エージングの効果は耳の慣れなのか、それとも機器の変化なのか
「24bitの音源は16bitの音源より音がいいと感じられるか」、また、「エージングで音が変わる感覚に信ぴょう性があるのか」などが議論になるのは、記憶に頼って、前の音と後の音を比較せざるを得ない、オーディオ特有の課題と言える。
記憶に頼った比較の難しさを知るため、講座では48kHz/16bitと48kHz/8bitの音楽を順番に再生して違いが感じられるかを体験するデモも用意された。音に関心が高い人が集まっていることもあり、変化を感じた人が大半を占めたが、8bitの音源も音楽としては十分成立していて、実際に聴いてみると数字から感じるほどの差はないと思えたのは確かだ。ちょっとした環境の変化や時間を置いて聞いた場合に、元の音との差を的確に言えるかは少々怪しい気もした。
加えて、並べて比較するのではなく、順番に表示された映像を短期記憶に頼って比較したらどうなるか、というデモも実施された。こちらは差を感じたと答えた人と感じなかったという人の割合が半々。並べて比べればほとんどの人が差を感じる色の差でも、別々に表示されると感覚が曖昧になるというのが体験できた。
エージングによる音の変化となると、記憶に頼った比較がさらに難しくなる。それでは、実際にエージングで音が変わるのだろうか? 講座では「聴覚的エージング」として、時間につれて耳が慣れてくる効果が大きいとする見解が示された(たとえば補聴器は機器の聴こえ方に慣れるために、6ヵ月継続して使ってほしいと言われるそうだ)。
finalとしては、接着剤などの変化やイヤーパッドの密閉度の変化など「機械的なエージング」によって音に違いがでる可能性もあると考えている。また、エージングの影響は、短期記憶に頼ったA/Bテストなどでは判断できないため、国際標準化機関などでは、スローリスニングと呼ばれる新しい音の比較方法についても検討されているとのことだ。