen 9 5900 HXよりもCore i9-10980HKの方が性能が高いという結果になっている。

 実際最初の2つのグラフを合体させた結果が下のグラフである。これにはなにか違和感がある。いくらなんでもComet LakeベースのCore i9-10980HKがこんなに性能高いか? という突っ込みは普通に入れたくなる。もちろんインテルの製品の性能が出やすいベンチマークを選んだという話はあるにしても、少し変な気がする。

 ということで注釈を見てみたところ、テスト詳細はwww.intel.com/11thgenmobileに記載されているという。確認してみたところ、“Power Plan = Balanced, AC power slider setting = Better performance”の文言が。おそらくこれがRyzen 9で異様に性能が低くなる原因である。

 昨年11月、インテルはMobile Performance Discussionなるセッションをオンラインで開催したが、この際にAMDのシステムはBattery Powerにすると急に性能が下がると指摘していた。

AMDのシステムはBattery Powerにすると急に性能が下がるという。これはPCMark 10 ApplicationのOverall Scoreだが、ゲームでも差はない

 この原因は、インテルによって行なわれたMicrobenchmarkで解明されており、「AC Onの場合、処理負荷がかかると直ちに電圧が上がり、これに合わせて消費電力も増える。一方AC Offの場合、処理負荷が掛かっても実際に電圧がピークまで上がるまでに7~10秒の遅延がある」のがその理由としている。

青がAC On、黄色がAC Offの場合で、処理負荷が上がってもAC Offだと電圧があがるまで時間を置くのがAMDの実装となっている、とインテルは主張する

 したがってゲームをするのであれば、Power Planは“Balanced”ではなく“High Performance”にしないと正しいCPU性能の比較にはならないのだが、インテルとしては「Power PlanがBalancedでも早いタイミングで動作周波数&電圧が跳ね上がる」という特性を最大限に生かしたのがこのベンチマーク結果ということになる。

 もちろんマーケティング的には正しいのだろうが、実際の利用シーンを反映しているのか、と問われるとやや「?」マークが消えない結果となっている。

 Core i9-10980HK vs Core i9-11980HKに関しては、これはおおむね同一条件でのComet Lake vs Tiger Lakeということになり、フレームレートがそれなりに向上するのは理解できるし、おそらく実際にもこんな感じでフレームレートは向上するだろうが、対Ryzenに関して言えば、このグラフはあまりあてにしない方がいいだろう。

 そもそもBalancedを選ぶなら、内蔵GPUを利用しないと意味がない(ビデオカードを使った時点で消費電力が100Wを超える)のだが、それをやると32EUということもあってまともにゲームが動かないから、あえてビデオカード搭載時のみの結果を示した、と考えればいいだろう。

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