アイレップ、東京電力エナジーパートナーが自社ノウハウを披露、「Slack Tour Japan Online」講演レポート
Slack活用を社内で定着化させるポイントは? 導入企業2社に聞く
2021年01月18日 08時00分更新
Slackの利用定着化に欠かせない「アンバサダー」をどう作る?
Slack展開におけるポイントの2つめ、アンバサダー活動についてはどうか。
まずアイレップでは、特定の人をアンバサダーに指名するのではなく、「社員全員がアンバサダー」という位置づけにしているという。情報システム部門が手伝うのは初期導入のみで、1時間の利用研修を通じて基本的な使い方やできることを伝えたあとは、各自が自ら学んだことをほかの人に紹介したり、お互いの使い方を真似合ったりしている。たとえばSlackのワークフロービルダーについても、お互いに作り方を教え合うことで自然と“増殖”しており、現在は100ほどのワークフローが出来ているという。
一方で東京電力エナジーパートナーでは、“Slack展開の責任者”をチーム化し、導入目的の発信やユースケースの考案、トレーニング開催などを主導している。「Slack活用のビジョンをちゃんと共有しないと、使い方を間違えてしまう」(飯塚氏)ため、背錦紗チームが各プロジェクトマネージャーと目的を共有。そのうえで、プロジェクトマネージャーがチャンネルやルールの作成にあたるかたちとしている。Slackカスタマーサクセスチームによるトレーニング受講も行っているという。
Slackのフランソワ氏は、「アンバサダーは“現場にいるチャンピオン”。アンバサダーのおかげでSlackが使いやすくなり、最終的には仕事がやりやすくなる。ぜひ、アンバサダーを応援してあげてください」とコメントした。
他の業務アプリとの連携にはさまざまな工夫あり
3つ目のポイントであるユースケースについては、2社ともに試行錯誤している様子がうかがえた。
アイレップの柴山氏は「われわれの事業であるマーケティングでは、お客様にとって有益な広告媒体の情報を幅広くキャッチアップし続けることが大切」だと語り、そのために社内で取り組んでいる情報共有のユースケースを紹介した。具体的には、広告媒体に関する情報を社内Wikiに書き込むと、そのタイトルと本文がAPI連携でSlackにも自動投稿される仕組みだ。Wiki側に情報を「ストック」すると同時に、Slackでは即時性の高い「フロー」情報として活用される。
ここでのポイントは「タイトルと本文」をSlackに流していることだと、柴山氏は説明する。「タイトル(とURL)の通知だけだと、内容まで見ないことが多い。本文まで流すことで、Slackではフロー情報として受け取りつつ、Wikiも整理されたストック情報として活用できる」(柴山氏)。
またアイレップで現在開発中のユースケースとして、バナー広告などの広告クリエイティブのレビュー業務における活用を紹介した。これはAdobe ExtensionとSlackを連携させて、デザイナーがAdobeのツールでクリエイティブを作成、保存すると、自動的にSlackでクリエイティブディレクター宛のレビュー依頼が送信されるという仕組みだ。デザイナーはAdobeツール、ディレクターはSlackと、それぞれがよく使うツールの中で作業が完結する。
一方、東京電力エナジーパートナーの飯塚氏は、コンタクトセンターにおける情報共有のユースケースを紹介した。それまでは「管理者からオペレーターに一方通行で情報が発信されていた」ところを、Slackを活用して双方向のコミュニケーションに変えた。オペレーターはリアクション絵文字(リアク字)で返信するが、これが「遊び心」となりモチベーションの維持にもつながっているという。
同じくコンタクトセンターでのシステム連携として、カスタマーサービスプラットフォーム「Zendesk」との連携も紹介した。チケットの更新通知や割り当てといったZendeskに不足している機能を、Slackとの連携でカバーしているという。
また、プロジェクト管理ツール「Backlog」と連携するボット“Backlog警察”を開発し、期限切れや期限が迫っているタスクを自動で“パトロール”する仕組みを構築したことを紹介した。
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そのほかの導入におけるポイントとして、アイレップ柴山氏は「“導入前”に時間をかけた」と述べた。「Slackは自由度が高いため、ルールを決めておかないと収集がつかなくなることもある。導入前にどれだけのことを想像し、先読みしてルール設定するかが大切」(柴山氏)。具体的には、ユーザーのプロフィール登録、ワークスペース設計、チャンネルの命名ルールなどを文書化しているという。柴山氏は「情シスがいなくても、結構自由にやれている。自由なのに綺麗な世界を作ることが、Slack活用で一番大切」だとまとめた。
また東京電力エナジーパートナーの飯塚氏は、「いろいろと言えることはあるが」と前置きしながら、「実際にSlackを使ってみて『楽しいな』と感じてもらえるように展開していくこと、これが一番有効だった」と、自社における導入を振り返った。