業務を変えるkintoneユーザー事例 第76回
フルオンラインでも濃厚なkintone hive Osakaレポート
6年間のつきあいから得たkintoneをあきらめないコツ
2020年05月21日 09時00分更新
2020年5月20日、サイボウズはkintoneのユーザーイベント「kintone hive Osaka Vol.8」を開催した。4月16日の福岡に続いてオンライン配信になった大阪では、5社が導入事例を披露した。トップバッターのBe Magical Solutionsの稲澤康博氏は、今回の「kintoneと歩んだ6年間 見てきたことを全部話します」というタイトルで、6年間で得たkintoneとのつきあい方を語った。
コード読めない人ならkintoneはぴったり
1995年、そらみみ工房というゲームやTVの作曲業の会社としてスタートしたBe Magical Solutions。1998年に「パソコンのお医者さん」という修理サービスを開始し、現在は兵庫県高砂市の古民家でのれんのかかったリアル店舗を運営している。「地元密着・来店型で、ほぼ子育て中のお母さんたちが接客営業している」とのことで、お母さんにあわせて9時~14時までという時短営業だ。
同社は、自社へのkintone導入を経て、2015年からは第3創業としてkintoneの導入支援を開始。顧客の目の前でアプリを開発する「ライブ開発」という対面開発スタイルで、kintoneシステム開発や業務改善、アプリ作成の方法までセットで提供している。ちなみに「ライブ開発」はもともと作曲業を手がけていた流れで、「顧客とセッションをしているイメージ」で付けられたそうだ。
Be Magical Solutionsを率いる稲澤康博氏は、従来のシステム開発にずっと疑問があったという。「できあがるまでに時間がかかる。できあがったらなにかが違う。そして修正しても時間が経ちすぎていてもういらなくなっている。こういうことがどうにかできないかずっと思っていました」(稲澤氏)。そんな疑問を感じていた頃、kintoneと青い営業支援システムと出会い、コードを読まなくても作れるという点でkintoneを選択した。「私はプログラムなんて読めないと思っている方は私と同じ。kintoneはぴったりだと思います」と稲澤氏は語る。
「IT企業なのに紙」「店長の退職」「ママさんの情報活用」
kintoneを導入する前、同社の売上は2010年がピークで、kintoneを導入した2013年頃はちょうど売上・利益が減少しつつある時期だった。店舗は店長、技術、営業など計5名で運営していたが、とにかく業務フローに紙が多く、請求書や顧客カルテもすべて紙だった。「あるお客さまからIT企業なのになんで紙なんですか?と言われましたが、私もスタッフも紙の方が速いと思っていたんです」と稲澤氏は当時を振り返る。
kintoneに大きく舵を切ったきっかけは店長の退職だ。「責任が重い」という言葉を残した店長の退職という事態に対し、稲澤氏はもっといい会社にしていこうという責務を強く感じたという。おりしも「働き方改革」や「リモートワーク」といったバズワードがもてはやされていた時期で、サイボウズのセミナーに参加した稲澤氏は働きやすい環境を作るための風土・仕組みを構築し、ツールとしてkintoneを使うことに決めたという。
「働き方が不定期な女性スタッフがどれだけ情報を正確に把握し、お客さまの対応品質を上げることができるかが鍵でした」と語る稲澤氏。そんな思想で作られたBe Magical Solutionsのkintoneアプリは、対面での受付から作業内容や顧客とのやりとりの記録、請求書の発行、入金管理まで1つのアプリで完結している。
一見すると、普通の案件アプリだが、顧客IDを入力すると、過去の作業内容や顧客との詳細なやりとりがすべて表示され、社内のやりとりもコメント欄に記録される。つまり、店舗に不在のお母さんスタッフでも、案件に関わるすべてのやりとりが容易に把握できるのだ。
また、1アプリでも入力を効率化できるよう、アールスリーインスティテュートの「gusuku Customine」を用いることで入力項目をグループ化してタブ化した。さらにトヨクモの「プリントクリエイター」によって請求書やチェックシートを印刷可能にしている。「プリントクリエイターには複数の帳票をセットして印刷するという機能があるので、たとえば送付状と請求書2枚をセットで印刷できる。考える時間や探す時間を省くことが可能になる」と稲澤氏は語る。
3つがわかれば、kintoneをマネージャーになれる
次はマネージャーに負担をかけないようにするため、人の代わりにkintoneがマネージャーの役割を果たせるようにした。「やるべきことがわかる。社内の状況が見える。必要な数字がわかる。この3つがわかれば、kintoneは優秀なマネージャーになると思いませんか?」と語る稲澤氏は具体的な取り組みを披露した。
まず「やるべきこと」に関しては、アーセスのKANBANを用いたカンバンボードでやることを見える化した。また、「社内の状況」に関しては、もともとkintoneに登録されていたやりとりを見える化することで、各メンバーの活動状況を把握できるようになった。
さらに「必要な数字」に関しては、「どんな手段でアプローチしてきたか」「どういった困りごとで来社するのか」といった顧客動向も調べた。アプローチ手段に関しては、いきなり来店する人は少なく、7割は電話をかけてくるため、電話対応が得意な人を採用することにしたという。困りごとに関しては、「起動しない」「ネットトラブル」「ウイルス」など毎年ほとんど変わらないため、チラシの内容や商品開発に活かしているという。目的意識を持って、得られた情報を活用しているのが大きなポイントと言えるだろう。
「業務フローの把握」「細部まで作り込まない」「gusuku Customine」
最後はアプリ作成をスムーズに行なうためのコツ。まずは業務フローの把握が重要になるという話だ。
稲澤氏曰く、業務フローとは「情報とモノがどう流れているかを見える形にすること」だという。まずは業務の流れを大きく分け、それぞれの項目でやるべきことをすべて洗い出し、必要な情報を書き出していく。実際の洗い出しの作業は項目の移動や追加が容易な付箋を使用。一人でやるのではなく、誰かに聞いてもらいながら洗い出すのが重要だという。
業務フローを把握することで、会社の仕組みや全体像をはっきり見ることができる。また、自分の仕事やほかの人の仕事が全体のどこに位置するのかわかるため、互いに助け合う体制を構築することが可能だ。当然、全体を俯瞰してみることで、業務のボトルネックを見つけることができる。
また、アプリ作成に関しては、「いきなり細部まで作り込まない」ことも重要だという。業務の7~8割くらいをこなせる程度の大枠をまず作り、とにかく1周させる。その上で使えると判断されたら、イレギュラーな内容をどう対応するか考える。最初から枝葉を考えすぎず、まずはアプリとして使えるかどうかを判断する必要があるという。
稲澤氏は、「とにかくkintoneを使いやすいモノにしたい」と力説する。そして、そのためのカスタマイズツールとして有効なのが、アールスリーインスティテュートのgusuku Customineだ。「確かにkintoneでできなくて、断念したこともたくさんあります。でも、gusuku Customineを使うことで、これまでできなかったことができることに変わるんです」とアピール。店頭やコールセンターの受付アプリをカスタマイズしたことで、電話番号による検索で必要な情報が取り出せるという利用例を披露し、「gusuku Customineでkintoneは無限の可能性を得たと言ってもよい」と語った。
導入の効果は数字として表れている。kintoneをツールとした業務改善とスタッフの努力により、同社は2019年度に過去最高の売上・利益をたたき出した。ライブ開発の実績も高くなり、最近ではZoomによるリモート開発も始まった。今後、顧客とともに考え、顧客とともにシステムを作ることで、kintoneを経営にフル活用できるツールに育てていくという。
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