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“全ラ”のヴィッツを丸裸に! 先行開発のスポーツCVTを味わった

2019年05月21日 16時00分更新

文● 山本晋也 編集●ASCII編集部

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全日本ラリーシーズン中にもかかわらず
3戦連続クラス表彰台の有力マシンをチェック

 ラリーというモータースポーツを知っているだろうか。閉鎖した林道やワインディングロードを使ったスペシャルステージ(SS)にてタイムを競うというもの。その日本における頂点といえるのが「全日本ラリー」で、2019年からクラス分けが大きく変わった。その中で、JN-6というもっとも身近なクルマを使うクラスは、実質的に1500cc以下のAT車のクラスとなっている。

 2ペダルでもモータースポーツが楽しめる、とハードルを下げている面もあるが、そのクラスに集うマシンはけっしてファミリーカー然としたものではなく、コンペティティブな競技車両である。

 ASCII.jpの連載にもあるように、このマシン「DL WPMS Vitz CVT」を駆るドライバーの板倉麻美選手は、2019年がラリーデビューにもかかわらず、3戦連続で表彰台をゲット、JN-6クラスではランキング2位につけている(茂原の女王が唐津ラリーでクラス2位を獲得!)。さらにコ・ドライバーである梅本まどか選手と初コンビを組んだ全日本ラリー第4戦 久万高原ラリーではSSトップタイムもマークした。まさに全日本で勝負できるマシンに仕上がっているのだ。

 そんな戦うマシンにシーズン最中に試乗できる機会を、チームであるウェルパインモータースポーツが設けてくれた。会場は千葉県にある茂原ツインサーキット。ドライバーである板倉選手のホームコースだ。全長1170m、10個のコーナーが組み合わされた東コースが試乗の舞台となった。

 ラリー本番では梅本まどか選手が座るBRIDEのバケットシートに無理やり体を押し込み、しっかりと足を踏ん張ってからコースイン。いよいよ板倉選手とヴィッツの走りを本番さながらの雰囲気で味わえる時間がやってきた。

「スポーツCVT」は最高出力の発生回転数を
キープする設計がポイント

 華奢な板倉選手だが、その走りはハイレベル。今年から始めたばかりという左足ブレーキは、両足で踏ん張っていないと体が前に持っていかれるほど強力なストッピングパワーを生み出す。コーナー入り口でガツンと減速したときも、右足はアクセルペダルに乗ったまま。ブレーキへの踏み変えが不要なため、無駄のないシンプルなドライビングとなっている。

ラリーでは左足ブレーキは当たり前のテクニックで、2ペダルゆえに左足ブレーキを使うのは基本だ。とはいえ、ドライバーの板倉選手は始めたばかりで、こんな注意書きも貼られていた

 驚くのはブレーキングやコーナー旋回時にはアクセルペダルは踏んでいないが、タコメーターの針は6100rpm付近でピタッと固定されていること。このエンジンは6000rpmで最高出力を発生するため、その状態からアクセルを踏んでいけば、非常に力強い加速が生み出せる。しかも、その加速感は途切れることなくずっと続いていく。

 車名からもわかるように、このラリー仕様ヴィッツのトランスミッションはCVTとなっている。日本語では無段変速機と呼ばれるCVTは、常に理想的な変速比にすることができる。それが燃費を優先しているのであれば、熱効率に優れた中で低回転を維持することがひとつの理想となり、市販車ではそうした制御が主流だ。そのため、CVTはスポーツドライビングには向かないというのが定説となっている。

全長1170mの茂原ツインサーキット・ロングコースにて同乗試乗。激しいドライニングに体を支えるのが精一杯、コ・ドライバー気分を味わおうという目論見は外れてしまった
万一の横転時にドライバーとコ・ドライバーを守るロールケージがガラス越しに確認できる。カラーリングは派手だが、基本的にはベース車の「ヴィッツ GR SPORT “GR”」のままだ

 しかし、制御の自由度に関していえば他のトランスミッションに対して圧倒的なアドバンテージを持つのもCVTの側面。その自由度を、モータースポーツ用にフル活用したのが、このヴィッツに搭載されている「スポーツCVT」なのである。

 基本的には、エンジンが常に最高出力を発生できるよう速度に合わせて変速比をリニアに変えていく。理論上は、もっともエンジンの性能を引き出す変速制御となっているのだ。こうした制御がスポーツ走行に向いているというのは昔から言われてきたが、こうして実際に味わってみると想像以上にパフォーマンスアップにつながっていることが実感できる。とにかくコーナーからの立ち上がりの速さはMTやほかのATでは考えられない加速だ。

エンジン基本的にはノーマルのまま。カタログスペックは最高出力が80kW(109PS)/6000rpm、最大トルクが136Nm(13.9kg-m)/4800rpmとなっている
ラリーマシンらしくサスペンションのストローク量は大きめで、縁石をカットするような走りをしてもまったく不安はない。にもかかわらず、クイックな動きも両立している

 さらに驚くのは、このスポーツCVTを実現しているのは制御プログラムであって、ハードウェア自体は基本的に量産品を使っているということ。モータースポーツに必須のLSDを組み込んでいるなど厳密には市販品とは異なるが、CVT部分についてはけっして特別なものではないという。つまり、このスポーツCVT用プログラムをインストールすれば、そこいらを走っているヴィッツでも、この新しいスポーツドライビングが体験できるというわけだ。

タイヤはダンロップ、ホイールは名門「ワーク」をチョイス。ラリー用タイヤといってもターマック(舗装路)向けのモデルは、ほとんど溝がないアグレッシブなトレッドパターンだ

 実際、スポーツCVTの開発プロジェクトを担っているのはトヨタ自動車パワートレインカンパニー。その目的は全日本ラリーで勝つためだけではなく、この開発で得た知見を将来的には市販車に投入するためである。現状、このラリー車のベースとなっているヴィッツ GR SPORT “GR”のCVTにはパドルシフトを用いる疑似的な10速マニュアルモードが備わっている。全日本ラリーのフィードバックにより、Dレンジに入れっぱなしで理想的な走りができるスポーツCVTへと進化する日は、それほど遠い未来の話ではなさそうだ。

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