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御手洗 光祐(大阪大学大学院)

2021年01月20日 12時00分更新

文● minamoto-c

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量子コンピューターを機械学習へと応用するための世界初のアルゴリズムを構築。量子コンピューターのソフトウェアベンチャーを共同創業した。

量子もつれや重ね合わせといった量子物理学の現象を利用して、従来のコンピューターの能力をはるかに超えた速さで処理を実行する量子コンピューターを開発すべく、グーグルをはじめとする大手テック企業やスタートアップ企業がしのぎを削っている。量子コンピューターが実用化すれば、人々の生活や産業に大きな影響を及ぼすはずだ。

だが、現在および近未来に実現が見込まれている量子コンピューターは「NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer、ノイズがある中規模量子コンピューター)」と呼ばれており、計算途中のエラーが無視できない確率で発生する。そのため、(実用性が皆無の)ある特定タスクでは量子超越性(quantum supremacy)が実証されているものの、確定的な応用先はまだ見つかっていない。

このような状況下では、現在利用可能な量子コンピューターをいかに「賢く」使うかが非常に重要であり、NISQデバイス向けの量子アルゴリズムの構築は量子コンピューターの社会実装のために必須となっている。

大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻で助教を務める御手洗光祐は、NISQデバイスを機械学習へ応用するための世界初の量子アルゴリズム「量子回路学習(Quantum Circuit Learning)」を提案。発表した研究論文が2年間で200件以上引用されただけでなく、グーグルの量子機械学習ライブラリ「テンソルフロー・クアンタム(TensorFlow Quantum)」や、カナダの量子コンピューティング・スタートアップ企業、ザナドゥ(Xanadu)のライブラリ「ペニーレーン(PennyLane)」の標準メソッドとして採用された。

深層学習(deep learning)に代表される機械学習においては、ニューラルネットワークのパラメーターをどのように調整するかが極めて重要だ。御手洗助教の「量子回路学習」は、量子機械学習において、回路からの出力と教師データとの誤差を最小にするための回路パラメーターの調整法を確立した。できるだけ小規模の量子コンピューターで多少ノイズがあっても動作するように工夫されているため、大規模な量子コンピューターだけを主眼とした量子アルゴリズムと異なり、現在および近未来における現実的な応用に貢献することが期待される。

御手洗助教はさらに、研究成果を社会実装すべく、博士課程在学中の2018年に量子コンピューターのソフトウェアベンチャーであるクナシス(QunaSys)を共同創業した。同社の最高科学責任者(CSO)として、量子機械学習以外に、量子セキュアクラウドや量子化学計算などの分野でも研究開発を進めている。

(中條将典)

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