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盛田 諒の「ほぼほぼ育児」第10回

男性育休義務化もいいけれど

2019年06月14日 09時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 2歳児くんの保護者をしております盛田 諒ですこんにちは。自民党員ら50人が6月5日、「男性の育児休業取得の義務化を目指す議員連盟」を設立したそうです。育休を取ったものとしては、育休を取りやすくなるのはいいと思うのですが、「義務化」という強い言葉には若干疑問符もつきました。

 はじめ取得を義務化するのかと思いましたが、報道によれば議連がめざしているのは社員本人からの申請がなくても会社から「取らないのか」と促すことを義務づけるしくみということ。なるほど「前例がない」などの気後れなどから取得をためらっている社員の背を押す意味ではよさそうです。

 ただ義務化などと言っていると「うちの夫に休まれてもかえって疲れるだけ」なんて声も聞こえてきそうですが、そもそも取得をためらう理由はただの気後れではないこともあります。

●「お金」の問題がある

 まず社員が休むと困ってしまう会社があります。大きな会社はともかく人不足で困っているような小さな会社は特に困りがちです。社員も「休むとみんなに迷惑がかかるし」とためらうのは自然です。これは男女とも同じ話で、少ない人数で回している会社はつねに頭の痛い話だと思います。

 次に社員には育休を取っているあいだお給料がもらえないため困ってしまう人がいます。給付金制度はあるのですが、入金は育休取得開始日から2ヵ月後などなので休業期間中は貯金で生活することになります。特に男性の収入が多い家の場合「休まれても困る」ということになりがちです。

 あとは最近そんな話がありましたが、育休明けに「本人のためだから」といって配置替えをされたり降格をされたりするんじゃないかという不安があります。ここは制度というより評価やハラスメントの話なので別なのですが。

 そういうわけで会社も社員もざっくり「お金」という現実的な問題があることで取得をためらっている部分があります。せっかく義務化という強い言葉を使うなら単なる声かけにとどめず、取得のさまたげになる課題をどうするかという部分を含めてしくみにしてほしいなと思いました。

 国はいま社員の育児支援に積極的な会社に「くるみん」という認定を出して税制優遇をするという形で間接的なサポートをしています。しかし実際に認定を受けている企業では男性がわずか5日以内の「名ばかり育休」を取っているという例がよくあります。意地悪に言えば税制優遇目当てで社内制度を整えることだけが優先されて制度が形骸化しているようにも見えるので、もうちょっと従業員の支援に直結する助成や優遇があってもいいのかなと感じます。

●育休自体はいいもの

 もうひとつ言えば育休は育児の始まりでしかありません。子どもが保育園に入って両親がともに職場復帰したあとも育児はつづくよどこまでも。願わくは育休明けのことも提案してほしいです。

 片親は子どもを迎えに行く時間までしか働けません。子どもが風邪をひいたとき誰かに頼めなければ片親は仕事を休んで看病しなければいけません。そのとき両親ともに柔軟に休みがとれるとか、誰かに安心して子どもを頼んで両親がともに働きつづけられるとか、そういうしくみ、そういう社会ができて初めて仕事と育児の男女平等が成り立つといえるようになるのではないかと思います。

 そもそもいま男女で子育てをするのがあたりまえというのは男女差がどうという話ではなく、社会と家計にともにゆとりがなく共働き育児にせざるをえなくなっているからだと思います。その中で共働きに関わらず子どもをもつことで生きていく上の困難を抱えることが「親の自己責任」であるかのように放置されている部分は大きいと感じます。子育ての男女平等を推進していくのもいいですが、ちょっとしたつまづきから追いつめられがちな子育て家庭を社会でどう支えるか、子どもをもつことをいかに社会的なボーナスのようにできるかという展望を見せていてほしいとも感じました。

 勢いよく脱線してしまったので話を戻しますが、育休を取りたい人が取りやすくなること自体はいいことだと思います。

 これだけ共働き育児があたりまえになっている中で男性が育休を取れず母親のワンオペ育児でまかなっているというのは正直どうかしていると思います。育休期間中に夫婦で一緒に育児ができるようになり、あたりまえに育児をする父親が増え、ジェンダーフリーな空気ができていくのは社会的にいい面もあると思います。いまはまだおむつ替え台が女子トイレにしかないような施設もたくさんあり、平日の公園へ男親が子どもと遊びに行くとその場に集まっているママたちのあいだに微妙な空気が流れるのが気になったりしますが、需要次第で社会はすぐ変わるはずです。

 なによりも自分自身の実感として、二度と訪れない新生児期を子どもとともに過ごせたのはすばらしい人生の贈り物でした。人生の中、がんばって自分自身のわがままを通してやっておく価値があることのひとつだったと思います。

 ちなみに育休で何日休めばいいのかというのは人によって違いますが、経験上、母体が完全に回復するまでの1ヵ月間は休んだ方がいいんじゃないかと思います。さらに1ヵ月休めると妻と一緒に家事育児の分担を練習できるので便利です。もし企業に余裕があるなら「取らないのか」と促すだけでなく「2ヵ月くらい取ったらどうか」と言ってもらいたいですね。いつか男性育休が義務なんておかたいものでなくハネムーン休暇のように周囲みんながニヤニヤとお祝いしてくれる喜ばしいイベントになってくれたらいいのになと思います。盛田 諒でした。





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