性能比較で違和感を感じるのは
Ryzenが不利になる電源設定のせい
最後は性能について。KTU氏の記事で解説されている話だが、インテルはCore i9-10980HK vs Core i9-11980HK、Ryzen 9 5900HX vs Core i9-11980HK、およびRyzen 9 5900HS vs Core i5-11400Hの3つの性能グラフを出して、Tiger Lake-Hがものすごく性能が高いとアピールしているが、最初の2つを比較するとRyzen 9 5900 HXよりもCore i9-10980HKの方が性能が高いという結果になっている。
実際最初の2つのグラフを合体させた結果が下のグラフである。これにはなにか違和感がある。いくらなんでもComet LakeベースのCore i9-10980HKがこんなに性能高いか? という突っ込みは普通に入れたくなる。もちろんインテルの製品の性能が出やすいベンチマークを選んだという話はあるにしても、少し変な気がする。
ということで注釈を見てみたところ、テスト詳細はwww.intel.com/11thgenmobileに記載されているという。確認してみたところ、“Power Plan = Balanced, AC power slider setting = Better performance”の文言が。おそらくこれがRyzen 9で異様に性能が低くなる原因である。
昨年11月、インテルはMobile Performance Discussionなるセッションをオンラインで開催したが、この際にAMDのシステムはBattery Powerにすると急に性能が下がると指摘していた。
この原因は、インテルによって行なわれたMicrobenchmarkで解明されており、「AC Onの場合、処理負荷がかかると直ちに電圧が上がり、これに合わせて消費電力も増える。一方AC Offの場合、処理負荷が掛かっても実際に電圧がピークまで上がるまでに7~10秒の遅延がある」のがその理由としている。
したがってゲームをするのであれば、Power Planは“Balanced”ではなく“High Performance”にしないと正しいCPU性能の比較にはならないのだが、インテルとしては「Power PlanがBalancedでも早いタイミングで動作周波数&電圧が跳ね上がる」という特性を最大限に生かしたのがこのベンチマーク結果ということになる。
もちろんマーケティング的には正しいのだろうが、実際の利用シーンを反映しているのか、と問われるとやや「?」マークが消えない結果となっている。
Core i9-10980HK vs Core i9-11980HKに関しては、これはおおむね同一条件でのComet Lake vs Tiger Lakeということになり、フレームレートがそれなりに向上するのは理解できるし、おそらく実際にもこんな感じでフレームレートは向上するだろうが、対Ryzenに関して言えば、このグラフはあまりあてにしない方がいいだろう。
そもそもBalancedを選ぶなら、内蔵GPUを利用しないと意味がない(ビデオカードを使った時点で消費電力が100Wを超える)のだが、それをやると32EUということもあってまともにゲームが動かないから、あえてビデオカード搭載時のみの結果を示した、と考えればいいだろう。

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ














