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moreNOTEで始める「働き方改革」 第3回

学校法人ならではの悩みも解決

紙代よりも人件費の削減効果が大きい!大東文化大学がペーパーレス化でmoreNOTEの導入を決めた理由

2019年11月27日 11時00分更新

文● 飯島範久 編集●ASCII

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 駅伝やラグビー、バスケットボール、テコンドーなどスポーツが盛んで、今年で創設96周年を迎えた大東文化大学(以下大東大)。もともとは西洋の文化が日本へ流れてきたときに東洋の文化を守っていかなければという漢学振興の思いから創設された学校で、現在は8学部20学科あり学生数は1万1000人強。東京都・板橋キャンパスと埼玉県・東松山キャンパスに拠点を構える。実はスポーツ以外にも中国文学や書道が有名で、元号の発表時に官房長官が掲げた「平成」と「令和」の書は、大東大の卒業生の筆で、ほかにも同大出身の著名な書家としては中塚翠涛氏らがいる。

大東文化大学の文字は「令和」を書いた茂住修身氏の師であり、同大学教授であった故・青山杉雨氏(文化勲章受章者)によるもの

ピーターラビット™の作者であるビアトリクス・ポター™の資料館(埼玉県東松山市)。大東文化大学では、プロモーションキャラクターとしてピーターラビット™が採用されている

 そんな大東大では、早くからIT化には前向きに取り組んでおり、20数年前から財務処理を中心とした人事以外の管理に専用のシステムを導入してきた。そして時代の流れに合わせてペーパーレス化を目指し、2018年の6月よりmoreNOTEを導入。現在、学内の職員や役員を中心に300人以上の規模で利用しているという。

 今回は、なぜ大東大がmoreNOTEを選んだのか、導入のいきさつから実際の利用方法についてまで、総務部総務課の小笹太郎氏と星野直久氏、そして学園総合情報センターの渡邊一憲氏の3人にお話を伺った。

セキュリティを重視した結果ほぼ一択に

――2018年度からmoreNOTEを導入したとのことですが、選んだきっかけは何でしょう。

小笹太郎氏(以下小笹):実は同時期にIT化しようとする動きが2つあり、1つは総務課が理事会や常務審議会といった法人の会議をペーパーレス化したいという思いがありました。会議準備はかなり昭和的で資料は紙で片面しか印刷せず、しかも案件ごとにインデックス付けもやっていたため、会議のたびに膨大な作業が発生していました。それを変えたかったのです。

総務部 総務課 主査 小笹太郎氏

 もう1つが、学園総合情報センターの職員の事務をできるだけペーパーレス化しようと、iPadを全職員に配布して職員間の情報共有を行おうとしていました。当初はお互いの計画を知らずに話を進めていたのですが、総務課がmoreNOTEの導入を決めたことを知った学園総合情報センター側が、職員にiPadを配布して情報共有するのであれば、同じサービスを利用するのがいいのではと総務課と話し合いました。その結果、目標が一致したため、タッグを組んで予算取りなど、導入へ邁進したのです。

 当初は、iPadを別途購入しようとしていたのですが、最終的には富士ソフトさんにお願いしてレンタルするようにし、moreNOTEを利用する端末を含め、まるごと導入することになりました。

星野直久氏(以下星野):moreNOTEを導入する決め手となったのはセキュリティの高さです。たとえば、時間制限を設けて決められた時間以外では閲覧不可にできたり、ダウンロードの許可・不許可ができるので、部外秘の資料を会議用に用意しても、誰もダウンロードはできず、会議が終わればすぐ消してしまうこともできます。

 予め会議のスケジュールを設定してしまえば、その時間内だけ閲覧できる資料を置くことができます。とにかく、ファイルを共有するなかで、資料の安全性が担保されているので、その便利さから導入後も利用が広がっていきました。

総務部 総務課 主査 星野直久氏

 あとは端末認証がかけられるので、配布しているiPadでのみしか利用できないというところが、非常に重宝しております。

――moreNOTE導入以前は、会議や情報共有に関してIT化は進めてきていたのでしょうか?

渡邊一憲氏(以下渡邊):会議でいうと、8年ほど前に、会議室にiPad2を収納するボックスを設置し、学部の教授会で使う会議用の資料をiPad2へ納めて使うことで、紙をやめようという試みを行なっていました。あくまで教授会のみということで、使用が限定されていたのと、その時導入したシステムだと、デジタルの資料とはいえ、準備が大変だという点がネックになっていました。moreNOTEのほうが、資料の準備が断然スムーズに行なえます。

小笹:その時のシステムがクラウドではなかったため、物理的に1つ1つiPad2を接続して、同じファイルを流し込まなければならなかったんです。そのため、同じ作業を参加人数ぶん繰り返すことになり非常にめんどうでした。さらに、資料の差し替えが発生した場合、もう一度同じ作業をしなければならず、紙資料のときと労力はあまり変わりませんでした。ですからIT化は行なっていたものの、そういった先行事例があったので、クラウドサービスがいいよねというのが導入基準の根底にありました。

