その会社にはその会社ならではの働き方がある。みんなの働き方改革・業務改善を追う連載「私たちの働き方カタログ」の第36回は「ITTO個別指導学院」など5つの個別指導塾を運営する自分未来きょういく。代表取締役社長 小野誉之氏に学習塾の働き方改革とタブレットを使った業務の見える化について聞いた。
日が変わる前に看板が消える塾はやる気がないと思われていた
「ITTO個別指導学院」など5つの個別指導塾を運営する自分未来きょういく。小中学生を対象とするITTO個別指導学院は日本最大級とも言える全国1100以上の校舎を持つ個別指導塾で、基礎固め、苦手克服、定期テスト対策、高校受験対策などを手がけている。「集団塾が合わないとか、個別に苦手なところを見てもらいたいという生徒さんが多く来られます」(小野氏)とのこと。
こうした学習塾を支える社員の多くは、昼に出社し、夜遅くまで働くという勤務サイクルだ。しかも個別指導と言うことで、生徒のニーズに細かく応えるため、仕事はどうしても遅くなっていた。「私も塾の仕事に関わって30年近くになりますが、10年くらい前は日が変わる前に看板が消えるのはやる気がないとさえ言われていました。サービス業なので、結局仕事に終わりはないし、切りがないんですよね」と小野氏は振り返る。
この傾向が変わってきたのはこの5年だという。若者が学習塾での仕事をブラックなアルバイトとして認知してしまうと、当然ながら社会人になっても職場として敬遠してしまうことになる。生徒とともに受験などを経験すると自ずと燃え尽きて、年度を終えないうちに辞めてしまったり、「こんなに長く働いているのに評価されない」といった誤解にもつながりがちだ。
そのため、ITTO個別指導学院ではトップがリーダーシップをとって、13時出社・22時退社を徹底するようにしている。「教室に残ってだらだら仕事していることは評価しないということを明確にしました。時間内にやるべきことをきちんとやれる方がよいことを理解してもらった」(小野氏)。
各校舎にタブレットを常設し、進捗を「見える化」する
もちろん、ただ「早く帰れ」だけでは実を結ばない。そのため、ITTO個別指導学院で講師と保護者が円滑にコミュニケーションするため、タブレットを活用した新しい教務システムを導入した。数年前から直営校でトライアルを実施してきたが、2019年4月で1100のすべての校舎に行き渡ることになったという。
以前のITTO個別指導学院では、講師が授業の様子や宿題などを手書きでレポートを書いていたが、生徒から保護者の手に渡らないことも多かったという。「感覚的には3割くらいしか渡してません」と小野氏は語る。そこで、タブレットを使って保護者向けのレポートを作成し、授業の模様をダイレクトに伝えることにした。「年に3回くらいアンケートをやるのですが、子どもの様子がよくわかるようになりましたという保護者の声が多かったので、全校に行き渡らせることにしました」と小野氏は語る。
大学生が8割という講師にもタブレットは人気だ。「書くよりもこっちの方が全然早いと評判。私のような年輩の世代がちょっと苦労している感じです」と小野氏は笑う。学習履歴も残るので、どこまでやったかを確認しながら授業を始められ、講師が異なる場合でも情報共有もスムーズになった。テンプレート化も進めたので、入力も容易になり、きちんと親世代に向けた言葉遣いに統一できた。どう考えてもデジタル化した方がよかった事例と言える。
保護者の満足度向上を目的に導入したタブレットだが、副次的に講師たちの働き方にも影響を与えつつある。小野氏は、「電話で伝えたり、面談で保護者に説明することも減ってますので、業務はあきらかに効率化されましたね。成績の入力も今までは教室長がパソコンで入力していたのですが、今は講師がすぐ入力できるので、生徒さんもなかなかごまかせませんよ(笑)」と語る。
現状、ITTO個別指導学院は授業そのものは今まで通り紙ベースで進め、デジタル化は業務の効率化やサポートという役割になる。今後は保護者とのやりとりも、よりきめ細やかに行なえるようしていくという。
会社概要
個別指導塾ひとすじ25年の実績を持ち、全国1100校を超えるネットワークを持つ。「SS講師認定制度」「電子カルテ導入」をはじめ、独自の教育システムで高い顧客満足度を達成。 また、専属デザイナーのオリジナル設計による校舎づくりなど、集中できる学習環境の整備にも力を入れている。
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