スマートフォンのカメラも今では美しいポートレート写真が撮影できるなど、人物撮影性能も高まっています。主に女性を意識したビューティーモードの搭載も、多くのメーカーが進めています。日本で5Gスマートフォンを出す予定のOPPOも、新興国で爆発的な人気になったのはそもそも優れたセルフィー性能を有していたからでした。
そのOPPOの躍進する前から、女性をターゲットにセルフィー機能を重視した製品を数多く出していいた「女子スマホ専業」ともいえるメーカーがいくつかありました。しかし今ではセルフィー機能はどのメーカーも高めており、女性ユーザーをメインターゲットにしてきたメーカーは苦難の時代を迎えています。
たとえばMeitu(美図)は自然な仕上がりのビューティーモードを搭載し、中華圏で絶大な人気を誇りました。しかし、他社の新製品投入サイクルについていけず、またMeituほどではないにしろ、それなりに充分な美顔効果が得られる製品が増えていくにつれ市場で競争力をなくしてしまったのです。その後、Meituのスマートフォン事業はシャオミに買収され、シャオミからMeituブランドのスマートフォンが出ています。
このMeituより前に、フロントカメラのビューティーモード性能で人気を誇ったメーカーがありました。それがDoov(朶唯)です。Doovのスマートフォンのフロントカメラには「魔鏡」と呼ばれるビューティーモードが搭載され、まだSNSでセルフィーが一般的になる前から中国の女性たちの人気を集めたのです。
Doovはリアカメラを引き上げるとフロントカメラになるという「変態ギミック」を搭載した「V1」を2014年に出しています。今から5年以上も前に、こんな製品を出していたなんて当時はよほど勢いがあったのでしょう。なお当時にレビュー記事も書いています(2014年“山根博士的”世界変態スマホNo.1の『Doov V1』レビュー)。
しかし、このV1以降はパっとした製品は出しておらず、その後は自社のウェブサイトで美顔器などを売るなど「女性向けECサイト」への脱却を図りましたが、うまくいかなかったようです。最近はどうしているかなと思ったら、Doovの公式サイトは消滅して廃業してしまったようです。そして最後の製品を調べてみたところ、中国の大手ECサイト「JD.com」に出ていたのは普通のストレート形状のフィーチャーフォンでした……。
4G・DSDS対応で赤外線リモコン機能も搭載。とはいえ、この製品からはファッショナブルなスマートフォンを出してきたDoovの面影はまったく見られません。事業に苦しみ、低コストで数が期待できる製品を出すことで資金繰りを何とかしようとしたのでしょうか。女子スマホメーカーの最後としては残念な製品に思えてしまいます。
さてもう1社ある女子スマホメーカー、Sugarも今は台湾市場でなんとか生き残っている状況です。Sugarの親会社はあのWikoと同じ、中国でODMを手掛けるTino Mobile。ちなみに同社は楽天から販売中の「Rakuten Mini」の製造メーカーです。
Sugarは「パリ発のブランド」を謳い、本体にスワロフスキークリスタルをちりばめたスマートフォンとしてデビューしました。高級ブランドスマートフォンとして女性をターゲットにした製品を次々と出していったのです。
しかし、スワロフスキー戦略はうまくいかず、クリスタルの数を徐々に減らし、末期は電源ボタンに数粒だけを埋め込むだけになってしまいました。その方向転換に合わせるようにターゲット層をより若い女性とし、カジュアル路線に変更。アーリフ・リー(李治廷)、ファン・ズータオ(黄子韜)といった中国語圏で人気の男性アイドルをイメージキャラクターに採用しました。
現在のSugarは台湾でイメージキャラクターにタイのシンガー、Gail蓋兒を採用。彼女は2005年生まれのまだ10代半ばですが、台湾で人気のようですね。タイ人で英語ができることもあり、採用されたようです。というのも今のSugarのフラッグシップモデルは電子翻訳機能の付いた「F20」。女性向けではなく海外旅行に適したスマートフォンを主力製品にしているのです。しかも、背面にはLEDライトが光る縦のスリット。さまざまなスマートフォンを開発する親会社のTinoが、差別化を図るためにゲーミングスマートフォンのような外観を採用したのでしょうか。
スマートフォンの翻訳機能もグーグル翻訳の性能が年々高まっており、「女子スマホから旅行スマホ」へと転身を図ったSugarのこの先もどうなるかはわかりません。しかし、ファーウェイやOPPOからレザー調仕上げの製品が出てくるなど、女性を意識したスマートフォンはこれからも出てくるでしょう。スマートフォンが生活必需品となって久しいですが、新たな女子スマホメーカーがこれからまた出てくることに期待です。
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