コロナ渦のいま、サイボウズ青野慶久氏とさくらインターネット田中邦裕氏が大いに語る<前編>
帰ってきたサイボウズ・さくらの社長対談 クラウドと働き方はどう変わったか?
2020年07月07日 12時00分更新
2014年、正月明け記事としてアップしたのが、サイボウズ青野慶久氏とさくらインターネット田中邦裕氏の社長対談だった。クラウド、働き方、ビッグデータ、グローバルなどさまざまなトピックが飛び交った含蓄の深い対談が、6年の時を経て、コロナ禍の今オンラインで戻ってきた。(以下、敬称略 インタビュアー アスキー編集部 大谷イビサ)
みんなオンラインになったので情報がフラットになった
大谷:久しぶりの対談ですが、よろしくお願いします。ちなみにいま田中さんってどこにいるんですか?
田中:私はコロナ禍以前から沖縄、大阪、東京を行ったり来たりしていて、今は沖縄の自宅です。別宅のつもりが、なんだかホームセンターでいろいろ揃えていたら、もはや本宅になっています(笑)。いや、本当は東京に戻りたいんですけど、緊急事態宣言で戻れなくなったという。
大谷:いや、そのまま沖縄でいいんじゃないですか。ますます黒くなると思いますが(笑)。
田中:先日、さくらのある社員が実はシンガポールにいるということが発覚しましたが、仕事は全然できるんですよね。東京の社員は出社できなくて困ると言ってますが、僕みたいなリモート社員はみんながリモートになってくれたおかげで仕事しやすくなりました。
青野:同じこと言われました!東京のメンバーは集まってなにかしたがりますが、最近は地方メンバーに気づいてくれるようになったので、仕事やりやすくなったと言われました。みんなオンラインでのやりとりになったので、情報がフラットになったんですね。
大谷:確かにそうですよね。ちなみに青野さんはどちらですか?
青野:奥さんが気を遣ってくれて、自宅近くのホテルで仕事しています。
大谷:お子さんもいますし、家だとなかなか仕事難しいですからね。サイボウズも基本は在宅勤務ですか?
青野:弊社は2月から完全リモートです。いろいろ気づくこと多かったですね。サイボウズは今まで「100人100通りの働き方」と言ってきましたが、結局は毎日出社していたし、僕の主催する会議は東京でやるので、地方のメンバーとは距離感がありました。でも、いまは完全にフラットです。
たとえば、会議一つとっても、普通の会議室であれば、前にいる人の方が声が大きいんです。でも、オンライン会議であれば後ろの人とかないし、誰でも発言できます。実は物理的な制限を受けていたんだなあと。いろいろ気づいてなかったんですよね。
田中:今後はもっと地方・地元で働けるようになるはずです。コロナの騒ぎが落ち着いて、また元に戻ったら日本社会にとってはよくないと思います。
青野:少なくとも僕はたぶん以前のように出社することはないと思いますよ(笑)。
今年、グローバルも含めると、うちの会社って従業員が1000人を超えてしまうんですよ。1000人にいろいろ伝えて行こうとすると、もはや東京という場所ではなく、オンライン前提で伝えて行く必要があります。だからオンライン会議は誰でも入れるようにしておくし、公開してよい会議はネット上にアップしてもいい。これも在宅勤務して気づいたことですね。
クラウド化と働き方の変化が同時に起こった
大谷:6年前の対談の答え合わせ的なところをやろうと思います。まずは田中さんに6年前からのビジネスの変化についてお話いただければ。
田中:はい。実はイビサさんに企画してもらった青野さんの対談は、自分の中でも大きな転機になりました。
当時は上場前後ということもあり、ある意味「経営者としてはこうあるべき」みたいなものにとらわれていました。でも、対談した後に青野さんが「公益資本主義」の原丈人さんと引き合わせてくれて、視野が広がりました。そこで、クラウド化も重要だけど、働き方も重要であるということを理解したんです。
実際、結果的に見ると、クラウド化が進んで、働き方が変わるということが、6年前からすべて同時に起こったんです。
大谷:確かに最近の田中さんって、テック系だけでなく、働き方改革や組織作りの文脈で講演したり、メディアに出てくることも増えてますね。
田中:はい。せっかくなので、最新の資料を出しますね。
まずクラウド化に関してですが、取材いただいた2014年の3月期って、クラウドの売上はほとんどありませんでした。もちろん、「クラウドファーストの時代が来る」という話をしていたんですが、2010年の3月期はデータセンターのハウジングビジネスがもっとも大きかった。でも、その後明らかにデータセンタービジネスが伸びなくなっていて、クラウドが伸びたんです。
大谷:資料を見ると、3倍近く伸びています。売上の割合という意味でも、データセンターの会社から、名実ともにクラウドの会社になったんですね。
田中:はい。さくらのレンサバも従来は物理サーバーのリソース貸しでしたが、今ではWebサイトを立てるために必要な機能を提供するPaaSみたいなサービスになっています。5割以上の成長まではいってないですが、けっこういい線です。この2つあわせた売上が約85億円ですから、ハウジングや専用サーバーよりも全然大きくなっていますよね。
大谷:働き方に関してはどうでしょうか?
田中:2014年は社員がまだ300人もいませんでしたが、そこから現在でほぼ倍になっています。特に増えたのはエンジニアです。当時は「エンジニアが足りないのでサービスが作れない」という話をしていたので、「だったらエンジニアとれる会社にしよう」と動き出しました。
まずは今まで一部のマネージャーが担当していた採用を全員でやることにしました。現場の人も面接に参加してもらったんです。1年で10人くらいしかとれなかったのですが、100人とろうと目論んだのがちょうど2014年のことです。当然、「100人とれるのかよ」という声もありましたが、採用事務をやっていたメンバーが実は採用コンサルだったことが発覚し、いろいろやってもらったら一気に83人もとれたんです(笑)。社員も増えて、グループ会社も増えて、いろいろな仕事の種類が増えました。
大谷:以前、人材のブラックホールと書きましたが、確かに人は一気に増えた印象ありますね(関連記事:アスキーが「さくらの熱量チャレンジ」を応援する理由)。
田中:離職率に関してもけっこう高かった時期があったのですが、去年の平均は1.2%です。あまりにも低くてやばいのではないかという話も出たくらいです(笑)。