夜の散歩で多くの猫に出会った日
今年の夏、暑い昼間は避け、暑さがそこそこ落ち着く深夜にときどき1万歩くらい散歩した。同じ道を何度も歩くのは面白くないので、毎回違う方向へ向かう。なんてことない住宅地でも街の見え方が変わるから夜は面白い。その中で1度だけ、ものすごく夜猫運が高い日があったのである。
その日持っていたカメラはオリンパスの「E-M1 Mark II」にレンズはシグマの「56mm F1.4 DC DN」。要するに途中で猫に会えたら撮ろう、でも荷物は軽くしたい、56mmならマイクロフォーサーズ機につけるといい感じに望遠になるから近寄らせてくれない猫も撮れるし、E-M1 Mark IIなら手ブレ補正が強力なので動かない猫なら夜でもOK、というもくろみがあったのだが、猫に出会えるかどうかは行ってみないとわからない。
カメラをバッグから出さずに帰宅する夜もあるが、その夜は違った。家を出て1kmもしないうちに門前できれいなハチワレと遭遇。フェンスの向こうでちょっと戸惑ってる。住宅街なので非常に暗くて撮影は難しいかなと思いきや、カメラを向けてたらちょうどその細い道に車が曲がってくるのが見えたのである。位置的にヘッドライトの光が一瞬この猫をなめるはず、わたしがしゃがんでる位置も通行の邪魔はしないはずと、光があたるタイミングを見計らって撮ったのがこれ。右からヘッドライトが当たってるのが影でわかる。
長居しては猫に悪いなと、さらに歩く。広い道よりは狭い道、新しい道よりは古い道。スマホで地図を見ながら行き止まりではないことを確認して、狭いカーブした道へ入っていくと、何人かとすれ違う。地元の人はよく使う道らしい。
その奥で声がする。たぶん猫。それも子猫っぽい。もしや、と思ってキョロキョロしながら歩くと駐車場の片隅で子猫発見。それも2匹。
冒頭の猫もそう。無事育ちますようにと願いつつ、さらに歩く。ちょっと喉が渇いたが裏道を歩いてると自販機すらなかなかない。そこで駅から延びる商店街へ向かう。
無事コンビニを見つけ、飲み物を買ってぶらぶら歩いてると、目の前に不審な動きをしてるおじさんを発見。不審である。不審にもいろいろあるが、あの不審さは猫に違いない。案の定、おじさんの視線を追うと、かなりぷくぷくした猫がいたのである。
これはびっくり。このあたり、何度も通りがかってるけど猫の気配感じたことはなかったからね。昼と夜では違うのだ。
ここのよい体格をしたチャトラ、なんと、めちゃ人なつこいのである。しゃがんでカメラを向けるとこっちへとことことやってくるではないか。しかもナデさせてくれる。いや、そんな人なつこい猫がいるなんて聞いてない。こちとら、ちょっと離れた猫用の中望遠レンズのみで、近距離猫撮影なんて想定してないよ。
おかげでこんなアップ。近くに来て動かないので、じっくり目にピントを合わせる時間ができた。ふてぶてしくてよい顔である。
さて、かなり家から遠くまで来てしまったので帰ることにする。地図を見て、行きとは違う道を選ぶ。まあ、行きと帰りで違う道を通るのは基本だ。そして、この夜最後の1匹と出会ったのだった。真っ白な猫が消灯した門灯の横にちょこんと座ってたのである。最初、置物かと思ったくらい真っ白で、しかも動かない。
いやあ、よい夜であった。夜の猫は撮影難易度が高いけど、昼間とはまったく違うコントラストがあって良い。真夏の夜の散歩は猫に出会える(こともある)、という感じで今年の夏は終わったのだった。くれぐれも不審者として通報されないレベルでお散歩ください。
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筆者紹介─荻窪圭
老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/
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