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海中で輝く青い光を追って――東大・吉澤晋准教授インタビュー

「東京湾のバクテリア研究」なら今からでも第一人者になれる!?

文●石井英男 編集●ASCII

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「東京湾のバクテリア研究」なら
今からでも第一人者になれる!?

吉澤 以前、トライアスロン会場の海水が臭いという報道がありましたよね。だから僕、東京湾の水を汲みに行ってどんなバクテリアがいるのか調べに行ったのです。大腸菌はほとんど検出されませんでしたが、食中毒の原因菌は検出されました。

 では、昔と比べて微生物相がどう変わったのかと言えば……比較対象がない! じつはそれまで誰も調べていなかったのです。

 研究者の僕ですら、少なくとも1970年代に公害がクローズアップされた頃からのデータは絶対にあるだろうと思い込んでいました。たぶん一般の方々はもっと思っていますよね。『東京湾の微生物なんて当然誰かが真剣に調べているだろう』と。

 赤潮が起きたときの酸素やクロロフィル濃度といった環境データは継続して測定されています。でも、どんな微生物(バクテリア)がいるのかというデータは採られていません。海の微生物を調べるのは大変ですから。

海水サンプリング中の吉澤先生

―― 逆に言えば、これから海洋微生物の道に進む高校生や大学生にとっては、研究する事柄が山ほど残っているということですよね。

吉澤 東京湾の第一人者になろうと思えばなれます、バクテリアなら。ターゲットを絞ればどこでもなれます。「俺が一番、相模湾のバクテリアに詳しい」みたいな。この数年間で京大の方が一生懸命調べたので、琵琶湖のバクテリアはかなりわかってきました。一方、東京湾はまだです。僕も1回解析しただけなので(笑)

―― そんな身近にフロンティアが残っている研究分野は珍しいですし、興味を惹かれる人も多いでしょう。最後に、高校生や大学生など若い人へのメッセージをお願いします。

吉澤 微生物の生態はわかっていないことがまだまだ多く、今からでも何らかの第一人者になれますし、重要なメカニズムがこれから見つかる可能性もあります。フロンティアなフィールドであることは間違いありません。

 コロナ禍で、目に見えない生き物がじつは大きな生き物の生活を支えていたり、影響を与えていることがあらためて注目されました。今後、海洋微生物の重要性が薄れることはありませんので、ぜひ高校生・大学生のみなさんにも興味を持ってほしいです。

 我々が普段から食べているもので、いわゆる天然ものっておそらく魚のみです。肉や野菜は人間が育てていますよね。対して、(ジビエは別として)魚以外は基本養殖ものです。魚だけが天然と養殖を選べる状態です。

 これは海の「生物の生産性」が高いことを示しています。陸上では遥か昔から「獲り過ぎていなくなったから別の場所に移動しよう」ということが起こっていますが、海の資源はうまく付き合うことで今後も持続可能に利用できると思います。海の生産性ってすごいんですよ!

研究船で作業中の吉澤先生「海洋微生物は、まだまだフロンティアが広がっている分野。第一人者になれるフィールドもまだまだあります!」

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