学園総合情報センター事務室 事務長 渡邊一憲氏

――ペーパーレス化を実現するサービスというのはmoreNOTE以外にもあると思いますが、ほかのサービスも検討はしたのでしょうか。

小笹:いろいろと調べてみたのですが、特にセキュリティの面を確認してみると、ほかに対抗馬がなかったですね。法人の会議での利用だったため、経営資料が学外に出てしまうと大問題になりますので。moreNOTEのクラウドサーバーは富士ソフトさんが国内に用意された自社サーバーで管理されているというのも決め手の1つでした。ほかのサービスだと、どこにサーバーがあるのか開示していなかったり、海外にサーバーがあったりして、どこに資料が保存されるのか不安な面がありました。

端末の扱い方さえ習得できれば、moreNOTEの利用はスムーズに

――実際にmoreNOTEを導入されて、理事会で利用されることになったときの反応はいかがでしたか?

星野:iPad Proを同時に導入して利用したため、moreNOTEの使い方以前にまずiOS機器についてユーザーごとの習熟度に差がありました。会議中は、われわれ総務課がサポートをしており、操作方法でわからない部分があれば、すぐに対応する体制で臨んでおりました。ただ、ペーパーレスへの移行のほうはスムーズにいったと考えています。

――基本的な運用方法は、理事の方々は閲覧するのみで、資料をアップする作業は総務課の担当者が行なっていると。

星野:はい。総務課が理事会の幹事部署になるので、資料も審議案件として案件提出部署より上がってきたものを、フォルダーの中へ格納して揃えるという作業を行なっています。ですので、会議の構成員の方たちは、moreNOTEの画面で並んでいる資料を開いて、審議することになります。

――これまでの紙での会議に比べて違いや不自由さなどはありましたか?

星野:進行の速さについては、それほど変化はありませんが、逆に言うとそれだけ紙の時代と違和感なく進行できているということではないかと思っています。

小笹:これまでA4サイズの紙で行っていたのですが、iPad Proの12.9インチの画面サイズがちょうどA4サイズと同じなため、文字が小さくなることもなく、違和感なく移行できたのではないでしょうか。

会議室に備えられたiPad Proを参加者一人一人が利用して、資料を閲覧し議事進行する

――法人の会議の場合は、会議が終わったらすぐ消去するような運用をされているそうですが、あとから見るというようなことはないのでしょうか?

小笹:紙の時代で言うところの、その場で資料を回収するというような極秘事項の案件があるため、すぐに資料が閲覧できなくなるようにしているんです。

星野: moreNOTEの使い方としては、時間を設定しておいて会議終了後にすぐ見られなくするようにしています。それができるのが、われわれとしては非常にありがたいですし、moreNOTEを選んだひとつの理由にもなっています。

小笹:それまで行なっていた紙資料を利用した会議では、資料を回収しそこねて参加者が持って帰ってしまったということもゼロではなかったため、moreNOTEでそれを確実に防げるのが非常に助かっています。実は、月に2回会議を行なっているのですが、一方はまだ紙に印字しています。

 これは出欠(委任状)を取るために、案件(資料)を1週間前に理事に郵送するためです。できればiPadを全員に配布して、1週間前に資料が表示されるようにするのが理想なのですが、現状は難しいですね。参加する方々のリテラシーの問題もありますが、iPadは大学の所有物であり、それを貸し出すことになる上、理事の方々には任期がありますので。本当は、それぞれの理事の方が所有する端末を使って利用できればいいのですが、セキュリティの関係で現在は行っていません。

星野:会議自体は、どちらもmoreNOTEで行っています。紙の資料は1週間前に配布するだけで、その後資料が更新されたものはmoreNOTE上だけ更新するため、そちらが最新版の資料となるわけです。

――moreNOTEを導入して、どのくらい経費削減の効果があったのでしょうか?

小笹:具体的な数字は出していないのですが、1回の会議で50~100ページで、20人~30人ぶんの資料を作る必要があります。紙自体は差し替えが発生したとしてもかかる経費はそれほど多くないのかもしれませんが、資料作成のためにコピー機に張り付いている人が必要なんです。紙切れを起こしたら補充しなければならないですし、紙詰まりを起こしたら直さなければなりません。その張り付いている人の人件費のほうがかなり大きい気がします。その後のインデックスを付ける作業も、空いている職員6人くらいで1~2時間かけて行なっているので、人件費はかなり抑えられているのではないでしょうか。

iPadさえ持ち歩けばどこからでも資料が見られる便利さ

――学園総合情報センターでの活用のほうはいかがでしょう。

渡邊:職員での利用時も、やはりiPadを使ったことがない人がいまして、若手は問題ないのですが、アプリを入れるということだけでも戸惑ってしまう人もいました。当初の利用者は200名ぐらいだったのですが、23歳から65歳までおり平均年齢は40歳前後。iPhoneを使っている50代ならまったく問題ないのですが、まだガラケーの方々もおり、少人数ではありますが、苦労した方はいましたね。

 説明会を5日間ぐらい開いて、冒頭に概要を伝えて、その後は設定大会にしました。総務課のほうでマニュアルをつくってもらい、そのマニュアルに沿って設定していただける人はいいのですが、できない人はそこに残ってやりましょうという感じでした。

――moreNOTE自体の操作に関してはみなさんどうでしょう?

