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全国2000人に対する合同調査結果を発表、「未来の働き方」の実態/意識を分析

“テレワーク積極推進”4社トップが語る、日本の新たな働き方への提言

2022年04月12日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 アステリア、サイボウズ、ZVC Japan(Zoom)、レノボ・ジャパンの4社は2022年4月7日、日本全国(47都道府県)の2000人に対して行った「未来の働き方」についての実態/意識調査の結果を発表した。

 同調査からは、企業規模が小さいほどテレワークに懐疑的な意見が多いこと、一般社員よりも管理職のほうが社内コミュニケーションに課題を感じていること、創業後若い会社はワーケーションや移住への希望が強いことなど、この2年間のテレワーク体験に基づいて経営者や社員が感じている“新たな働き方”への期待と課題が浮き彫りになっている。

合同調査の結果から見えてきた現状の課題

 今回の合同調査を行った4社は、いずれもテレワークを積極的に導入してきた企業でもある。記者説明会では各社の経営トップから、新たな働き方を実践することで得られた成果なども報告されている。

アステリア 代表取締役社長/CEOの平野洋一郎氏、サイボウズ 代表取締役社長の青野義久氏

ZVC JAPAN 社長の佐賀文宣氏、レノボ・ジャパン 代表取締役社長のデビット・ベネット氏

全国のテレワーク実施率は「25%程度」で定着か

 今回の調査は、全国のフルタイム就業者(20~60代)2000人を対象に、2022年3月9日~11日の期間で実施されたもの。レノボ・ジャパン ワークスタイルエバンジェリストの元嶋亮太氏は、調査実施の理由について、「最初の緊急事態宣言発出(2020年4月7日)からちょうど2年というタイミングで、『日本の働き方の現在地』を描き出し、少し先の未来へのヒントを提供したいと考えた」と語る。

今回の調査概要と、結果を説明したレノボ・ジャパン ワークスタイルエバンジェリストの元嶋亮太氏

 まずは全国のテレワーク実施率の推移を見てみる。新型コロナウイルス蔓延前の7.1%から、2020~2021年の緊急事態宣言下には29.5%に急増し、2022年3月時点(調査実施時点)でも25.8%を維持している。

 また、テレワーク実施者の実施頻度の推移を見ても、新型コロナ蔓延前は「週1回未満」が40.7%を占めていたのに対して、緊急事態宣言下では「週1回~4回」が50.7%を占めるようになり、2022年3月現在でも実施頻度はほぼ変わっていない。

 ただし、そもそもテレワーク実施率は企業規模によって大きな差がある。2022年3月時点の実施率を比較すると、従業員3000人以上の企業では44.2%に達しているのに対し、300人~2999人の企業は29.1%、299人以下の企業は17.5%と、企業規模が小さくなるとテレワーク実施率は大幅に下がる。このことから、元嶋氏は「テレワークを行う人と行わない人の二極化が見られている」と分析する。

現在、テレワーク実施者の約半数が「週1~4日」のテレワークを実施している。ただし、企業規模によるテレワーク実施率の格差は大きい

 テレワークを導入している職場でも、現状では「社員はテレワークを能動的に選択できていない」こともわかった。「テレワークか出社か、自分で決められるか」という質問に対して、管理職や経営者、役員の75.5%が「基本的に自分で決められる」のに対して、社員でそう答えたのは47.7%にとどまっている。

テレワークが導入されている職場で「テレワークか出社か、自分で決められるか」。管理職や経営者、役員と一般社員の自己決定権には大きな差がある

同じ「テレワークできる職種」でも「体験の有無」で考え方に温度差

 今回の調査では、全回答者のうち約6割が「テレワークができない仕事」、残る約4割が「テレワークができる職種」に就いている。ただし、テレワークができる職種の約7割は、自社に「テレワークの制度が用意されている」とも回答している。

 テレワーク経験の有無によって、今後もテレワークを望むかどうかの意識差も生まれている。テレワーク経験のある回答者の72.0%が「テレワークを選択できる働き方をしたい」としているのに対して、テレワークができる職種ながら未経験の回答者では、その意向が26.9%にとどまっている。

 「テレワークを実際に経験した人はメリットを感じている。テレワークは『やってみないとそのメリットがわからない』ことが示されたとも言える」(元嶋氏)

回答者のうち「テレワークができる職種」は約4割で、うち7割の職場は制度導入済み。ただし「テレワーク経験の有無」が考え方に大きな差を与えている

 テレワークが行える職種の回答者に尋ねた「テレワークがしにくい/できない理由」では、社内関係者、および社外関係者(顧客など)とのコミュニケーションがとりにくいという理由が上位を占めた。

 「ただし、管理職以上は39.3%が『社内関係者とコミュニケーションがとりにくい』と考えているのに対して、一般社員は24.9%にとどまる。管理職が思っているほど、一般社員はコミュニケーション面の課題を感じていない」(元嶋氏)

オフィスの存在価値はコミュニケーションの場「ではない」?

 同調査では「働く場所」についても尋ねている。「今後もオフィスがあったほうが良い」と考える回答者は58.9%。「業務に使用する機器がある」「自宅よりも業務に集中できる」「資料やデータを保管するため」という理由がトップ3で、元嶋氏は企業側が考えてきたオフィスの位置づけとのギャップを指摘する。

 「テレワークが浸透して以降、多くの企業が『オフィスはコミュニケーションの場』という捉え方をしていたが、調査結果からは別の要素が上位に挙がっている。なお『自宅よりも集中できる』という回答は、若年層の方が多い」(元嶋氏)

今後もオフィスはあったほうが良いとする回答者が6割だが、その位置づけはさまざまだ

 働く場所を選ばない働き方が実現した際には「居住条件の変化」を求める傾向が高いこともわかった。住み替えやワーケーション、移住に関心がある回答者は5人に1人(20%)以上おり、とくに20代の関心は高い(全世代平均よりも6.9ポイント高い)。

 ただし、こうした住み替えの意向も「地方移住」に直結しているわけではない。たとえば、現在東京都に居住している回答者の多くは、移住先として「東京都や近県の範囲」を選択し、「出勤する可能性に備える必要があると考えている」という結果が出ている。

 ワーケーション先として人気の地域を見ても、1位の北海道、2位の沖縄県に次いで、3位が東京都となっている。元嶋氏は「リラックスして仕事ができる環境と、自分の家から行きやすい場所という、2つの要素が混在している」と説明する。

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