「秒単位のRPO」を実現するレプリケーション機能、追加ライセンスコストなしで手軽に導入可能
Veeam「VBR v11」で注目の新機能「Veeam CDP」が可能にするものとは?
2021年04月22日 09時00分更新
「Veeam CDPは、多くのお客様が待ちわびていた新機能です」(Veeam Software シニア・システムズ・エンジニアの斉藤乾氏)
Veeam Softwareが提供開始した最新版「Veeam Backup & Replication v11(以下、VBR v11)」では多くの新機能が追加されているが、中でも特に注目を集めているのが「Veeam CDP」という新しいレプリケーション機能だ。追加ライセンスなしで、これまでのVBRが実現していた機能よりも大幅に短い“秒単位”のRPO(目標復旧時点)を実現するという。
今回はこのVeeam CDPがどんな機能なのか、どんなメリットを実現するのかについて、Veeamのシニア・システムズ・エンジニアである斉藤乾氏に聞いた。
「継続的な」データ保護を実現するCDPとは
CDPは「継続的データ保護(Continuous Data Protection)」の略語である。この「継続的」という点が、すでに提供されているバックアップ/レプリケーション機能との大きな違いになる。斉藤氏はそれを次のように説明する。
「従来型のデータ保護では、保護の時間軸(RPO)は数時間おきというのが一般的で、どんなに短くても数分単位にとどまっていました。その結果、復元できるポイントは『断続的』になります。一方で、CDPではこの時間軸が数秒単位に短縮されるため、『継続的』という名前が付いています」
さらに斉藤氏は、継続的という言葉を「映像のようなイメージ」でとらえるとわかりやすいと語る。従来型のデータ保護を断続的な“写真”だとすると、CDPはより継続的な“映像”記録であり、まさに“映像を巻き戻す”ような感覚で復元できるようになる――そんなイメージだ。
またVeeam CDPはレプリケーションの機能であるため、障害発生時には短時間でのフェイルオーバーも可能だ。しかも、従来提供されてきたVBRのレプリケーションとほぼ同様のオペレーションができるため、運用につまずくこともなく、安心した対応ができる。
VMware仮想マシンのI/Oを直接転送、DRへの適用も可能
Veeam CDPのアーキテクチャを見てみよう。まず、Veeam CDPはミッションクリティカルなシステムの保護を対象としており、適用先は「VMware ESXi」クラスター環境となる。
Veeam CDPでは、VMware vSphereの「vSphere API for I/O Filtering(VAIO)」フィルタを使ってソースとなる仮想マシンのI/Oを取得し、プロキシ経由で継続的にターゲット側プロキシに転送、ふたたびVAIOフィルタを介して仮想マシンに書き込む。こうした仕組みでレプリケーションを実行することで、数秒単位のRPOを実現している。
なお、ソース/ターゲットプロキシ間の帯域幅は1ギガビット以上、伝送遅延(レイテンシ)は80ミリ秒未満を推奨している。この要件を満たすならば、遠隔地へのレプリケーションによるディザスタリカバリ(DR)対策にも適用できる。
VBR v11では管理コンソールにVeeam CDP用のポリシー設定画面が追加されたが、「従来のレプリケーションのポリシー設定画面とほとんど同じで、既存ユーザーでも使いやすい」と斉藤氏は説明する。ここで保護対象の仮想マシンを指定し、RPO(推奨は10~15秒)と短期保持/長期保持期間の設定を行うだけで、CDPによる高度な保護がシンプルに適用できる。
またポリシー設定画面には、Veeam CDPポリシーと各仮想マシンのI/Oトラフィック量に基づき算出されたプロキシの推奨スペック(仮想CPUコア数、メモリ容量、ネットワーク帯域幅)を満たしているかどうかを確認するテスト機能も備わっている。実環境でモニタリングした仮想マシンのI/Oに基づいて具体的な推奨スペックが示されるので、導入時に難しいサイジングを行う必要がなく便利だ。
なお、VBRが従来から備えるレプリケーションはスナップショットベースの機能であり、RPOは最短で数分~数時間単位となる。この部分だけを見るとすべての仮想マシンにVeeam CDPを適用するのがベストのように思えるが、Veeam CDPを利用するためには相応のプロキシ/ネットワークスペックが必要だ。達成すべきRPOに応じて、Veeam CDPとレプリケーションを使い分けてほしいと斉藤氏は説明する。
「Veeam CDPは、たとえばECサイトのトランザクションデータ(取引記録)など、ひんぱんにデータ変更が発生するビジネスクリティカルなワークロードの保護に最適です。あくまでも目安ですが、お客様には“インフラの上位5%”に相当するワークロードへの適用をお勧めしています」
投資対効果が非常に高いVeeam CDPソリューション、幅広い企業におすすめ
バックアップ/レプリケーション市場では、CDPをうたうソリューションがすでに多く出ている。では、VBR v11の優位性はどこにあるのだろうか。
斉藤氏はまず、Veeam CDPは「投資対効果が非常に高いこと」を強調する。
「VBR v11は、バックアップ、レプリケーション、ストレージスナップショット、そしてCDPの機能を備えた“4-in-1”のソリューションです。ライセンスは1つだけで、Veeam CDPも追加ライセンスなしで利用できます」
VBRは、保護対象のワークロード単位で供与される「Veeamユニバーサルライセンス(VUL)」を保有していれば利用することができ、機能別の(Veeam CDP専用の)追加ライセンスは必要ない。また、すでにVBRの旧バージョンを導入している企業でも、VULを使ってそのままv11にアップグレードできる。
他社CDPソリューションでは専用ハードウェアを必要とするものもあるが、Veeam CDPではその必要はない。既存のVMwareクラスターにそのまま適用することができ、プロキシもWindows Server上で動作するソフトウェアベースのものだ。
「ポリシー設定や操作手順もシンプルでわかりやすく、運用工数の削減につながります。Veeam CDPはライセンス、環境構築、運用工数まで含めて、投資対効果が非常に高いソリューションだと言えます」
また、RPOの短いバックアップ機能を指して“CDP”と呼ばれているものもあるが、この場合、たしかにデータ保護は継続的に行えるものの、障害発生時のリストアに長い時間がかかり、システムを即時復旧することはできない。したがって、ミッションクリティカルなシステムの保護には向いていないと斉藤氏は指摘した。
このように、VBR v11は“より手軽なソリューション”としてCDP機能を追加しており、高度なデータ保護がより広範な顧客に提供できるようになった。斉藤氏は、中堅中小規模の企業でもぜひ活用してほしいと期待を述べた。
「Veeam CDPのターゲットは大企業だけではないと考えています。流通、小売り、金融、ヘルスケアなど、企業規模は小さくてもトランザクションデータが失われると大きな損害が発生するお客様は多くいらっしゃいます。そうしたお客様もカバーできるソリューションとして、VBR v11のVeeam CDPを展開していきます」
(提供:Veeam Software)
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