●「壮大な野心」が先か?
確かにiPodは象徴的なハードウェアなのですが、iPodのコンセプト、「ポケットに1000曲」を実現するためには、iTunesというソフトウェアが必要で、ユーザーは、iTunesにCDから音楽を取り込んだり、プレイリストを作ったりする必要がありました。
もちろん、CDからMDに1曲ずつセレクトした楽曲を、再生時間をかけてダビングする手間を考えれば、数倍速で取り込み、マウスで自由にプレイリストを入れ替えられるiTunesは優秀なソフトウェアによる音楽体験でした。もっとも、アップルはiTunesを、SoundJam MP買収を通じて獲得しているのですが……。
音楽サービスでもう一つの成功事例は、Spotifyです。スウェーデンのスタートアップが、現在では2億4000万人を超えるユーザーを抱える世界的な音楽サービスとなりました。
彼らの壮大な野心は「みんなに音楽を」。この短いフレーズがSpotifyの行動指針となり、顧客やパートナー、アーティストがこぞって共感する旗印となって、今日までの成長を作り出す原動力となっていました。
個別にサービスを作り出す力か、壮大な野心か。同時に追いかけることが難しい2つのテーマの双方を意識しながら、2021年度の授業を展開していくことになりそうです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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