屋外で快適に働ける環境できるかな?西新宿「ソトウェルパーク」の実証実験をレポート

文●大谷イビサ

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 西新宿の人たちのQOLを向上するためにさまざまな実証実験を進めている西新宿スマートシティ協議会。「屋外で働く」という新しい価値を検証すべく、4月5日~9日の間に都庁近くの歩道に設置されたのが屋外オフィスサービス「ソトウェルパーク」だ。

インスタントハウスが印象的なソトウェルパーク

高層ビルやマンションの多い西新宿で屋外で働く価値を

 高層ビルの多い西新宿では、いったんオフィスに入ってしまうと、なかなか外に出るタイミングを失ってしまう。特に内勤の場合、ランチで外に出る機会を逃したら、あとは終業までビル内にいたというパターンは多いのではないだろうか? せっかく自然豊かな新宿中央公園があるにも関わらず、西新宿の住民やそこに勤めるビジネスパーソンは、そのメリットを享受できてないのである。

 そんなビジネスパーソンに「屋外で快適に働ける」という価値を提供するためのプロジェクトが、今回取材したソトウェルパーク。都庁横を走る4号街路前の歩道2箇所に設置されたソトウェルパーク内には、多種多様なベンチやテーブルが設置されており、ノートPCやスマホを使って仕事ができる。

ノートPCを開いてサクッとメールチェック

屋外でのミーティングは気持ちよさそう

 ひときわ目を引くのが、ソトウェルパーク内に設置された白いテントのような「インスタントハウス」だ。名古屋工業大学大学院工学研究科教授である北川啓介氏が考案したインスタントハウスは、持ち運べるくらい軽量で、文字通り組み立ても容易。実際にソトウェルパークのインスタントハウスも数時間でできたという。モンゴルのパオのようだが、素材は布ではなく、より硬質な素材。災害時の簡易家屋や観光地の宿泊場所などを想定しているが、遮音性や断熱性も高いため、会議室としても使えそうだ。

モンゴルのパオのようなテント状のインスタントハウス

外からの光や音から遮断された空間が拡がる

 また、ソトウェルパークを出入りする人流や、温・湿度、日照、風速などの環境情報をセンシングしており、混雑や快適度をサイネージで発信している。環境情報と西新宿の3Dモデルを元にシミュレーションを行なっており、快適度の予想も行なってくれる。

エントランスにはサイネージで混雑や快適度を発信

センサーで人の出入りをチェックしている

デジタルの利用と屋外ならではのワークスタイルが鍵

 ソトウェルパークのプロジェクトを手がけたのが、大手建設会社の大成建設と家具メーカーのコトブキ。「西新宿でのオープンスペースの有効活用」「屋外で安心して仕事できるスペースの提供」といったテーマに向けて、昨年の夏からプロジェクトがスタートしたという。

大成建設とコトブキの混合チームで屋外オフィスにチャレンジ

 大成建設としては、スマートシティを構想する上で、デジタルをどのように活用するかが大きなテーマだった。今回は「快適さがあれば、人は集まるのではないか」という仮説を立て、環境情報を元にシミュレーションし、予報をサイネージに表示するという方法をとった。数多くの高層ビルが建ち並び、高低差のある西新宿は日射や風向など思いのほか多様であるため、より精度の高いシミュレーションと予報が大きなテーマになりそうだ。

 屋外家具や遊具でも有名なコトブキは、屋外にオフィスがあったらどのような家具がよいかを検証するという目的があった。そのため、ソトウェルパークには、デスクワークやミーティング用の家具を設置するだけではなく、3Dプリンタで作成したユニットを組み合わせるタイプの家具も用意した。オフィス内とは異なる屋外ならではのワークスタイルを模索することが必要になるだろう。

住友ビル前のソトウェルパーク

慶應義塾大学 田中浩也研究室の学生が3Dプリンタで生成したボクセルをデモ展示。ユニットごとに座り心地が全然違う

 正式な実証実験の結果は別途公表される予定だが、コロナ禍でありながら、期間中はちょうどうららかな気候だったこともあって、反応も上々で、多くの歩行者に意見を聞くことができたようだ。たとえば、「USB充電や荷物置きがあると便利」「飲み物を買えるとよい」といった意見もあったという。今回は短い期間だったが、こうした声を踏まえ、常設に向けたブラッシュアップを進めたいという。