小笹:moreNOTEはいちばん使いやすいんですよね。学内ではセキュリティの関係もあって、ファイルを置いておくサービスは限られていて、moreNOTEはその中の1つなのですが、moreNOTEは閲覧に関していちばん管理しやすいですね。非常にハードルが低いです。ただ、アップロードする作業は、わかっている人でないとできない部分はあるのですが。

――職員の方々は、ファイルをアップロードして閲覧期限を設けたりといった作業はみなさんできるのですか?

小笹:一応全員できるようになっています。ただ、会議は主催する部署が仕切るので、資料をアップする作業はその部署のできる人が行なっているかもしれません。

――これまでは、職員間の会議でも紙資料というのは多かったのですか?

小笹:多かったですね。3,4人の打ち合わせでも紙に印刷していましたので。また、本学の場合は板橋と東松山の2キャンパスがあり、テレビ会議システムはすでに導入されていたので、資料をmoreNOTEに入れておけば、拠点が離れていてもスムーズに会議に臨めます。これまではメールで資料を送って印刷したり、FAXで送ったりしていたので、その手間が不用になっただけでも、かなりメリットは大きいと思います。

渡邊:moreNOTEで会議の資料を共有することで、会議ごとに蓄積されていく資料をあとから閲覧もできますし、会議中のメモやマーカーもそのまま残っているので非常に助かっています。

小笹:たとえば高校へ大学の説明会に行ったときも、大学の説明会用資料をmoreNOTE上に格納しているので、iPadを持っていってプレゼンテーションにもつかっています。iPadを持ち歩いてさえいれば、資料はmoreNOTE上にあるので、いざというときなんとかなりますね。いま、参照率が高い資料は常時閲覧資料として置く場所を決めていて、たとえば大学の年度ごとのデータ集などを格納しています。

渡邊:あと、事務マネジメント会議は板橋キャンパスで30人、東松山キャンパスで10人ぐらい。事務職員総会というのもあって、200人ぐらい集まる会議体なのですが、その資料はだいたい20枚ぐらいあり、事例などがあるともっと増えるときがあります。その資料が前日までになかなか揃わないので、これまでだと前日残業して200人ぶんの資料を作り、差し替えが発生することもあって苦労していました。それがアップロードするだけで終了するのが非常に大きいですね。小さい会議であっても、そういうことの積み重ねですし。

もっと利用範囲を広げて使いたい

――1年半使ってみてmoreNOTEはいかがですか?

渡邊:当初は、Webでアップロードはできるのにダウンロードができなくて、ブラウザー上で内容が確認できないため問い合わせが多かったのですが、逆に慣れてくるとそれがセキュリティにつながっているという意識が働いて、スッキリしています。もっと利用範囲を増やしたいのですが、ユーザーが増えても資料を保存する容量が増えないため難しいのです。

 それを解決するには、プライベートクラウドへ移行するか、オンプレミスに移行するかですが、うちの視点からすると、もう利用しないと思われる資料は、別の場所へ移動したほうがセキュリティ的にはいいと思うので、いまの容量をうまく使い回すべきかなと感じています。

――増やしていくとしたら、どの範囲まで利用してもらおうと考えているのでしょう。

渡邊:そこが悩ましいところで、教員が専任で500人ぐらいいて、そこへ広げようとすると、教員は研究費で機材を買うので、こちらで機材を用意する運用方法と異なってしまい、セキュリティ的にゆるくなることを懸念しています。

 言い方は変ですが、もともと事務職員はインターネットから隔離されたLAN内だけで仕事をしてきました。ところが、教員はインターネットにつながっている環境で仕事をしてきたので、意識の違いによりその壁を取り去るのは、まだちょっと早いのではと感じています。

――それは大学特有の悩みですよね。普通の法人だとトップダウンで導入したりできますし。

渡邊:あくまでも協調してやっていくことを重視していますので。いまでも会議体で教員が参加すると紙での会議になります。本心としては、所属している委員会が多ければ多いほど、紙資料が積み重なっていくわけなので、手元で保管するのもめんどうですし、教員にも利用してもらいたいですね。

小笹:教員の方々は、iPadなどは使いこなせる方が多いので、全体的にリテラシーは高いですね。できればPDFで資料を送ってほしいと言われるケースもありますし、導入してしまえばおそらく話が早いと思います。

――セキュリティと機材の問題がクリアされれば。

渡邊:あとは費用ですかね(笑)。紙代などの消耗品経費と違い、学校法人では通信費や管理費などの固定費が増えることを嫌がるので、導入するときも結構戦いました。ほかには、当初はクラウド上にデータを置くことに懸念をいだいていた方たちもいましたが、資料をUSBメモリーに持たれるぐらいならクラウド上に資料を置いてiPadで閲覧したほうがいいですね。MDMで、ワイプしたり利用停止したりできますし、iPad上にはファイルを残さないという設定もしているので、よっぽど安心です。

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