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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第593回

車載向け市場にフォーカスしたGSP AIプロセッサーの昨今

2020年12月13日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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プロトタイプはTSMCの28nm HPC+プロセス

 実際のGSPの内部構造が下の画像である。2017年の発表時点では、個々のプロセッサーの詳細は説明されていない。

GSPの内部構造。個々のプロセッサーは1スレッドを実行するシンプルなものの模様。ただ具体的な演算能力などは不明

個々のプロセッサーの概略。これだけみると、Single IssueのIn-Orderの構成になっているように見える

 全体としてみると、4つのプロセッサーコアを搭載するQuadという処理単位が複数個並び、その外側に2次/3次キャッシュが付く構造になっている。特徴的なのは以下のとおりで、トポロジー(構造)に特に制約は設けられていない。

  • 全体のスレッドスケジューリングは、Quadの手前のThread Schedulerで処理される。
  • Thread Schedulerはデータ依存性を理解し、実行リソースが利用可能で入力データが用意されているスレッドを選んで、個々のQuad内のプロセッサーに割り当てる
  • リダクション命令が用意される。要するに複数要素を一つにまとめて結果を出すというもので、Convolutionにおける総和がまさしくこの例となる。これが並列に実行できるので、総和の計算(1回のConvolutionに必ず1回発生する)を大幅に高速化できる
  • システム全体では、平均100あまりのスレッドがIn-Flight(稼働可能)状態に保たれ、そこから数十(これはQuadの数次第)のスレッドが並列実行される
  • 原理的にGSPというか個々のプロセッサーでは、扱うデータタイプや精度、グラフのトポロ・Streamデータではなく、長期間滞在するデータ(例えばConvolutionの計算の際の総和)に対し、2次元配列としてアクセスする機能を持つ。これはメモリーアライメントと無関係にアクセス可能
  • メモリーに対して2次元アクセスが可能

 2017年の発表時にはTSMCの28nm HPC+プロセスを使って試作されており、スタンドアロンのPCIeアクセラレーターとSoC内部の組み込みの両方が可能ながら、SoCモードでは2.5Wで動作するという見積もりがなされていた。

 ただこの時点では性能そのものは公開されておらず、2.5WはともかくとしてどこまでAIのアクセラレーターで使い物になるのかは未知数という評価だったと記憶している。

おそらくまだプロトタイプだったためもあるのだろう。ダイにブルーでマスクが掛けられており、これだともうなにがなんだかという感じ

DFPのWave Computingと同じ
Tailwood CapitalがThinCIに出資

 ここで冒頭の話に戻る。デンソーは2016年にまずThinCIに出資しているが、2018年には追加出資している。またNSI-TEXEの設立は2017年9月であり、そこからDFPの開発をスタートしているわけで、中核にはこのGSPのグラフ制御の技術があったものと推察される。

 実際GSPのストリームプロセッサーという構成そのものは、限りなくData Flow Processorに要求される方式そのものである。余談であるが、Data Flow ProcessorといえばAIの世界ではWave ComputingのDFPがいろいろな意味で有名であるという話を連載568回でした。

 Wave ComputingはTailwood Capitalが出資者であり、それもあってTailwood CapitalのマネージングパートナーであるDado Banatao氏がWave Computingの会長を務めているわけだが、実はThinCIにもTailwood Capitalは出資しており、それもあって同社の取締役にもBanatao氏が名前を連ねているあたりがなんとも、という感じである。

 ついでに言えばBanatao氏の名前が最初に出てきたのは連載20回。実はS3の創業者であり、また連載381回では触れていないが、C&Tの創業パートナーでもある。根っからの起業家体質の方で、その意味ではWaveは失敗だったのだろうが、立ち上げた会社が全部成功するわけでもないだろうから、そのあたりは割り切っているのかもしれない。

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