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Androidの「音声文字変換」機能もアップデート

Googleマップが「車椅子対応」を強化、その背景から見える「アクセシビリティ」の今

2020年05月22日 02時00分更新

文● 西田 宗千佳 編集●飯島恵里子/ASCII

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自分を含めた「全員」のためにアクセシビリティ機能は磨かれねばならない

 「車椅子関連情報の検索ができたということは、もっと幅広い使い方ができるということでもあります」とブリサック氏はいう。

 そのひとつが「ベビーカー」対応だ。車椅子と同様に、誰もがお世話になる可能性があるものであるにも関わらず、「べビーカーを使っているときにはどう移動するのが効率的なのか」「その店はベビーカーに対応しているのか」という情報は少ない。

 「しかし、車椅子に対応しているということは、同じようにベビーカーにも対応している、と考えられます」とブリサック氏は説明する。確かにその通りだ。ある種裏技のようだが、これまでも「ベビーカー向けの経路を検索する」場合には、「車椅子対応で検索」するといい、ということが知られていた。地点情報の場合にも、同じ考え方ができるのだろう。

 ただ、正直それはわかりにくい部分があると思う。両方ちゃんと表記するか、事情の違いを汲み取ったうえで「べビーカー対応」を正式な検索項目に加えるか、どちらかが必要なのかな、とも思う。

 一方、そもそも社会の考え方として、車椅子対応・ベビーカー対応などの「アクセシビリティ対策」を強化し、認知を広げる必要はあるのも間違いない。認知が広がれば、利用者の側の意識として「ここはアクセシビリティ対応が充実しているから、車椅子でもベビーカーでも問題ない」と考えるようになるかもしれない。また、新しい建物や店については、オープンに合わせてアクセシビリティ情報が各地図情報ベンダーに広く伝わるような仕組みも必要かもしれない。そうすれば、おのずとこの種の情報が充実し、利用も広がっていく。

Androidの「音声文字変換」機能、「音声文字増幅」も強化

同時に、Androidの「音声文字変換」機能もアップデートしている

 実はこの日の説明会は、Googleマップのためだけに開催されたものではなかった。Androidにおける「音声文字変換」機能、「音声文字増幅」の強化についても同時に発表された。例えば耳が不自由な人が名前を呼ばれたとき、スマホがそれを音声認識で把握し、バイブレーションで伝える……といった機能が搭載される。

 グーグルでAndroidのアクセシビリティに関するプロダクトマネージャーを務めるブライアン・ケムラー氏は次のように話す。

 「アクセシビリティ対応は、自分に関係ないもの、と思っている人もいるでしょう。しかし、高齢化して体が衰えたり、突然の事故に見舞われたりしたら、誰もがお世話になる可能性があるものです。特にこれから高齢化社会を迎えることを考えれば、テクノロジーでの補助は必須です。そしてなにより、この種の機能は『機能がある』だけではいけません。常に使われるよう、機能を充実させていく必要があります」

グーグルでAndroidのアクセシビリティに関するプロダクトマネージャーを務めるブライアン・ケムラー氏(右上)

 今回の発表はまさに「すべての人」のためのものであり、そして、「すでにある機能を磨いた」ものでもある。こうした部分から、グーグルのアクセシビリティに関する考え方の一端を感じられるのではないだろうか。

 

西田 宗千佳(にしだ むねちか)

 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「ソニー復興の劇薬 SAPプロジェクトの苦闘」(KADOKAWA)などがある。

 

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