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いま聴きたいオーディオ! 最新ポータブル&ハイエンド事情を知る 第16回

これ1台でいいかも、豊富な機能で音のいいプレーヤーFiiO「M11 Pro」はオススメできる【更新版】 (5/5)

2020年03月12日 20時30分更新

文● ASCII

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FiiO M11 Pro SSも用意して聞き比べてみた

 肝心の音質についてもM11 Proはかなり優秀だ。ちなみに、M11 Proの標準モデルはアルミ製の筐体を採用しているのだが、これをステンレス素材に変更した「M11 Pro Stainless Steel Edition」も限定販売されている。1月24日の発売以降好評で、在庫切れに近い状況だが、単なる素材だけでなく、音質面でも違いが出てくるので、その印象も交えながら、M11Proの音質に迫ってみよう。

標準モデルとSSモデル

 組み合わせるイヤホンとしては、5BAドライバー搭載で、低インピーダンス/高感度なIEM型イヤホンとして「ANDROMEDA CK」、ダイナミック型ドライバー搭載のシンプルな構成の「DITA Dream」、平面振動板を組み合わせた独特なドライバー構成の「Cupid」、ハイインピーダンスで高出力が必要な開放型ヘッドホンとして「HD800S」、密閉型ヘッドホンの「Signature DXP」などを用意した。また、比較対象として、価格にだいぶ開きがあるが、Astell&Kernの「A&ultima SP1000SS」も用意した。

 高音質録音で有名な2Lレーベルからコーラス曲「MAGNIFICAT」。4曲目「Et misericordia」を聴く。通常版とSSを比較すると、音と音の切れ目の静寂感や、各音の彫琢の深さなどでSSのほうが勝っており、反射音なども緻密にトレースし、立体的に聴こえる。通常モデルは音の大小の抑揚感などで譲り、少し平面的で空間の広さも制限される印象だ。しかし、中域については密度感があり、伴奏の音や直接音がより前に出てくる。SSでは子音の響きなどにやや癖がある印象もあったので、よりニュートラルな再現と言えるかもしれない。シャープ感や音の細かさという意味では、SP1000SSと同等か、それよりも鋭いと感じる面があった。解像感重視の人はM11 Proのほうが好ましいと感じるかもしれない。SP1000はもう少し滑らかなつながりというか、アナログ的な質感があり、低域も据わる感じだ。

 ポップス系の楽曲として、藍井エイル「流星」を聴いた。リバーブ感の豊かさという意味ではこちらもSSの印象が強い。ただ、少し腰高というかハイ上がりで中域が抜け、子音が若干耳に障る感じもある。一方通常モデルではこうした癖を感じにくい、J-POPやアニソンなどは、フラットバランスなほうがいい面があるので、ポップス系の楽曲には向いている面がありそうだ。また、低域の量感は締める方向で、それほど出さない。相性的にはダイナミック型イヤホンやヘッドホンがいい印象を持った。

ハイレゾロゴに加え、ハイレゾワイヤレスロゴも付いている。

 アンプは出力が32Ωで200mW(アンバランス)、さらにバランス駆動では550mW(32Ω)となかなか余裕があり、300ΩとハイインピーダンスなHD800Sなどのヘッドホン接続時も22mWと十分な音量が取れるレベル。通常モデル、SSモデルともHD800Sを余裕感を持って鳴らせ、かつハイエンドヘッドホンならではの高域がキリリと立った明瞭感を感じることができた。

非常に満足度の高い仕上がりの新定番ハイエンド

 全体を通した感想としては、パワー感のあるヘッドホン再生が好印象。イヤホンであれば、ダイナミック型のシンプルな構成との相性の良さを感じた。試聴した中では、「Cupid」や「Final B1」などが好印象だった。BAマルチドライバーの機種よりは、ダイナミック型のシンプルな構成を、ガツンとハイパワーに鳴らすというのが個人的にはいいと思っているが、そこは好みもあるだろうから、いろいろ試してみてほしいところだ。

 高解像度で高域が伸びたシャープなサウンド、低域の量感については控えめではあるが、Hi-Fi指向のチューニングも日本のリスナーの好みとよく合いそうだ。

 通常モデルとSSモデルも聴き比べてみたが、解像感や情報量、残響の表現などでSSのほうが一段上の表現力を持つ感想はある。その意味で、M11 ProのSSモデルは魅力的だが、通常モデルのできも非常に高い。ウェルバランスでかなりハイクオリティな仕上がりのサウンドだし、ポップスなど、直接音中心の録音を中心に聴くぶんには、逆にこちらのほうが力感があって楽しめると感じる面もあった。

 FiiOの音はここまで進化したと素直に思うことができた。このポテンシャルの高さは、昨秋のイベントで参考出品モデルを短時間試聴した際にも感じていたが、長期間使用することでその印象を改たにした。

 最近のハイレゾプレーヤーは10万円を超えるレンジのものも多い中、7~8万円のレンジで買えるフラッグシップ機であり、「これ1台で何でもできる」というのも素晴らしいところ。デジタルオーディオプレーヤーの新定番機種として、どんな人にも勧められる製品だ。

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