〈前編〉大阪大学 藤井啓祐教授ロングインタビュー
量子コンピューターは物理法則で許された最強のコンピューターである!
ENIACの時代にTwitterを思いつくのは不可能だ
―― これは例えが難しいかもしれませんが、現在の50~100量子ビットくらいの量子コンピューターは、古典コンピューターに置き換えるとどのへんの時代に相当するのでしょうか?
藤井 難しい質問ですね。
―― 汎用機のように普及しているわけではありませんし、当然100万量子ビット超になると、古典コンピューターでいうマイクロプロセッサみたいなモノができないと到達しないと思います。
―― 今でも一応、50~100量子ビットでも動くのがあれば、古典コンピューターでいう、真空管で弾道計算していた時代に相当していると考えていいのですか?
藤井 ENIACくらいまでは到達している……と言いたいところですが、計算の原理が違うので例えるのが難しいですね。ただ1つ言えるのは、トランジスタが開発されて集積化が進む前であることは確かだろうと思います。
―― チャールズ・バベッジのディファレンスエンジンは未完成ですし、コンピューターかというと微妙なところがありますよね。その域は超えていて、もうちょっとENIACに近いようなイメージですかね。
藤井 それくらいかな……。ENIACが登場した頃、「やっとコンピューターがそろばんに勝った」と新聞記事になったそうですが、それから50年以上経って今度は、「量子コンピューターがコンピューターに勝った」と報じられたわけです(笑)
計算機システムが登場した頃、IBMの経営者が「こんなもの作っても世界で5台ぐらいしか売れない」と言ったという、有名な話がありますよね。現在の量子コンピューターも同様です。「こんなの作っても政府か巨大企業しか使い道ないよね」と。
しかしおそるべきは人間の計算に対する欲望です。高性能な計算機があればあるだけ使ってきたわけです。また、データのストレージが100GBくらいの時代には、「1TBを埋めるデータがそもそもないだろうに」と言われていましたが、実際に1TBのHDDがありふれている現在では1TBなんてすぐに埋まってしまいますよね。
新しい計算機が登場すれば、それを使う方法も次から次へ生まれてくると思います。ENIACの時代にTwitterなんてサービスを思いつくのは絶対不可能ですから。
〈後編はこちら〉
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