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名盤を再発見

ワーナー盤のハイレゾCDがついに登場、その音を聴いてみた

2019年08月13日 16時00分更新

文● ASCII

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4種類のアプローチを楽しめる、中森明菜ベスト盤

 編集部に、届いた試聴用のアルバムは4タイトル。MYTEK Digitalの「Brooklyn DAC+」を使い、MQAデコード機能をオン/オフしながら聴いてみた。ハイレゾCDのディスクは44.1kHz/16bitの品質で良ければ通常のCDプレーヤーでも再生できる。ハイレゾ品質で再生したい場合は、CDプレーヤーの同軸デジタル/光デジタル出力やBlu-ray DiscプレーヤーのHDMI出力でMQA対応DACにデジタル出力することが必要だ。また、リッピングしてMQA対応ポータブルプレーヤーや、PC+MQA対応USB DACの組み合わせで聴くこともできる。

黒い筐体がBrooklyn DAC+

試聴環境:スピーカー:ELAC VELA BS403.2、アンプ:Aura vita、DAC:MYTEK Brooklyn DAC+、プレーヤー:Marantz SA-7S1。再生時は、SA-7S1から同軸デジタル出力し、MQAオン/オフともD/A処理はBrooklyn DAC+で実施。

 まずは、中森明菜『ベスト・コレクション ~ラブ・ソングス&ポップ・ソングス~』(WPCL-13071/2)と、中森明菜『BEST』(WPCL-13073)から。

 両方のアルバムに収録されているヒット曲「北ウィング」を聞いたが、なかなか面白い。三者三様(四者四様?)の聴こえ方がするのだ。29タイトルしかない中に、なぜ収録楽曲がかぶっている2枚のアルバムを入れたのか疑問に思っていたが、その違いを聞けば納得だ。

Image from Amazon.co.jp
ベスト・コレクション ~ラブ・ソングス&ポップ・ソングス~(MQA-CD/UHQCD)(完全生産限定盤)

 このうちBESTのほうは、1986年にリリースしたアナログ盤のマスターテープを96kHz/24bitにデジタル化したものだ。オーソドックスなバランスで、従来から販売されているCDに近い出音と言える。低域にエネルギー感があり、全体にハッキリとしている。ベスト・コレクションも、同様にアナログマスターを96kHz/24bitでデジタル化しているが、ミックス処理を後年、やり直したものとなる。ボーカルをたっぷりと聞かせるバランスで、BESTの音とは大きく異なる。声のディティールが細かく再現され、ちょっとハスキーな中森明菜の声の質感や歌い方の抑揚が生々しく伝わってくる。

 少し雑だが、BESTのほうはデジタル的、ベスト・コレクションはアナログ的な鳴りをする。アナログマスターの制作年代は、ベストコレクションのほうがだいぶ後になるが、昔、アナログレコードで聴いたことがあるような、レトロな感じの仕上がりなのだ。例えば、リズム帯など、アタックのある音に注目すると、BESTは直接音をソリッドかつストレートに出しているが、ベストセレクションはこれよりもフォーカスはややあまく、逆に自然さを重視している印象がある。

Image from Amazon.co.jp
BEST(MQA-CD/UHQCD)(完全生産限定盤)

 MQAのデコードをオンオフした際の違いも面白い。BESTの44.1kHzは低域がガツンとしていて力感があるが、88.2kHzで聴くとそこが中高域となじんだ、より自然な聴こえになる。中域の分離感が上がり、埋もれていた楽器の音などを聞き分けやすくなるし、弱い音もよく拾うせいか、音場が少し広がった印象になる。ベスト・コレクションの44.1kHzはレコード的な聴こえ方と書いたが、ボーカルなど中域の厚さがある一方で、帯域は少しナロウだ。これが88.2kHzにすると、低域・高域のレンジ感が広がり、リバーブ感も豊かになって、より広い空間に包まれる印象を持った。

 4パターンのうち、キャラクターの差が顕著に出るのは44.1kHzのほうだ。88.2kHzにするとお互いが歩み寄ったようなナチュラルさ、広がり感が出た。もちろん、ミックスの違いによる聴こえの差は支配的なのだが、ハイレゾ音源ならではの空間の広さ、S/N感の高さ、分離の良さを感じるようになる。声の聴こえ方、楽器の出方は、曲の印象を変える要素になる。結果、4通りの表現によって曲想の広がりを感じられた。

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