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グーグルのハードウエア戦略「アンビエント・コンピューティング」で読み解く【西田宗千佳】

2019年10月17日 16時40分更新

文● 西田宗千佳 編集●ASCII

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Pixel 4の注目点は「オンデバイスAI」だ

 そういう視点で見ると、Pixel 4もアンビエント・コンピューティングの道具だ。ポイントは「オンデバイスAI」の強化だ。

 Googleアシスタントに限らず、現在の音声アシスタントや音声・画像認識系機能は、ほとんどがクラウドの上で処理されている。すなわち、通信回線がないとどうしようもない。メッシュネットワークで家中を通信可能にしよう、という発想とは矛盾するようだが、本来は「通信ができない場所でもAIの力を使える」のが、アンビエント・コンピューティングの正しいあり方だ。

 Pixel 4では、機械学習推論の能力をさらに高め、クラウドに頼らず、デバイスだけで認識系の処理を実施する「オンデバイスAI」の強化が図られた。オンデバイスにするメリットは「どこでも使えること」だけではない。クラウドにデータを送らないので反応が早くなること、そして、端末から出て行くデータが減るのでプライバシー面での懸念が小さくなる、という利点もある。オンデバイスAIにはアップルも積極的に取り組んでいるが、彼らは最大の価値をプライバシー保護に置いている。方向性としては両社とも同一だ。

音声録音と同時に「テキストへと書き起こす機能」は、オンデバイスAIで実現されフライトモードでも利用できる

 Pixel 4では、音声レコーダーアプリを改良し、音声録音と同時に「テキストへと書き起こす機能」が搭載された。実はこれもオンデバイスAIで実現されており、通信が使えない「フライトモード」でも利用できることが、アピールされている。

 ただ現状、日本ではすぐにこの「オンデバイスAI」の力を、すべて活用するのが難しい。まずは英語で提供されるからだ。オンデバイスAIを活用したGoogleアシスタントの日本語での提供は、2020年とアナウンスされている。音声レコーダーアプリでのテキスト起こしについては、時期は未公開ながら「日本語での提供を前提に開発中」とグーグルはコメントしている。

 写真の画質向上もAIの賜物であり、これもまた、オンデバイスAI強化の結果といえる。どこでも誰でも、Pixel 4でシャッターを切れば「希望のものに近い写真が撮れる」というシンプルさは、アンビエント・コンピューティングの理想そのものだ。その写真はGoogleフォトに送られ、自分が使うあらゆる端末から利用することになる。

 すなわちグーグルがデバイスとしての販売を強化する理由は、「アンビエント・コンピューティングのプラットフォームを強化するため」だ。アンビエント・コンピューティングの接点であるハードウエアを広げることで、ユーザーへプラットフォームを浸透させることが重要、と考えているのである。


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