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LINE WORKSプロダクト担当インタビュー<第2回>

なぜLINE WORKSでは管理者がユーザーのメッセージを止められないのか?

2020年12月11日 11時30分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 ワークスモバイルジャパンのプロダクト担当者にLINE WORKS(ラインワークス)の設計思想やこだわりについて聞くインタビュー。第1回はおもにLINEとの違いについて聞いたが、今回は設計や開発で苦労しているところがテーマ。必ずしもシステム管理者がいないユーザー企業を前提に、どのような思想でサービスを作り上げているのかを聞いてみた。(インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ 以下、敬称略)

ワークスモバイルジャパン 事業企画本部 プロダクトマーケティング シニアプロダクトマーケティングマネージャー 一柳圭吾氏

管理者になりたくなかった人でも抵抗感のないように

オオタニ:LINE WORKSの設計や開発で特に苦労しているところを教えてください。

一柳:サービス特性上、ユーザー企業にシステム管理者がいるとは限らないので、LINE WORKSの管理者がなにをするのか想像もつかないという新規ユーザーが多いところですかね。最初は「メンバーが増えたら管理してください」みたいなアナウンスをしていたんですけど、そもそもグループウェアにおける管理とはなにかまったく知らない方が多い。どうすればユーザーに自然に使っていただけるかは、つねに考え続けています。

たとえば、管理者画面にいったときに、標準、セキュリティ厳しめ、みたいに設定のテンプレートを選べるとか、今回のバージョンアップではアイコンも少しポップにして、拒否感を発生させないように工夫しています。

見た目にも心理的ハードルを抑えた管理者画面。モバイル版(右)でも同機能を実装

オオタニ:普通、「管理者やれ」って言われたらいやですもんね。そういった抵抗感を払拭できたらいいですね。

田記:前職でもビジネス系のSaaSやプロダクトの開発に携わってきたのですが、やりとりする相手は情シスの方が中心。だから、新機能の理解も早かったし、「この機能を追加したら、お客さまが困るかもしれない」と考える側面があまりありませんでした。

でも、LINE WORKSの場合、使いたいけど、管理者にはなりたくないという方も多いんです。確かに「言い出しっぺの自分がセッティングや運用までやらなければならないのはちょっと……」と思いますよね。普段の仕事にプラスして、LINE WORKSの運用まで仕事になってしまうので。そういう方向けにいかに管理をとっつきやすくするかをつねに考えています。プロダクト担当としては新しい機能も追加したいのですが、管理を楽にするために設定項目を絞り込むことも必要なので、バランスの取り方にいつも苦労しますね。

オオタニ:経理や人事みたいな特定の業務担当のクラウドサービスと違って、ビジネスチャットはさまざまなユーザーが使うので、みなさんのニーズを同時に満たすのが難しいということですね。

田記: 今メインで使ってもらっているのは、人数の少ないSMB(Small & Medium Business)層。一方で、ありがたいことに多くの大企業のユーザーにも使ってもらっているので 、どちらのニーズにも応えるのは難しいというケースが出てきます。プロダクトとして、どっちを目指すのかをつねに意識しないとぶれてしまうのかなと思います。

ワークスモバイルジャパン 事業企画本部 プロダクトマーケティング プロダクトマーケティングスペシャリスト 田記由季子氏

現場の人が不自然に感じない実装を目指したい

オオタニ: LINE WORKSの管理機能はこうあるべきみたいなポリシーはどんなところでしょうか?

一柳:「ガチガチにしっかり使ってもらう」というよりは、「仕事で気楽に使える」というところを目指しているので、利便性を損なうようなユーザー統制には踏み込まないようにしています。ここらへんは他社のツールと、けっこう違うところかもしれません。

たとえば、管理者がユーザーのメッセージを止める機能ってうちには入ってないんです。たぶんこれってすごく珍しいはず。エンタープライズ向けのサービスだったら、「特定キーワードが入っていたら送信禁止」みたいな機能は付いていると思います。

オオタニ:確かに。そこらへんはメールでも同じですね。

一柳:でも、LINE WORKSを現場で使うのは、送信したメッセージが突然消えるとか、エラーメッセージが出ると、びっくりしてしまうユーザーたちなんです。

オオタニ:確かに。ちゃんと送信したのか不安になりますよね。

一柳:「こんなメッセージは送ってはダメ」という話は、コミュニケーションでカバーできることでもあります。そのため、ある程度は性善説をとり、現場の人が不自然に感じない実装を目指しています。

操作トレーニングをしてみると、何が起こるかわからないボタンは調べたり試しに押すことはせず、怖いから画面を閉じてしまうユーザーが多いこともわかっています。だから、画面を閉じずにいかに作業を終わらせるか、いまがんばっているところです。

「既読がプレッシャーになる」という意見は理解できるけど

オオタニ:既読がわかるというのもLINE WORKSの大きな特徴です。個人的には、この機能の有無でLINE WORKSを選ぶユーザーも多いのかなと思うくらい。でも、既読機能ってわりと賛否両論で、あえて外すチャットベンダーも多いですが、LINE WORKSとしてはどうお考えですか?

一柳:LINEの使用感をキープするためには既読の機能は必須でした。だけど 「既読がユーザーのプレッシャーになる」とか、「仕事が急き立てられている気になる」という意見も理解できるんです。だから、ここはリリースのときにすごく悩んだところでもあります。

ただ、ヒアリングにおいて多くのユーザーから言われたのが、「既読が付かないと、誰に連絡がついたかわからない」という声でした。結局、私たちはLINE WORKSに「誰が読んだかまでわかる既読機能」を実装しました。人数だけがわかるLINEよりも詳細な既読機能を踏み込んで実装したわけです。バージョン1.4からなので、わりと以前から実装しています。

オオタニ:当初の反応はいかでしたか?

一柳:当然、反発も予想していたので、既読がどこまで見えるかを設定できる機能を管理機能に入れておきました。けっこうアピールしてみたんですけど、利用はほとんどありませんでした。既読が見えた方が、負荷もあるけど便利だという認識を持たれているようです。

LINE WORKSはパソコンではなくスマホで利用する方が多いので、レスはできないけど、仕事の合間で確認するといったことが可能です。こうしたときにも「とりあえず見ているとわかるのはとても便利」という声は多いです。あとは社外の方とやりとりする場合は、メッセージを読んだか、読んでないかわかるだけで、ビジネスの進め方が変わるので、重宝がられていますね。

LINE WORKS テレビCM 「会えなくても仕事が進む」篇

インタビューの最終回となる第3回は作り手が考えるオススメの使い方とユーザーの声への向き合い方について聞いた。

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