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佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第25回

手が届きやすいカスタム体験? ユニバーサルイヤホンをカスタム化できる新サービス

2020年05月25日 13時00分更新

文● 佐々木喜洋 編集●ASCII

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ST1000を装着したところ

 5月22日にアユートが、マニアの間では人気のイヤホンブランド“Acoustune”(アコースチューン)のユニバーサルフィット・イヤホンを“カスタムフィット化”する新製品「ST1000」を発表した。有償で既存製品をアップグレードでき、6月上旬より順次受け付ける。

 既報の通り、取り扱い店は、アキハバラ e市場(アユート直販サイト)、フジヤエービック、e☆イヤホン。対象機種は「HS1697TI」「HS1677SS」「HS1657CU」「HS1695TI」「HS1655CU」「HS1670SS」「HS1650CU」「HS1551CU」「HS1503AL」「HS1501AL」だ。

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カスタムイヤホンとST1000はどう違う?

 どういう製品なのかわかりにくいかもしれないので、少し詳しく説明していくことにしよう。

 最近では一般層でも、カスタム・イヤホンという言葉を聞く機会が多いと思う。

 イヤホンにおいて、耳にぴったりとフィットするのは大事な要素だが、耳の形は人それぞれ固有のもので、同じ人でも左右で大きく形が違うことも珍しくはない。ちなみに私も左右でわりと耳の形が異なるほうだ。

 カスタム・イヤホンでは、自分独自の耳形(耳道の一部から外耳の内側くらい)に合わせて“イヤーモールド”とも呼ばれる形を作り、それをメーカーに預けて、自分の耳にピッタリ合うイヤホンを作ってもらう。

耳形の例

カスタム・イヤホンの例(写真はUnique MelodyのMaveric II)

 耳形は、補聴器の取り扱い店などで採取できる。と言われても、「どこで補聴器を取り扱っているか、分からない人」のほうが多いと思うが、その場合はフジヤエービックなど、イヤホン専門店に相談してみるとよいだろう。

カスタム・イヤホンは、イヤモニ(イヤー・モニター)の一種

 カスタム・イヤホンは、もともとステージに立つミュージシャンが使う“イン・イヤー・モニター”(イヤモニ)と呼ばれる機材で、ライブ中継などで、アーティストの耳になにかはまっているのに気がついている人も多いだろう。ステージ上では音楽全体が聞き取りにくいので、自分の声やバンド演奏などを聞こえやすく補助する目的で使用する。同時に、遮音性が高く個人の耳に良くフィットできるという利点から、イヤホンマニアの間でも人気が高い。

 カスタム・イヤホンと対になる言葉が“ユニバーサル・イヤホン”だ。ユニバーサルというのは英語で“汎用性がある”という意味だ、例えば、ユニバーサル・ジョイントやユニバーサル・デザインといった言葉がある。ユニバーサル・イヤホンは、汎用性があるイヤホン、つまり誰の耳にも合うイヤホンのことを指す。

 ユニバーサル・イヤホンという言葉はもともと、カスタム・イヤホンと店頭で普通に売っているイヤホンを区別するために生まれた言葉だった。しかし、最近ではカスタム・イヤホンと同じ設計で、ワンオフではなく、誰に耳にも合う兄弟機(バージョン)のことを指す場合が増えてきた。例えば、「FitEarの『ToGo 334』は、同社のカスタム・イヤホン『MH334』のユニバーサル版である」といった使い方をする。

 カスタム・イヤホンには利点もあるが、なにぶん高価なのがネックだ。また、気に入ったいつも使いのイヤホンをさらに耳にフィットさせて使いたいというニーズもあるだろう。

 そこで、ユニバーサル・イヤホンをカスタム・イヤホンのような使い勝手にする商品がいくつか作られてきた。もっとも手軽なのは、イヤーピースの形状だけをカスタム化するタイプで、例えばWestoneの「UM56」などがある。

写真はゼンハイザーの人気イヤホン「IE 800」にカスタム・イヤーピースを装着したもの

 Acoustuneの「ST1000」も、そうした従来のイヤホン(ユニバーサル・イヤホン)をカスタム化する製品だが、ポイントはAcoustuneの製品に特化していることだ。

カラーリングも5パターンが選べる。

 もともとAcoustuneの製品はモジュラー設計を採用していた。ドライバーなどを収めた“音響チャンバー部”と、耳にフィットする形状にし、着脱式ケーブルを接続する端子なども持つ“ハウジング部”という2つの部分で構成されている。

中央の金属の部分が音響チェンバー部

 このハウジング部だけを取り外して、カスタム化できるという点が、従来にない注目点だ。イヤピースだけを取り替えるタイプよりも、本来のカスタム・イヤホンに近い「セミカスタム」のような仕上がりにできる。また、音作りの核となる音響チェンバー部はそのまま使うので、本来の音のバランスを崩しにくいということだ。ここは大きなメリットになるだろう。

 また、ハウジングを外すついでに、内部配線のアップグレードをして、音質を高めることができるオプションを用意しているのも注目点だ。必要に応じて、元の状態に戻せるサービスもある(ただし変更した内部配線は、元に戻せない)。

 価格的にも、カスタム・イヤホンを制作するよりは高くはない(交換費用だけで4万円弱)ため、カスタム化の効果を知るための入門としてオーダーしてみるのもいいだろう。Acoustuneの製品は「HS1551CU」など安価なものであれば、3万円以下から購入できる。ただし耳型の取得は別費用なので、それを考慮しておくことも必要だ。耳型採取に赴く必要もある(いまは外出自粛だが、いつまでもそうだというわけでもないだろう)。

 私もAcoustuneの「HS1670SS」を所持しているが、もともと価格以上の音質が期待出来る製品なので、この機会にさらに上を狙ってみるのも面白いだろう。

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